
女性登用で入閣候補多数も決定打不足
自民党女性議員たちの心中は穏やかでない。安倍晋三首相が内閣改造・自民党役員人事を9月上旬に行う方向で調整に入ったからだ。
改造人事のキーワードは「女性登用」。女性の社会進出を成長戦略の柱の1つに掲げる安倍首相にとって、大量の女性閣僚抜擢は最重要課題だ。
現在、入閣の最右翼と見られているのは、山谷えり子参院議員。安倍首相と同じ清和会で、文教族保守系の1人。現内閣では、新藤義孝総務相や稲田朋美行政改革担当相、山本一太海洋政策・領土問題担当相といった、いわゆる〝安倍応援団〟が多く入閣していることから「本人もやる気マンマン」(永田町関係者)だそうで、狙いの本命はズバリ文科相だといわれている。
2020年の東京五輪を控え、元スピードスケートの日本代表で、1992年のアルベールビル冬季五輪では銅メダルに輝いた橋本聖子参院議員も最右翼の1人。東京五輪担当相といった新たなポストが設けられて入閣するとのウワサも飛び交っている。
また、小渕優子衆院議員も有力候補の1人に数えられている。実は、第2次安倍政権組閣の際、安倍首相から入閣の打診を受けたが、断っている。麻生内閣時、少子化対策・男女共同参画担当相だったことから、政権復帰の組閣でまた入閣するのは申し訳ないとの理由だった。しかし、「今度再び打診されたら受けるつもり」だと周囲には漏らしている。
そのほかにも、安倍首相の〝秘蔵っ子〟として知られる丸川珠代参院議員、経験豊富で環境相や防衛相などを歴任している小池百合子衆院議員など、入閣候補は目白押しの状態だ。
ところが永田町を取材すると、「山谷氏、橋本氏はキャリアが長いものの、実績は少ない。大臣を経験するには力不足の感は否めない」(元重鎮議員秘書)との声や、「所詮、今挙げられている名前ではお飾り大臣になるだけ」(永田町関係者)と、冷笑気味の声が伝わってくる。
野田聖子の入閣はあるのか
このような女性議員のほかに、あるベテラン政治評論家は1人の名前を挙げる。
「野田聖子総務会長です。郵政相や消費者担当相などを歴任したキャリアは申し分ない。郵政民営化反対で離党を余儀なくされた経験もある。いわばブレない政治家だ。少子化対策に本腰を入れなければいけない中、野田氏を入閣させる意味合いは大きい」
とはいえ、野田氏の入閣の可能性は極めて低いという。月刊誌『世界』6月号(岩波書店)のインタビュー記事で、集団的自衛権の憲法解釈を変更する閣議決定に関し、拙速に議論を進めれば党の意思決定機関で了承は得られないとの認識を示したことから、「安倍首相に反旗を翻した」(自民党関係者)と見られているからだ。「野田さんは、誰にも媚びずにはっきりモノを言う。ブレない政治家だが、〝暴れ馬〟タイプとも言える。安倍首相にしてみれば、遠ざけたいだろう」(自民党関係者)と言われ、入閣候補からは蚊帳の外に置かれていると言っていい。
野田聖子のライフワークとは
しかし、当の野田氏は極めて冷静に「悲観も楽観もしていないし、自分の思ったことを正直に話しているだけ」と語る。
そして、こう持論を展開する。
「今の日本の最優先課題は、少子化対策です。『少子化』って言葉で軽く見られがちですが、安全保障にも税収問題にも直結する大問題なんです」
人口減少に歯止めがかけられなければ、自衛隊員確保にも支障を来す恐れが生じる。企業の社員不足や店舗の店員不足は外国人で補えても、防衛に外国人はあり得ないという考え方だ。集団的自衛権の憲法解釈より、目の前にある人口減少に全員野球で取り組むべきというのだ。
長年、取り組んできた少子化対策は、野田氏のライフワークと言っていい。しかも、民間有識者会議「日本創成会議・人口減少問題検討分科会」(座長・増田寛也元総務相)が今年5月、40年に全国1800市町村の半分が消滅する可能性があるとの推計をまとめ、政府はこの人口減少対策に戦略本部を設置する方針を固めている。
「少子化イコール子育て支援は、安直過ぎるし、想像力が足りない。企業に例えるなら、内閣府を人口減少対策を掲げたホールディングスにして、その下に各省庁を配置して少子化に歯止めをかけることを念頭に置いた施策に取り組む態勢を整えるべきだと思います。今回の戦略本部設置は大歓迎。安倍首相にはぜひとも頑張っていただきたい」
こう涼しげに語る野田氏。安倍首相は好き嫌いでなく、喫緊の課題に対応した適材適所の人員配置をする〝懐の深さ〟を見せられるか。けだし、見ものだ。
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