1892年に創業したアース製薬は、主力の殺虫剤部門や日用品部門に次ぐ第3の柱としてガーデニング部門の強化を図っている。大塚グループ創業家出身の大塚達也氏からバトンを引き継いだ川端克宜社長に今後の展望を聞いた。聞き手=本誌編集委員/清水克久

100年超の老舗企業アース製薬のトップ川端克宜社長が意識していること

-- 上場企業で100年超の老舗企業のトップに、常勤取締役の末席で最年少(42歳)の川端さんが抜擢された背景をご自身でどう思っていますか。

川端 大塚達也前社長(現取締役会長)からお話を聞いた時、正直、驚きました。ただ、経営陣はそのまま残っていますので、これまでの良いところは継承しながら、変化すべき部分は変化していく。そのための人事でもあると思います。

 当社はもともと、殺虫剤を主力商品として成長してきました。そこに「バスロマン」や「モンダミン」といった日用品を加えて、新たな経営の柱にしてきました。そして今後は3つ目の柱として、ガーデニング事業を強化していく方針です。私は、社長就任前にはガーデニング事業を担当しており、この部門を強化する狙いもあったと思います。

-- ガーデニング事業は順調に伸びているのでしょうか。

川端 私が担当してきた2年間でも、毎年倍々のペースで業績が伸びてきました。私自身というか、会社の風土なのですが、新しいことに挑戦する場合、「やめておこうかな?」ではなく、「やってみる」というスタンスがあります。仮説を立てて、まずチャレンジしてみるのです。その上で検証をし、次の行動に反映させる。もちろん、中には失敗もあるのですが、失敗から学ぶことも少なくありません。このようないい風土は、これからも、もっと広く社内に浸透させていきたいと思います。

-- 日本では若手社長の部類になりますが、特に意識していることはありますか。

川端 上場企業ですし、毎年の業績のことは非常に重要なのですが、それ以上に大事なのは会社を永続的に成長させていくことです。数年単位のスパンで物事を考えるのではなく、10年あるいは20年後のことを考えて、経営していかなければいけません。大塚前社長からは「自分の好きなようにやればいい。何なら、20年でも社長をやってください」とも言われました(笑)。

ロングセラー商品も多いアース製薬の商品群

ロングセラー商品も多いアース製薬の商品群

-- 現在の業界、御社の状況をお聞かせください。

川端 競合も多いですし、商品の入れ替わりも激しい業界です。一方、生活必需品ということもあって、景気の影響は受けにくい面もあります。幸いに当社のコア事業である殺虫剤は国内で圧倒的なトップシェアを維持しながら安定しています。入浴剤や芳香剤は、景気変動の影響を若干受けるものの、着実に伸びています。

 ただこの業界は、全体として商品サイクルが短い傾向があります。お客さまは常に新しい商品を試したいという志向が強いのです。その一方で、ロングセラーも多数あります。当社の看板商品である「ごきぶりホイホイ」は、1973年の発売以来、改良を繰り返しながら今も売れ続けています。

 ほかにも「ダニアース」「アースノーマット」「アースジェット」など、各カテゴリーでナンバーワン商品が多数あります。いずれも常に改良を繰り返してロングセラーになっているものばかりです。

 現在の取り扱い商品は約600アイテム程度ですが、そのうち100以上は新商品と入れ替わっています。消えていく商品もありますが、年間100ものアイテムを世に出せる開発力は、業界一だと自負しています。

アース製薬を支える地域密着の営業部隊「EMAL(エマール)」

-- 御社の場合、印象的なCMもよく話題になりますね。

川端 CMの内容もさることながら、重視しているのは営業との連携です。せっかくCMを見ていただいても、店頭に商品が並んでいなければ意味はありません。当社の営業部員の数は同業他社、あるいは同規模の企業と比較して、非常に多いと思いますし、それが重要なポイントだと考えています。

 また当社独自の「EMAL」という営業組織を10年がかりで創り上げました。これは、地域に住む生活者、多くは主婦を中心にした営業組織で、当社が直接雇用し、エリア内の小売店を回っています。生活者の目線で、お客さまに分かりやすいPOPなどを制作し、地域特性や季節感あふれる装飾で、店頭にきめ細かく商品を並べて、売り場に反映させています。

 良い商品を作るメーカーは多いのですが、営業にまできめ細かく気を配らなければ、商品は売れません。EMALの組織を作ろうとした10年前には過大な投資だと言われたこともあったそうですが、今では当社を支える重要な経営基盤のひとつになっています。

-- 海外戦略はどのようになっているのでしょうか。

川端 海外戦略を重視しなければならないことは明白です。基本的には、タイ、中国を中心としたASEAN諸国をメーンに考えています。現在、売上高に占める海外比率は3%程度なのですが、将来的には、海外売上高200億円を目指します。

 

 

 アース製薬社長

川端克宜(かわばた・かつのり)

1971年生まれ。94年近畿大学商経学部卒業、同年アース製薬入社。2011年役員待遇大阪支店長。13年取締役ガーデニング戦略本部本部長。14年3月に社長に就任。

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