産業用小型モーターの草分け的存在であるオリエンタルモーターは「必要な時に必要なモノを必要なだけ提供する」多品種少量生産が基本。5万を超える製品数は受注したその日に出荷が可能だ。その仕組みが実現できた背景とは。(聞き手=本誌編集委員/清水克久 写真=佐藤元樹)

 

1社に100台より、100社に1台ずつ

注文が入ってから造り始める独自の生産システムが確立されている(東京・台東区の本社にて)

注文が入ってから造り始める独自の生産システムが確立されている(東京・台東区の本社にて)

-- まず御社の概要からお聞かせください。

野村 当社は1885年に、手造りのモーターから始まりました。モーターは、用途によってさまざまなものがありますが、当社では、工場で使われる産業用装置をはじめ、銀行のATMのような金融機器や病院の検査装置のような医療機器、計測・分析装置など、精密な動きが求められる分野で使われるモーターを主に製造、販売しています。中心となるのは200㍗以下の小型モーターなのですが、このジャンルは国際的にも日本企業が優位にあります。

 その中でも他社は、特定のモーターに特化する戦略をとっているケースが多いのですが、当社は、動力用モーター、制御用モーターと回路、ファンモーターなど、ただ回転するだけでなく、位置決めから風力、直動まで実現する製品を幅広く扱っています。在庫をほとんど持たず、多品種少量生産で5万種類ものモーターをお客さまの必要なときに必要なだけお届けできるのが当社の強みだと思います。

-- 多品種少量生産が差別化戦略ということですか。

野村 1つの装置を作るにも多くのモーターが必要ですが、当社に注文いただければ、ほとんどが揃ってしまいます。他社へ注文すると、ある部分はA社へ、別の部分はB社へと別々に発注しなければなりません。モーターには、用途に応じて求められる性能が異なりますが、すべてのニーズに応えられるのは当社だけと自負しています。注文が入ってから造り始める独自の生産システムが構築されているので、このような製品バリエーションに対応できるのです。

-- 現在、特に注力している分野は何ですか。

野村 現在に限ったことではありませんが、製品の標準化です。標準化することで、発注からお届けまでの納期を短くできます。当社のカタログに載っている製品は、すべて標準品なので、数にもよりますが、そのほとんどを受注したその日に造り、出荷できます。ですから、お客さまはカタログを見て明日使うモーターを1台から注文できるのです。

-- 現在の経営環境はどのようなものでしょうか。

野村 当社のモットーは、「1社に100台のモーターを売るより、100社に1台ずつ売る」ということです。非常に多くのお客さまと取り引きさせていただき、その業種も多岐にわたっています。そのお陰で、景気動向の影響を受けにくい体質になっています。リーマンショック時はさすがに業績が落ちこみましたが、既にリーマンショック以前の状態に戻っています。

グローバルに新しいビジネスチャンスを見いだす

-- 海外への展開はどのようになっているのでしょうか。

野村 ドイツ、英国、フランス、イタリア、米国、カナダ、ブラジルといった欧米諸国、中国、韓国、台湾、マレーシア、シンガポール、フィリピン、タイ、インドのアジア諸国に拠点を展開し、世界中で日本と同等の製品、サービスをお届けする体制づくりを進めています。近年は、日本企業のアジア進出が目覚ましい中、これに対応する動きをとっています。また、アジアでは、製品のスペックを上げてもコストは上げられないので、戦略にも工夫が必要となっています。

-- 御社の成長のきっかけはどのようなところにあったのでしょうか。

野村 工場のFA(ファクトリーオートメーション)化の流れが大きかったと思います。当初、FAで使われるモーターはサーボモーターが多かったのですが、リーズナブルな価格でサーボモーターに見合う性能のステッピングモーターを提供し始めました。製造装置の分野でのモーター需要が増大し、そこに求められる製品を提供できるようになったことで業績も伸びました。

 特に半導体製造装置では、位置決めや制御の部分で高性能のモーターが大量に必要になります。この半導体製造装置に当社のモーターが採用されたことで、大きな成長のきっかけになりました。また、モーターの周辺回路も専用に設計して提供していることも大きいと思います。

 次のステップとしては、半導体製造装置のときと同じように次のストリームをいち早く察知して、そこで採用されるモーターを提供することだと思います。

 今後も、カタログ標準品ビジネスを世界中で展開し、即納や無料の技術セミナー、モーター選定、フィールドサービスなど、日本で当たり前にしてきたビジネスモデルを海外でも伸ばしていきます。それがお客さまから信頼され、喜ばれることとなり、業績向上につながると信じています。

 

オリエンタルモーター社長
野村重幸(のむら・しげゆき)
1982年法政大学経済学部卒業。同年オリエンタルモーターに入社。2005年取締役。12年取締役専務執行役員を経て、14年1月に社長に就任。

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