1912(大正元)年に創業し、飴を中心に事業を続けてきたカンロ。同社の代名詞であるカンロ飴のほか、近年ではバラエティーに富んだキャンディーやグミ、素材菓子など、多くのヒット商品が生まれている。今後の戦略を聞いた。聞き手=本誌編集委員/清水克久 写真=佐藤元樹

 

変化の激しい菓子業界で生まれたロングセラー商品

濃厚で贅沢な味わいがヒットにつながった「金のミルク」

濃厚で贅沢な味わいがヒットにつながった「金のミルク」

-- 御社の歴史は100年を超えるそうですね。

戸名 大正元年に、山口県で宮本製菓所として創業しました。創業当時から飴にこだわっており、後に社名にもなったカンロ飴は、日本人の好む味を、との思いから、隠し味に醤油を使ったキャンディーです。来年で発売60周年を迎えるロングセラー商品ですが、発売以来、一切レシピを変えていません。それでも、いまだに多くのお客さまに支持されています。

 お菓子業界は商品の新陳代謝が激しく、60年も売れ続ける商品というのは異例中の異例です。その中でカンロ飴は、スーパーでの配荷率はいまだに高く、現在もファンが多いです。

 また、カンロ飴以外でも1981年に発売したのど飴、2002年に発売したグミなど、常に業界をリードする商品を送り出してきたという自負があります。

-- 三菱商事から転籍されてきた背景は。

戸名 私は三菱商事で長らく食糧・食品部門で仕事をしてきました。当社は73年から三菱商事を販売代理店としており、私も三菱商事やその後に転籍した日本食品化工時代から、当社の仕事をお手伝いしたことがあるので、取引先としてよく知っております。ただ、外から見るのと内部で現場を見るのとでは全く違います。

-- 菓子業界の経営状況はどうですか。

戸名 国内人口がどんどん減っていく時代ですから、今後、全体として需要が伸びていくとは考えにくい。利益、売上高ともに厳しい状況にあると思います。このような経営環境の変化を踏まえ、当社もこれまでとは異なった視点での会社運営が求められているわけで、私が社長になったのは、その一環だと思っています。販売の面では総代理店の三菱商事との連携をさらに強化し、商品開発やマーケティングにも力を入れていきます。

-- 販売面では、近年、コンビニエンスストアの影響力が大きいですね。

戸名 コンビニの販売力はものすごいの一言に尽き、コンビニの棚に並べられているかどうかが売り上げに大きく影響します。コンビニや量販店と、協力体制を創り上げることは非常に重要で、PB商品の開発を含めて、取り組んでいます。消費者ニーズの変化が速い現在、売れない商品はすぐに棚から無くなってしまいます。商品本来の良さが伝わる前に、棚から下ろされてしまうこともあります。そのため、商品によっては、販売方法を変えて時間をかけてじっくり育てる方法が必要だと考えています。

商品開発とマーケティングを軸に愚直に取り組む

-- PB商品にも取り組んでいるのでしょうか。

戸名 以前は、PB商品には否定的な意見が多かったのですが、現在は比較的柔軟に考えています。PB商品の欠点は、当社が流通の下請という位置付けになってしまう危険性があることですが、ナショナルブランドの棚を確保するためにPB商品に取り組むということもあり得るわけです。ただ、大量に売れるからといっても工場の生産力にはキャパシティーがあるので、バランスを考えなければなりません。

-- 最近の新商品などで、ヒットしているものは。

戸名 12年に、大人のプレミアムキャンディーとして発売した「金のミルク」がヒット商品になっています。素材を厳選し、香料や着色料を一切使用しない独自製法にこだわっています。先ほど話したように、お菓子は商品寿命が短いものが多いのですが、この商品はカンロ飴のように息が長い商品になってほしいと願っています。ミルクキャンディーとしてはやや高価ですが、それに見合うだけの濃厚な味わいがあります。

-- 新商品開発のポイントや今後の展望をお聞かせください。

戸名 消費者の健康志向が高まっていますが、当社も早くから「健康のど飴」を送り出しています。今後も「健康」という軸は重要になってくるでしょう。また、キャンディーはおいしいことが基本ですので、多様な嗜好に応じた商品開発も行っていかなければなりません。

 今、菓子業界の経営環境は大変厳しいものがあります。しかし、当社は歴史があり、看板と言えるロングセラー商品があり、信用力、ブランド力は高い。それを踏まえて国内でのシェアを上げていくという戦略が基本にあります。現在、当社のシェアは概ね10%ですが、言いかえると、90%のチャンスがあるわけです。問題は今の10%のシェアをどれだけ伸ばせるかということが、最優先の課題なのです。そのために研究開発に力を入れ、魅力ある商品を出すことが求められます。国内は成熟しているからと安易に海外を志向するのではなく、将来のグローバル化を見据えた上で、商品開発とマーケティングの両輪で、愚直に国内シェアアップに取り組むことが大事だと思っています。

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