政治・経済

関関西経済同友会代表幹事として財界活動を本格化させた芦原義重

 国策によってあらゆる業界で起きた企業合同。最たるものは電力業界の再編成だった。

 再編の結果として昭和26年に誕生した関西電力。筆頭株主の大阪市は、市内東西南北を結んだ市電に加え、地下鉄(当時は梅田〜天王寺間のみ)を市民の足として整備。その運行に電力設備が不可欠とされた。

 京都、神戸もこれと同様。私鉄王国を形成する5私鉄の設備は強力だったが、すべてが関西電力に集約されており、阪急から転籍した社長の太田垣士郎が采配を振るう。加えて、大阪市から転籍した一本松珠璣や阪急時代からの芦原義重ら、人材は手駒満杯であった。

 一本松はポスト太田垣候補。ところが原子力時代の幕開けが一本松の運命を変える。

 東京電力の菅礼之助社長から「2年間の証文を書くから」と懇願され、太田垣からも指示されての原発への出向。一本松はのちに、「原子力発電は、全くの新しい仕事。2年で足を抜ける性質のものではなかった。で、結局20年。東海村の仕事も手掛け、悔いはない」と述懐していたが、自身の原発出向の2年後に誕生した芦原関西電力社長。この人事に関しては複雑極まりない想いがあったといえる。

 さて、芦原。ポジションは、太田垣の女房役と名代。社長就任の翌年末、まず、経団連常任理事に名を連ねて財界デビューを果たし、昭和35年1月に関経連常任理事、2月に日本経営者団体連盟常任理事、4月には大原総一郎とのコンビによる関西経済同友会代表幹事に推挙され、本格的な財界活動に携わる。

 特筆すべきは、秘書役にした情報通の内藤千百里(京大卒、のち副社長)による中央政財界とのパイプ作り。それは太くて広く、芦原自身の骨身を惜しまない行動力によって、申し分のない財界総理の座が形成された。とりわけ、太田垣が仕掛けた『朝の会』による関西財界結束の効果は11年余の長期政権につながった。

 この間、日本万国博覧会が開催され、経団連名誉会長の〝大御所〟石坂のもと、副会長として演じた芦原への信頼度はさらに高まる。特に自らカナダ・モントリオール万博に出向いた芦原は技術者の立場でクールに考察、国家プロジェクト運営に巧みに反映させていた。

芦原義重氏の半生と関西財界

 先輩であり、人生の師でもあった太田垣士郎を失った芦原義重は、文字通り〝失意〟のどん底にありながら、経営者として、また財界人としては、まさに絶頂期にあったと言えるだろう。

 昭和39年2月6日、太田垣が関電病院に入院した時、電力担当として現場にいた筆者は長期間、つまり、翌3月16日の超大物の逝去に至るまでの1カ月強、昼夜を問わず太田垣の病状・動静を見守っていた。

 そんな筆者が関西電力広報から連絡を受けたのは3月16日の午前4時。早朝からの記者会見に臨んだ芦原は、記者クラブの面々に訃報を伝えながら、各記者の労をねぎらった。ほぼ40年も前のことながら、その時の芦原の悲痛な表情は今もって忘れられない。

 ただし、この時期から芦原の身辺は超多忙になる。関西財界の総理であるばかりではなく、中央政財界でも重要視された芦原の肩書は、200をはるかに超えていた。

 昭和51年3月、芦原は太田垣の13回忌を執り行い、太田垣士郎伝を刊行する。タイトルは『呼ぼうよ雲を〜太田垣士郎伝』。芦原は関電の社歌からとった表紙のタイトルを自ら揮毫し、巻頭に「企業家魂の神髄」の一文を寄せている。

 この間に芦原は関電初の原発・美浜1号機を着工。昭和45年に11年間務めた社長職から会長職に転じ、運転開始した美浜原発1号機から日本万国博覧会会場に〝原子の灯〟を送り込む。

 その2年後に田中角栄内閣が発足。以降の10年間に三木武夫、福田赳夫、大平正芳、鈴木善幸、中曽根康弘内閣が誕生した。既に電力各社は政治家への企業献金廃止を宣言していたが、芦原は盆暮れの付け届けを継続させていた。だからこそ、政界に対する関電・関西財界の影響力は強く保たれ、関西新国際空港の具現化にも底力を発揮しえたのである。

 しかし芦原が代表取締役名誉会長、内藤千百里が副社長に就任した2年後、子飼いの小林庄一郎が、芦原の後継者として関西経済連合会会長に就いていた日向方斎の後押しを受けて「芦原と内藤を解任する挙」に出たのだ。

 筆者の手元には、元朝日新聞記者で関西経済同友会・事務局長などを務めた北村武の決別の文書がある。それは102歳で逝った芦原礼賛論でもあった。

 

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