楽器・音響機器メーカーとして世界的なブランド力を持ち、一昨年創業125周年を迎えたヤマハ。昨年、社長に就任した中田卓也氏は、さらなる成長に向けて大胆な組織変更や海外でのМ&Aを実施、反転姿勢に転じた。(聞き手=本誌編集委員/清水克久 写真=佐藤元樹)

 

伝統の事業部制を廃し、社内のノウハウを共有化

ヤマハ ユニファイドコミュニケーションマイクスピーカーシステム「YVC-1000」

ヤマハ ユニファイドコミュニケーションマイクスピーカーシステム「YVC-1000」

-- 社長に就任して、社内組織を一新しましたね。

中田 主力の楽器・音響領域では長年続いた事業部制を取りはらい、製品別の組織から、生産・開発・営業といった機能別組織に再編しました。以前は、ピアノはピアノ事業部、電子ピアノはデジタル楽器事業部といったように分かれていて、各々が個別最適で事業を運営していたのでそれぞれの成功事例の共有も十分されていなかったのです。組織再編によってこれまでの組織の枠組みを超えたコミュニケーションも始まり、各事業部が培ってきたノウハウ、スキルも共有できるようになってきました。

 一昨年、当社は創業125周年を迎えましたが、これからの25年、50年を意識すると、従来の考え方では飛躍的な成長は難しいと思いました。だからこそ、思いきった改革を実施したのです。

 30年間続けてきた組織を一新したので、社内に一時的な混乱もありましたが、改革とは見切り発車でもいいからまず始めることが大事です。今では徐々に落ち着き、これから何か新しいものが生まれそうな気配がしています。

 ヤマハは楽器だけではなく、音響機器、ネットワーク機器など非常に多様なアイテムを扱っています。それらの開発技術、生産技術を持っている企業は少ない。これを足し算ではなく、掛け算にすることで、成長していきたいと考えています。

-- 今後、注力していくジャンルは何ですか。

中田 特にエレクトロニクス事業領域です。従来から定評のあるホールやイベント会場向けの大型の業務用音響機器に加えて、商業空間向けの音響機器や、SOHO向けのネットワーク機器などに、今まで以上に力を入れていきます。

 また、音響機器とネットワーク機器の強みを融合させた企業向けの遠隔会議システムには、期待しています。競合他社は画像分野に力を入れていますが、当社は得意分野である音声コミュニケーションの技術を生かした製品開発を進めています。この遠隔会議システムは、特に大きな成長を期待する領域です。

 

積極的にM&Aを行い企業の実力を向上させる

-- 最近は、海外企業の買収も積極的に行っていますね。

中田 米国のレボラブズ社を買収しました。この会社が強みとする会議システムでのワイヤレス技術は、先ほどの音響・ネットワーク機器の強化につながります。また、同じく米国のラインシックスという会社も買収しました。同社のギター周辺機器はギタリストに大変有名で、顧客目線のイノベーティブな製品開発を強みとする企業です。当社の楽器事業の中では最もシェア拡大の余地が大きなギター事業で、シナジーが図れると考えています。

-- 海外市場の今後の展開は、どのように考えておられるでしょうか。

中田 レボラブズの買収には、遠隔会議システムの米国での販売強化という意味もあります。楽器の分野では、中国をはじめとするアジアの新興国市場での成長を狙っていきたいと思います。欧米などの先進国は、市場としては安定しているのですが、将来を展望すると既に成熟市場になっています。

-- 社長就任以来、大きな改革に手を付けられていますが、今後の目標は。

中田 「ワクワクするようなことをやろうよ」と社内では言っています。お客さまがワクワクして新しい感動や文化を生みだすような商品作りが、結果として当社の発展につながると思っています。そのためにはまず、自分たちがワクワクしなければなりません。もっと自信を持って、主体的に仕事をしてほしいですね。そういう思いと願望を込めた改革でもあります。

 私が社長に就任したタイミングは、ちょうど世界中の経済が大きく変わる転換期でした。その前3年間は、リーマンショックもあり、とても厳しい状況でした。当社も景気が悪い中で、守りを固めることに追われてきました。ところが、私が社長に就任した昨年は、米国の消費が底を打ち始め、日本でもアベノミクスなどの効果もあり、景気は確実に回復基調に向かっています。今は攻めに転じる時です。ですから、大きな変革が必要だったのです。

 中期経営計画も、策定当初はやや高めに感じられる目標設定だったのですが、現状では、為替の影響もあって1年前倒しで目標を達成できる見通しです。

 次の中期経営計画では、大きく飛躍するフェーズに入ることを想定しています。スピード感を持って事業を展開し、中国などの新興国での楽器事業の成長、音響機器やネットワーク機器を中心としたエレクトロニクス事業での成長、この2つの軸を中心に、今後の成長を目指していきます。

ヤマハ社長
中田卓也(なかた・たくや)
1958年生まれ。81年慶応義塾大学法学部卒業。同年、日本楽器製造(現ヤマハ)入社。2006年執行役員。09年取締役執行役員。10年ヤマハコーポレーションオブアメリカ社長。同年ヤマハ上席執行役員。13年6月に社長に就任。

 

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界8月号
[特集]
会社が変わる時

  • ・伊藤秀二(カルビー社長兼COO)
  • ・星野佳路(星野リゾート代表)
  • ・森山 透(三菱食品社長)
  • ・笠原健生(クアーズテック社長)
  • ・駒村純一(森下仁丹社長)
  • ・小渕宏二(クルーズ社長)
  • ・大山健太郎(アイリスオーヤマ社長)
  • ・秋本英樹(リンガーハット社長)

[Interview]

 糸井重里(ほぼ日社長)

 クリエーターの僕が経営者になった日

[NEWS REPORT]

◆誕生10年! iPhoneは世界をこう変えた

◆インディ500とル・マンにF1 モータースポーツの経済効果

◆Jリーグ放送権喪失後の展開 スカパー! はどうなるか

◆売り手市場の就職戦線に笑うものなし

[政知巡礼]

 下村博文(衆議院議員)

 「教育立国こそが、国家として目指す道」

ページ上部へ戻る