政治・経済

20130716_24_01

観光産業における日本のブランド力と実態の差を埋める

 

 国際旅行者数は2012年に初めて年間10億人を突破した(出典:UNWTO、以下同じ)。世界旅行市場の10~20年成長率は3~4%が見込まれている。中でもアジア市場の成長は著しく、20年には世界需要の26%を占めると見られている。

 世界の観光産業のGDP規模は、11年が6兆3400億㌦で、全GDPの9%、雇用は2億5500万人で、雇用全体の9%を占めており、産業としては非常に大きい。

 世界旅行需要を牽引しているのはASEAN、インドなどの新興市場。中間層の拡大と消費の増大によるもので、上位中間層に加えて富裕層(家計所得1万5千㌦以上)は、10年→20年に、インドネシア0・1億人→0・8億人、マレーシア0・2億人→0・3億人、インド0・3億人→3・4億人へと増加すると予測されている。もう一つは航空自由化と規制緩和政策による新規参入拡大と運賃低下が創造する新規需要だ。具体的にはLCCの運航拡大で座席数のキャパシティーが増大した。

 訪日旅行者市場をめぐる状況は、03年のビジット・ジャパン・キャンペーンを開始したときに年間521万人だったものが、10年には861万人と過去最高を記録。しかし11年は東日本大震災や円高の進行で622万人に落ち込んだものの、12年は、836万人まで回復した。

 最近の訪日旅行市場の傾向は、急速な個人旅行化、中国や東南アジア市場の急激な拡大、情報収集から予約手配、SNSによる情報共有までIT化が深化、スマートデバイスなど携帯ツールの旅行者への普及と対応が求められている。

 訪日旅行者が日本をどう見ているかというと、日本の観光ブランド力は世界トップクラスで、観光競争力も向上しているが、訪日旅行者数は世界第39位、アジアの中でも第10位。このギャップを埋めるのがわれわれJNTOの仕事になる。

 

JINTOが想定する観光の意義とは?

 

 観光の意義とは何か。3つのことが考えられる。①観光は平和へのパスポート―人と人の草の根レベルの交流を通じた国際的な相互理解促進②国の成長戦略の柱―即効性、交流人口拡大による地域経済活性化、雇用拡大③観光産業を元気に―観光産業を自立した地域経済のリーダーへ、というものだ。

 観光産業の名目GDP構成比は5%(10年)、25兆円で、これは27兆円の建設業にも後れを取らない規模である。わが国の国内における旅行消費額に占めるインバウンドの割合は6%(同)だが、フランスの30%、英国18%、韓国47%に比べてかなり低い。のびしろは大きく、観光を産業として育てる努力をしていかなくてはいけない。

 

20130716_24_02

日本を観光立国にするための取り組み

 

 JNTOでは、目標の年間訪日客1千万人実現に向けて、観光の質の向上、MICE(企業等の会議、企業の行う報奨・研修旅行、国際会議、イベント・展示会・見本市の総称)の拡充強化、訪日旅行の受け入れ態勢の整備強化に力を入れて取り組んでいる。

 先ずは、日本と聞いて日本に行きたいなと思わせるイメージ作りを狙った「日本ブランド」の売り込みである。ターゲットは富裕層・中間層と若者に絞り、地域はASEANを注力する。在外公館、自治体、ジェトロとの連携を強化し、オールジャパン体制で取り組む。

 次に、MICEの推進も重要である。MICEは経済的波及効果が大きく、社会・文化的意義もある。わが国はMICE誘致で世界に遅れつつある。展示場規模でも、日本トップの東京ビッグサイト(8万平方㍍)も世界では60位、アジアでは16位。アジア・大洋州地域の主要国の国際会議開催件数に対する日本のシェアは、91年の51%が、11年は21%に低下してしまった。

 このような状況を克服すべく、JNTOでは、MICE先進事例の研究と啓発、海外のMICE専門見本市等を活用した日本ブランド発信と有望誘致案件の発掘、MICE誘致セールス情報の収集強化と市場動向分析等のマーケティングの高度化に取り組む。

