政治・経済

フジ・メディア・ホールディングス(フジHD)の株主総会が6月27日に行われた。業績不振を脱却するために、硬直化した経営体制を何とかせよと声を上げる株主もいたが、抜本的な改革が行われそうな気配は見えなかった。

フジHDの株主総会

厳しい質問が飛んだフジHDの株主総会

フジHDの株主総会で異例の光景

 総会の冒頭、経営側から2014年3月期決算について報告があり、フジHDの厳しい現状が明らかになった。営業利益は前期比16・2%減、経常利益同26・2%減となり、当期純利益は同44・8%もの大幅減益だった。

 フジHDはグループとして映像音楽事業や都市開発などさまざまな事業を手掛けており、中核はフジテレビやニッポン放送などの放送事業だが、事業別収益では放送事業が同28・3%の減益でグループ全体の足を引っ張っている。放送事業の中身を見ても、「FIFAコンフェデレーションズカップ2013」や「ソチオリンピック2014」といった単発の大型スポーツ番組は収益に大きく貢献したが、レギュラー番組の落ち込みをカバーできなかった。レギュラー番組の制作能力が低下している結果と見ることもできる。

 フジの苦境は、他の在京キー局と比べると一層はっきりしてくる。例えば、絶好調のテレビ朝日HDは過去最高の売上高を叩き出し、日本テレビHDも増収増益だ。東京放送HDは増収減益だが、放送事業単体(TBS)は増収増益だ。テレビ東京HDは増収増益でホールディング設立以来の最高益を計上している。フジは視聴率競争に敗れ、在京キー局5社のうちで「ひとり負け」の状況なのである。

 今年の総会では、資格試験予備校講師の山口三尊氏と日本工業新聞(現フジサンケイビジネスアイ)元記者の松沢弘氏の2人が共同で提出した10項目の株主提案が大きく注目された。一般的に少数の個人株主の訴えが株主総会で討議されるのは異例であり、マスメディアでは初めてのことだ。

業績不振の原因は経営者の高齢化か

 山口氏はサンケイビルの株主だったが、フジHDが2012年にサンケイビルを完全子会社化した際、含み益を無視した予想外に安い株価での株式売却を迫られた。今回はこれに対する抗議の株主提案だった。山口氏は以前から個人株主の権利を守る活動を展開しており、カネボウ、レックスHD株をめぐる裁判で勝利してきた。

 松沢氏が最も訴えたかったのは取締役と監査役の「75歳定年制」で、業績低迷の大きな原因の1つに経営者の高齢化があると見ている。フジHDの取締役16人のうち、75歳を超えているのは日枝久会長(76歳)や産経新聞の清原武彦会長(76歳)など5人おり、1人は80代だ。監査役も5人のうち4人が75歳を超えている。

 昨年は、フジHDとフジテレビジョンの経営体制を分ける経営分離を行い、フジの黄金時代を築いた名物プロデューサー・亀山千広氏がフジテレビの社長に就任した。だが、両社の社長が交代しても、日枝会長だけは両社で会長職にとどまったままだった。日枝氏は1988年にフジテレビ社長に就任して以来、実に26年もの長きにわたって経営トップの座に君臨している。経営体制を刷新して50代の亀山氏を社長に据えても、今回の業績からは効果がほとんど見えなかった。その理由について松沢氏はこう指摘する。

 「フジのような長老支配では、現場の若手はやりにくくて仕方ないだろう。もし、亀山社長や常務の大多亮氏らが、〝ドン〟日枝会長のニラミから解放されれば、のびのびと力を発揮できるのではないか。もちろん、優れた経営手腕があればの話だが」

 結論から書けば、株主提案はすべて否決されたのだが、公の場で議論されたことにより、経営の在り方の問題点が一層明らかになったのではないか。

フジHDの経営姿勢に疑問の声が続出

 業績報告と株主提案説明に続き、株主との質疑応答が行われたが、業績不振を追及する質問より、経営姿勢を問いただすものが多かった。

 例えば、日枝会長と安倍晋三首相は食事やゴルフで頻繁に会っていると週刊誌等で数多く報道されているが、権力機関を監視すべきメディアのトップとして問題ではないかとの質問があった。これに対し、フジHDの太田英昭社長は、「日枝会長は政界の多くの人と情報交換しており、安倍首相もその中のひとり」と、答えた。

 カジノ構想に関する質問もあった。国会に議員立法で提出されたIR(特定複合観光施設)法案は委員会審議に入り、秋の臨時国会での継続審議が決まっている。IRにはカジノも含まれており、フジ社屋があるお台場(東京都)もカジノ誘致に動いている。

 質問した株主は「業績の悪いフジHDでも株価が極端に落ちないのは、お台場カジノ構想への漠然とした期待感ではないか」と指摘した。会社側は「特区準備室」を「特区事業室」に格上げして力を入れていることを認めたが、具体的な動きについては言及しなかった。

 コンテンツへの質問や要望はメディアの総会ならではの光景だ。「笑っていいとも!」の後継番組「バイキング」の視聴率が低迷していることについて聞かれると亀山社長は「『いいとも』も最初は視聴率2%だったので、新番組も長い目で見てほしい」と答えた。

 厳しい質問は多かったものの、結局、業績改善に向けての具体的な戦略が語られることなく終了した今回の総会。苦境からの出口はまだ見えぬままだ。

(文=ジャーナリスト/横山渉)

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