国際

イランが米国との協力を示唆

 中東の地政学的構図が大きく変化し始めている。

 6月中旬から、アルカイダ系イスラーム原理主義過激派「イラクとシリアのイスラーム国」(ISIS)が、イラクで攻勢を強めている。この組織は、もともとシリアで、サウジアラビアとカタールの支援を受けていた反体制運動にアルカイダ系の勢力が入り込んで国際テロ組織に発展した。

 6月3日、シリアで大統領選挙が行われ、アサド大統領が再選された。アサド政権は、シリアとイラクの国境地帯を実効支配できていない。国際法が定める国家の要件は、当該国家が全領域を実効支配していることと国際法を順守する意思があることだ。現行国際法に照らして、シリアは国家の要件を満たさない「破綻国家」だ。ただし、今回の大統領選挙の結果、首都ダマスカスからアサド大統領出身地であるシリア北西部にかけては、現政権の統治は揺るぎないことが明らかになった。アサド政権が近未来に崩壊することはないという認識をISISも抱き、攻撃をイラクのマリキ政権に向けるようになった。

 ISISは、スンニー派住民の心をつかんでいる。もっともイラクのマリキ首相は、最初からスンニー派住民を同胞とみなしていない。それだから、スンニー派地域がISISの支配下に置かれても、そのままにしている。マリキ首相は、出身母体であるシーア派(12イマーム派)住民の擁護と首都バグダッドの防衛だけを考えている。この「選択と集中」が功を奏しているので、マリキ政権はバグダッドを防衛することができる。ISISがバグダッドを占領し、イラクに新政権を樹立する可能性はないと思う。

 米国のオバマ政権は、国家でないISISを武力や外交圧力によって封じ込めることもできない。そこから出てくるのが、イランを活用することだ。イランにとって、ISISがイラクとシリアの一部地域に拠点国家を建設することは現実的な脅威である。なぜなら、ISISは、12イマーム派を敵視し、力によって除去することを考えているからだ。イランは、イスラーム革命防衛隊の特殊部隊を密かにイラクに派遣し、現地の12イマーム派系武装集団を支援し、ISISを壊滅させようとしている。6月14日、イランのハサン・ロウハニ大統領は、

〈イラクの要請があれば支援する用意があると表明した。国交のない米国との協力についても「検討することができる」と発言した。〉(6月14日「日本経済新聞」電子版)

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