2013年1月、新たな生産拠点となる結城事業所に新設した茨城工場の火入れ式

2013年1月、新たな生産拠点となる結城事業所に新設した茨城工場の火入れ式

 果樹、野菜向け農薬専業メーカーのアグロ カネショウは、創業60周年を迎える2010年に向けて生産体制の効率化を進め、所沢、福島、直江津の3箇所に分散していた生産拠点を福島新工場に集約した。しかし、その直後の11年、東京電力福島第一原子力発電所から1キロメートルという至近距離に立地する同工場は、東日本大震災による津波の被害に加え、原発事故に起因する放射能汚染により操業停止を余儀なくされた。

 「福島工場には、当社の全生産量のうち96%を集約していました。これが完全にストップしたことで、会社の存続自体が危ぶまれるところまで追い込まれることになったのです」と、櫛引博敬社長は当時を振り返る。しかし、取引先の協力などもあって代替生産にこぎつけ、何とか急場を凌ぐことができた。

 そして、翌12年には新たな生産拠点として茨城県結城市の独バイエル社旧結城中央研究所を買収、13年4月に生産がスタートしている。

今年10月に開催した東証一部上場記念パーティーにて、前農林水産大臣の林芳正氏と

今年10月に開催した東証一部上場記念パーティーにて、前農林水産大臣の林芳正氏と

 現在の農薬業界については「国内農業生産は縮小傾向ですが、海外に目を向けると世界の人口は増加し続けており、安定した食糧供給につながる農薬産業は成長市場といえます」と語り、すでに拠点を設けているベルギーや韓国に加え、今後は中東や東南アジアなどさらに幅広い市場を開拓していくという。

 また、主戦場である国内でも独自の農業振興策に取り組む。

 「後継者難で耕作面積は減り続けていますが、われわれは農家のスキルアップに貢献して日本の農業を守っていきたい」という言葉通り、来年1月からは生産者向けに「土壌分析サービス」をスタート。さらに、農業法人を起ち上げ北海道に自社農場「北海道ファーム」を設立して、若者の就農をバックアップするという構想もある。

 技術面から経営面まで、同社では農家に密着したサポートを欠かさない営業活動と地道な研究開発で、新しい形の農業の実現を目指していく。

 

 

くしびき・ひろのり──1949年青森県生まれ。72年立教大学法学部卒業。73年兼商(現アグロ カネショウ)入社。81年取締役、85年専務取締役を経て91年代表取締役社長就任(現任)。

くしびき・ひろのり──1949年青森県生まれ。72年立教大学法学部卒業。73年兼商(現アグロ カネショウ)入社。81年取締役、85年専務取締役を経て91年代表取締役社長就任(現任)。

 

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