 最後の受入れ体制については、ビザ要件の緩和が必要である。日本と韓国の観光目的のビザ制度を比較すると、日本は韓国、台湾、香港、シンガポールについては、90日以内は免除、中国、タイ、マレーシアは数次ビザとなっている。これを中国は数次ビザを拡大し、タイ、マレーシアについては韓国が行っている対応と同様に免除することが必須である。

 また、Wi―Fi、ATMの不便も解消しなければならない課題だ。無料でWi―Fiを利用できる場所が不足しており、日本の公衆無線LANは会員限定が多いため、外国人はほとんど利用できない(携帯電話回線で接続すると多額の通信料がかかる)。また海外発行のクレジットカードでキャッシングできるATMが限られているし、日本の銀行の通常のATMは海外発行のカードに対応する仕様になっていない。このため、JNTOでは、Wi―Fi環境の改善の関係者への働きかけ、海外カードに対応可能なATM整備の関係者への働きかけに取り組む。

 JNTOとしては、今後とも官民との連携のもとで、観光立国の実現を目指してインバウンド拡大に向けた取り組みを強化して参りたい。 (談)

 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

水辺に都市が栄える理由と開発の事例を探る

[特集 新しい街は懐かしい]

水辺に都市が栄える理由と開発の事例を探る

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

総合事業プロデューサーとして顧客と共に成長する―中尾賢一郎(グランドビジョン社長)

広告やマーケティング、ブランディングを事業プロデュースという大きな枠で捉え、事業が成功するまで顧客と並走する姿勢が支持されているグランドビジョン。経営者の思いを形にしていく力で、単なる広告代理店とは一線を画している。 中尾賢一郎・グランドビジョン社長プロフィール &nb…

中尾賢一郎(グランドビジョン社長)

人材戦略を経営の核に成長する駐車場ビジネスのプロ集団―清家政彦(セイワパーク社長)

「PCのかかりつけ医」として100年企業への基盤構築を進める―黒木英隆(メディエイター社長)

新社長登場

一覧へ

森島寛晃・セレッソ大阪社長が目指すクラブ経営とは

前身のヤンマーディーゼルサッカー部を経て1993年に創設されたセレッソ大阪。その25周年にあたる2018年12月に社長に就任した森島寛晃氏は、ヤンマー時代も含めて通算28年間セレッソ一筋、「ミスターセレッソ」の愛称を持つ。今も多くのファンに愛される新社長が目指すクラブ経営とは。聞き手=島本哲平 Photo=藤…

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

イノベーターズ

一覧へ

20歳で探検家グランドスラム達成した南谷真鈴さんの素顔

自らの手で未来をつかみ取る革新者たちは、自分の可能性をどう開花させてきたのか。今回インタビューしたのは、学生でありながら自力で資金を集め、世界最年少で探検家グランドスラムを制した南谷真鈴さんだ。文=唐島明子 Photo=山田朋和(『経済界』2020年1月号より転載)南谷真鈴さんプロフィール&nbs…

南谷真鈴

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2020年1月号
[特集] 新しい街は懐かしい
  • ・「街の記憶」で未来をリノベーション
  • ・日本橋が「空を取り戻す」水辺と路地がつながる街へ
  • ・水辺はエンタメの宝庫だ 大阪が目指す観光客1300万人
  • ・街の誇りを取り戻せ 名古屋・堀川復活プロジェクト
  • ・なぜ水辺に都市が栄えるのか
  • ・2020以降は海と川がさらに面白くなる
  • ・「住む」と「働く」両方できるが求められている(たまプラーザ)
  • ・「土徳」が育む一流の田舎(南砺市)
  • ・音楽ファンが集う街づくり
[Special Interview]

 辻 慎吾(森ビル社長)

 東京が世界で勝ち抜くために必要なこと

[NEWS REPORT]

◆飛びたくても飛べないスペースジェットの未来

◆エンタメが街を彩る 地方創生に挑むポニーキャニオン

◆問題噴出のコンビニをドラッグストアが抜き去る日

◆始まった自動車世界再編 日本メーカーはどう動く?

[特集2]

 経済界福岡支局開設35周年記念企画

 拓く!九州 財界トップが語る2030年のかたち

ページ上部へ戻る