政治・経済

2000年の破綻ラッシュを経て、平穏な日々が続いてたゴルフ場業界だが、東日本大震災以降、客単価の下落が常態化するなど、競争力のないゴルフ場は再び経営危機に直面している。計画的ともとれる破綻を強行するケース、効率化を追求するケース等、さまざまな存続スキームを模索する。

神田氏

「ゴルフ場運営のプロに任せるステージに来た」と述べる神田氏だが……

腑に落ちない廣済堂開発の破綻劇

 ザ・ナショナルカントリー倶楽部、千葉廣済堂カントリー倶楽部等、国内外5コースを所有する廣済堂開発が6月18日に民事再生法を申請、約161億円の負債を抱え経営破綻した。

 東日本大震災以降、ゴルフ場業界は自粛ムードで苦戦してきたが、最近では来場者も増加し、ようやく経営も安定してきたかにみえていただけに、歴史あるコースを保有する廣済堂開発の破綻には、意外性を感じた人も少なくない。その原因は、多くのゴルファーが廣済堂開発の親会社は東証1部上場企業である廣済堂と認識していたからにほかならない。

 だが、今回の破綻劇をよくよく調べてみると、この認識は大きな誤りであることに気付かされる。

 実は件の廣済堂開発は昨年、26億円で神奈川県にあった富士合同なる会社に譲渡されていたのだ。しかも、投資運用業・経営コンサルティングを生業とするこの会社の資本金は、わずか10万円。26億円を調達できる能力がある会社とは到底考えられない規模である。

 さらに、合点がいかないのは譲渡後、この富士合同会社は、廣済堂開発に名称を改め、もともと同社があった銀座に本社を移転させているのだ。

 これは多額な負債を抱える会社を一端、ペーパーカンパニーに譲渡し、頃合いを見計らって破綻処理にかけるスキームではないか。そうした疑念を生じさせるに十分な要素がある。

 「今回の破綻劇は、1部上場企業である廣済堂に傷をつけないように計算されたものでしょう。確かに法的にも問題はありませんが、とても分かりやすいもので稚拙と言えば稚拙です」(業界関係者)という指摘も数多く聞かれる。

 廣済堂に、前述した疑念を問うと、ことごとく否定されたが、東証1部上場企業である廣済堂という信用力に賭けたゴルファーが損害を被ったのは確かだ。

厳しいゴルフ場業界の救世主と課題

 一方、保有ゴルフ場133のうち90を新たに設立するSPC(匿名組合)に譲渡、そのSPCをシンガポールで上場する(ビジネス・トラスト)という大博打に打って出たアコーディア・ゴルフの施策が6月27日の株主総会で正式に承認された。

 不動産資産をバランスシートから切り離し、オペレーションに特化することで、運営受託手数料という真水の金だけを手中にし、経営の効率を高める狙いの同施策。これが成功すれば客単価の下落等、厳しい経営を余儀なくされているゴルフ場にとってまさに救世主となることは確かだ。

 同社では、同時に自社株買いも実施、ROE(株主資本利益率)を向上させ株主メリットの向上に努めたいという。

 しかし、これは建前だ。本音は約7割のゴルフコースを売却することで、アコーディアと経営統合を目論むライバルのPGMホールディングスの統合意欲を殺ぐことと、大株主に躍り出た旧村上ファンドの流れをくむレノグループを排除することにあるのは明白。

 既にシンガポールからアセットライトの適格承認レターを得ているアコーディアは、今総会で、株主からお墨付きを得たことになり、大手を振ってアセットライトを遂行することになる。

 しかし、課題も残る。

 「ビジネストラストの想定利回りは7〜8%といわれる。これを支払った上で、アコーディアの株主にも同程度の配当をしなければなりません。ゴルフ場経営が厳しくなっている中で、果たして、それほどの配当原資が用意できるのか」(業界関係者)と、アコーディアの見解に疑問を呈する声も少なくない。

