創立者・津田梅子の名と共に、日本で最も有名でかつ先進的な女子高等教育の魁として知られる津田塾大学。創立当初から女性の社会進出を謳い、卒業生には政治家、研究者なども多い。人口減少や女子大の共学化が進む中で、さまざまな改革に取り組んできたが、今後も大学間競争は厳しくなることが予想される。そこで國枝マリ学長に現状と将来展望を聞いた。 (聞き手/本誌編集委員・清水克久)

入試段階から「書く」こと重視の少人数一貫教育

―― まず貴大学の概略をお聞かせください。

津田塾大学 学長
國枝マリ(くにえだ・まり)
1969年津田塾大学学芸学部卒業。78年コロンビア大学大学院(M.A.取得)、79年同(M.Ed.取得)、83年同(Ed.D.取得)。85年津田塾大学非常勤講師。88年北海道東海大学助教授・教授。92年津田塾大学助教授を経て、98年同教授。2012年11月から現職。

國枝 本学は1900年、女子英学塾として誕生しました。創立者の津田梅子は、6歳にして岩倉具視の欧米視察団に他の4人の女子留学生と共に同行しています。その後、ワシントンで米国の教育を受け、生活文化を体験して11年後に帰国。しかし当時の日本は、女子の高等教育や社会参加などに対しては大変厳しい社会情勢でした。梅子は2度目の米国留学で大学教育を受け、日本にも女性のための真の高等教育機関をつくりたいと願い、津田塾大学の前身、女子英学塾を創設しました。

―― 入学してくる学生はどんなタイプですか。

國枝 どちらかというと、一見おとなしくまじめですが、実は、論理的思考力や洞察力、表現力が豊かで個性的な学生が多いです。入試にもこだわりがあり、記述式問題を重視しています。これは入学後も、〝書く〟ということを大切にした教育をしているためです。卒業後、転職や出産・育児での休職をはさんでも、長い間、働き続けている方が多いのも特徴の1つです。そのような優秀な先輩方の実績が多数あるので、就職希望者の内定率は95%を超えています。

―― 教育面での特徴はどのような点ですか。

國枝 先ほど〝書く〟ことを重視すると述べましたが、1年生から少人数クラスで徹底的に「ものを書くとはどういうことか」「自分の考えを伝えるにはどのように文章を構成すればよいか」といった表現法、同時に他人が書いた文章の読み方を学ぶようにしています。批判的にものを読み、それに対して自分がどう対応して表現していくのか。いま、日本の若者はコミュニケーションが不得意といわれていますが、こういった教育を通じて、コミュニケーション能力を鍛えるのです。ゼミは多くても15人程度を目安にして、4年間、少人数で一貫した教育を行っています。

―― いま、女子大には共学化の流れもありますね。

國枝 確かに18歳人口の減少を考えると、人口の半分を占める男子を対象としないのはどうかという指摘もあるでしょう。しかし、建学時の理念を曲げることは考えていません。一般に女子大が共学化する際に、男子学生向けの学部や学科を新設することが多いのですが、本学では既に近隣の一橋大学、東京外国語大学などとの単位互換制度を導入しています。他にも多摩地域にあるICU、国立音楽大学、武蔵野美術大学、東京経済大学とTAC(多摩アカデミックコンソーシアム)協定を結び、単位互換だけではなく、図書館をはじめとする施設の相互利用も行っています。その意味では、総合大学にも引けを取らない研究・学習環境が整っているといえます。

建学の精神を忘れず、女性の社会進出支援にまい進

 ―― 理系の教育にも力を入れておられますね。

國枝 本学では早くから理系の学科(数学科・情報科学科)を置いています。最近では女性研究者の支援、または女子中学生の理系分野の体験学習などを行っています。今年8月には、本学とお茶の水女子大、東京女子大、日本女子大の共催で「理系女子でいこう!」という女子中学生向けのイベントも開催しました。女性の社会進出が進んだと言っても、まだまだ大学での理系専攻者で女子が占める割合は3割未満ですし、研究者総数でいえば14%しか女性がいません。この「理系分野で働く女性」を増やす活動は今後も力を入れていきます。

―― 本部キャンパスは小平市ですが、渋谷区の千駄ヶ谷にもキャンパスがありますね。

國枝 千駄ヶ谷にキャンパスがあることで、本学が広く認知されることは重要だと思っています。ここでは教員と学生が共に学ぶ大学院文学研究科英語教育研究コースをはじめ、各種英語講座、国際教養講座、国際機関・国際協力研修プログラムを実施しており、オープンスクールとして学びの機会と場を提供しています。これからは本学の特徴を生かしたさらなる飛躍の場として活用していきます。

―― 現在、志願者数の増減はどのような状況ですか。

國枝 昨今は入試形態が多様化し、単純に増減を語りにくいのですが、堅調に受験生を集めています。また競合する私立女子大の中でも本学を選ぶ学生が多いと自負しています。しかしながら、大学間競争の激しい今日、創立以来の伝統は守りながら、新たにさまざまな施策で本学の存在感をアピールしていく必要があると考えます。さらに本学は全国から学生が集まるので小平キャンパス内に3つの寮があります。ただ、昨今の経済環境もあり、首都圏の学生が増えており、広く優秀な学生を集められるような工夫も大切です。津田梅子が掲げた「広い視野をもち、社会に貢献する女性」を多数輩出できるよう、今後も努力してまいります。

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