旧鐘淵化学工業から「カネカ」に社名を変え、テレビCMなどで知名度向上を図る。直接消費者が触れる商品が少ないので地味だが、足元の業績は堅調で、2020年までに現在の倍近い売上高1兆円達成の目標を掲げている。聞き手=本誌/清水克久 写真=佐藤元樹

 技術力を基盤に7セグメントで多角展開

還元型コエンザイムQ10などの ライフサイエンス分野に期待

還元型コエンザイムQ10などの
ライフサイエンス分野に期待

-- 事業の内容をお聞かせください。

角倉 会社創立当初は苛性ソーダなどの化成品と食品が中心でしたが、その後塩化ビニール樹脂、発泡樹脂製品などの製品開発をしてきました。また成長領域として期待される医薬品中間体や原薬の開発、それに還元型コエンザイムQ10の製造にも着手し、ライフサイエンス分野も大きく成長しました。

 現在、事業領域としては、当初の化成品、食品、発泡樹脂製品に加えて、機能性樹脂、ライフサイエンス、エレクトロニクス、合成繊維、の7つのセグメントから構成されており、このうち、化成品と食品は売上高で1千億円を超えています。

-- 非常に多くの事業を展開されていますが、中核は。

角倉 一見すると非常に広範な事業を展開していますので、何をしている会社か分からないと思います。ただ、社内的には、ダイバーシティ(多様性)と申しますか、垣根がないことが当社の特性、核となっています。それぞれが、全く関係がなさそうに見える事業でも、基礎技術の部分では組み合わせをしていたり、応用しながら進んでいます。

 従来からある技術でも新しい組み合わせを見付けることで、社内ベンチャーのような新規事業を生み出せる環境があります。例えば、エレクトロニクスセグメントで電子材料に使われる各種フィルムには樹脂加工技術が生かされています。

 社外に向けても、基礎技術や既存技術から生まれた製品を多角的に提案しています。コエンザイムQ10は、もともと機能性食品なのですが、養殖の飼料に添加されたりしています。またラブレという乳酸菌は食品事業部がコンビニエンスストア向けにオリジナルのデザートを提案するなどの取り組みを行って成果を出しています。

-- 今後、どのような分野が有望でしょうか。

角倉 ライフサイエンス事業、ヘルスケア事業部門は現在も、そして将来性も有望だと考えています。当社では再生医療関連で、幹細胞の培養をずっと研究しています。このジャンルは、研究成果が出たからすぐに事業化できるものではないのですが、今年、薬事法の改正などもあって、この分野の事業環境が、かなり整備されてきています。

海外への大型投資とM&Aで1兆円企業へ

-- 海外にも積極的に展開されていますね。

角倉 現在、売上高の約40%が海外です。ただ事業ごとに見ると、食品事業はほぼ100%国内での売り上げで、医療用カテーテルも、ほとんどが国内です。

 一方、ウィッグ(かつら)などに利用されているアクリル合成繊維のカネカロンは、かつらやつけ毛用途で、アフリカなどでは50%以上のシェアを持っており、海外での売り上げが9割以上になっています。また、塩化ビニール樹脂の透明性と耐衝撃性などの機能を強化する機能性樹脂も世界で50%以上のシェアを持っています。このような製品をはじめとして、将来的には全体の70%を海外での売り上げにしていきたいと考えています。

-- 海外売上高比率の目標は相当ハードルが高いですね。

角倉 当社の海外展開は古く、約40年前にベルギー、約30年前に米国、そして約20年前にマレーシアに生産拠点を作りました。機械メーカーと違って、素材メーカーである当社は、建設する工場の規模が大きくなりますので軽々に海外進出はできませんが、他の大手化学メーカー以上に積極的に取り組んできました。例えばベルギーの工場は、日本の化学メーカーとしては初の欧州進出でした。今後はアジアの拠点であるマレーシアで、向こう3年間で500億円規模の設備投資をする計画もあり、米国などを含めて1900億円規模の投資を予定しています。

-- 印象的なテレビCMですが、CMの主な目的は。

角倉 2004年にカネカに社名変更したのですが、その時に認知度が大きく低下したのです。太陽電池やコエンザイムQ10をはじめとしてエンドユーザーに直接届く商品も増えてきていますので、改めて「化学をベースにして、身のまわりで役立つものを作っている会社」と、アピールするのが狙いです。お陰さまで認知度も上昇、採用面でも顕著な効果が出てきました。

-- 今後の目標は。

角倉 5年前の創業60周年の時に、中期経営計画として20年までに売上高1兆円企業に、という目標を掲げました。今はちょうどその半分が経過したところですが、M&Aを含めて1兆円企業を目指す土台はできたと思っています。これからは世の中の変化をとらえながら、スピードを上げていかなければなりません。今は、いかに早期に1兆円企業を実現するかということが目標になっています。そのためには、当社の伝統である研究開発力のさらなる向上、そして海外展開への注力は欠かせないと考えています。

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