腑に落ちないPGMHD神田有宏社長の辞任

 そのアコーディアとの経営統合に執念を燃やしていたPGMホールディングスの神田有宏社長は6月23日、突如として辞任を表明した。

 神田氏といえば、一昨年、ライバルのアコーディアからPGMの社長に転身、以降、アコーディアへTOBを仕掛けるなど経営統合を旗印にアコーディア経営陣を揺さぶり続けた当事者だ。

 そういう意味では、アコーディアのアセットライト施策が承認された6月27日の株主総会を待たずしての社長辞任は、どうも腑に落ちない。

 発表当日の夕方、急遽ヒアリングを実施した神田氏は、真意を次のように述べた。

 「私は〝金融屋〟。就任以降、注力してきた財務体質の強化も達成した。あとはゴルフ場運営のプロである田中耕太郎副社長が適任と判断しました」

 就任以来、度々、神田氏を取材した記者の立場から見ると、同氏は言うなれば〝狩猟民族〟。アコーディアという獲物を逃したことで、ゴルフ場経営に意欲を失ったのだと好意的に判断することにした。

(文=本誌/大和賢治)

 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

売上実績トップ企業に聞く「住宅リフォームの最新トレンドと課題」―榎戸欽治・ニッカホーム会長

素人にはなかなか分かりにくい住宅リフォームの世界。最近の業界動向と事業戦略について、売り上げ規模で全国ナンバーワンを誇るニッカホーム創業者の榎戸欽治会長に聞いた。(聞き手=吉田浩)榎戸欽治氏プロフィールリフォーム業界におけるニッカホームの競争力水廻りと木工事を絡めた中型リフ…

榎戸欽治・ニッカホーム会長

家族葬のファミーユが目指す「生活者目線で故人に寄り添う」葬儀の形

不動産のノウハウや技術を生かしサステナブルインフラへ―いちご

新社長登場

一覧へ

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

2019年4月、国内インターネット専業証券で初の女性社長が誕生した。創業者であり、カリスマ社長と呼ばれた松本大前社長から後任を託されたのが清明祐子氏。清明氏は09年にマネックスグループに入社し、子会社社長やグループ役員を経て、マネックス証券の社長に就任した。清明社長はカリスマの後任としてどんな会社をつくってい…

マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

「事業部門の連携を活性化させ営業利益100億円を目指す」 内藤宏治(ウシオ電機社長 )

イノベーターズ

一覧へ

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

起業家のスタンスとして、画期的な技術やビジネスモデルを社会で活かすことを目的としたイノベーション先行型もあれば、社会課題解決を最優先とし、そこに必要な技術やノウハウを当てはめていくやり方もある。ハックジャパンCEOの戸村光氏の場合は後者。対象となる課題は「身の周りの気付いたことすべて」だ。(取材・文=吉田浩)…

戸村光・ハックジャパンCEO

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年12月号
[特集] 沸騰する食ビジネス!!
  • ・食ビジネスが熱い!! 未来型食品が社会課題を解決する
  • ・市場規模70兆円! 食ビジネスが過熱するわけ
  • ・完全バランス栄養食で誰もがラクして健康になれる
  • ・人工光型植物工場で世界の食と農に新しい常識を
  • ・宇宙食ビジネスで勝ちに行く 10年後に5千億円市場創出へ
  • ・“大人の給食”で栄養の基盤をつくる
  • ・人工肉で糖質制限者に無制限のおいしさを
  • ・テクノロジーで高品質なジビエ調達が可能に
  • ・昆虫食ビジネスの時代到来
[Special Interview]

 伊藤秀二(カルビー社長)

 掘り出そうカルビーの未来

[NEWS REPORT]

◆エンジニアへの高額給与で 富士通は生まれ変われるか

◆豊田章男・自工会会長が挑む東京モーターショー100万人

◆消費増税で現金主義は終焉 キャッシュレス時代が到来した

◆加速するeスポーツ市場! インテルが東京で世界大会を開催

[総力特集]

経済界創刊55周年記念 新しい日本のかたち

東京1964からの55年と東京2020以降の日本の姿

ページ上部へ戻る