テクノロジー

 2020年までにロボット市場の規模を製造現場では現在の2倍に、また介護や医療といったサービス分野などでは現在から20倍に、それぞれ1兆円を超える規模まで成長させようとするロボット戦略が話題となっている。

 人を抱えたり移動させたりする介護の仕事は重労働であり、ロボットスーツ等の活用は現場の要望も高い。また、介護を受ける人も、入浴等においてほかの人に裸を見られることへの抵抗があり、その点ロボットなら気が楽だ。

 しかし、機械の助けを借りて1人で生活できれば、それで介護問題は解決するのかという基本的懸念も一考に値する。介護を通じて人と触れ合うことがどれだけ人を勇気付けるかも考えなくてはならないが、アイボに癒された人もいたことを考えると、ロボットには人が癒せないと決めつけるわけにもいかない。

 また、ロボット戦略では、高齢化の波にさらされている農業分野にも競争力強化のためにロボットを投入する。

 きつい農作業へのアシストスーツの投入や、農業機械の自動走行やユーザーフレンドリー機能を強化することによって、規模拡大を容易にして多くの労働力を農業に投入できるようにする計画である。さらに、データセンシングや精密農業を食物工場のような高度なロボット機能により推進すれば、農業の状況が一変するだろう。

 ただ、この改革は、農業が栄養補給の材料を供給するものという視点のみが大きくなり、これまで農業によって与えられた季節感や自然への感謝という価値を薄めるリスクもある。さらにロボットを投入する農業改革は、高齢者にとっては活用が難しくなる場合も出てくるので、農業の構造は変わらざるを得ないであろう。

 産業の効率化は、機能や要素の強化にはつながるが、その周りのさまざまな価値が置き去りにされる可能性もある。

 かつて、蒸気機関等の発明により、経済は飛躍的に増加した。しかし、最近は、経済を成長させるために、科学技術を推進しようとする動きが主となった。経済を成長させようという目標が強過ぎると、科学技術の持つさまざまなリスクを見逃すことになりかねない。新技術において、何がリスクかということを見極めるのは容易ではない。

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