マネジメント

野田一夫「大学改革」を目標に全力投球した人生

 87歳になった今、また4つ目の大学創設責任者を務めようとしています。僕にとって大学がよほど気の合った世界だったのかと問われると、実は、全くそうではなかったのです。

 敗戦で「航空技師になろう」という少年時代からの一途な夢が破れた上に理系から文系に転じて大学生になってからは、日本の大学の文系の教育の低調さに異常に憤慨しましたね。ですから、思いもよらず大学教授の人生を歩むことになって以来〝大学改革〟を人生目標として全力を投入しつづけてきました。僕のロマンチシズムの晩年の発露だと自負していますが、改革者には当然安らかな人生は望むべくもなかったですね……。

 ただし僕は、この歳にしては考えられないほど充実した日々を送っています。大学教授としての半世紀を振り返ってみて、僕は2つの理由から、人生に心から満足してきたからです。

 1つは、言葉の真の意味での〝師弟関係〟をとことん享受できたことです。元来僕は若者好きでしたから、講義やゼミには力が入りました。特にゼミでは、わが子のように接したゼミ生の総数はいつしか軽く1千人を超え、その多くとは今も親密な関係が続いています。中には既に立派な経営者になって僕を喜ばせる教え子も少なくありません。このように、大学教員という仕事は、思いがけず、殊のほか僕に向いていましたね。

 もう1つは、積極的な学外活動。大学教授は〝勤め人〟とはいえ、普通の会社員なんかと違い、講義やゼミのない週日と春・夏・冬の長期休日といった時間的特権があります。大学教員の多くはその間、成果はともかく研究室とか自宅の机に向かって読書や物書きなどに没頭しているのでしょうが、物理的にも心理的にも暗い〝象牙の塔〟が嫌いな僕は、若いうちから都心の赤坂に個人事務所を開いて、産業界や官界の先輩や友人たちと交友を保ち、また執筆や出演活動でマスコミと接触しながら、大学教授としての自分の研究・教育領域である〝企業経営〟の現実からは常時離れない努力を続けてきたつもりです。

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