2005年に東京都立大学、都立科学技術大学、都立保健科学大学、都立短期大学が再編・統合されて誕生した首都大学東京。4学部28学科・コースを擁するユニークな総合大学で、現理事長は初代Jリーグチェアマンを務めた川淵三郎氏。今後の展望を聞いた。 聞き手=本誌・清水克久 写真=佐藤元樹

Jリーグの運営で培った経験を大学経営に生かす

―― どのような経緯で大学の理事長に就任されたのですか。

川淵三郎(かわぶち・さぶろう) 1936年生まれ。61年早稲田大学卒業、同年古河電気工業入社。91年日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)初代チェアマン。2002年日本サッカー協会会長(キャプテン)。13年4月より現職。

川淵三郎(かわぶち・さぶろう)
1936年生まれ。61年早稲田大学卒業、同年古河電気工業入社。91年日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)初代チェアマン。2002年日本サッカー協会会長(キャプテン)。13年4月より現職。

川淵 当時副知事だった猪瀬直樹さんから「次の都知事選に立候補するので選挙対策委員長をやってくれないか」と連絡があり、その時に猪瀬さんの著作を取り寄せていろいろと勉強し、この人なら大丈夫と思って選挙対策委員長を務めました。その後、知事選に当選した猪瀬さんから「首都大学東京の理事長に」と連絡があったのですが、選挙の〝論功行賞〟のようなものならお断りするつもりでした。その後で、東京都の事務方の人が来られて話を聞いたところ、猪瀬さんのトップダウンの指示ではなく、現場の事務方からの推薦であったことが分かったので、引き受けることにしました。

 理事長は大学経営のことに専念して、教学のことは学長以下が行います。つまり経営ならば、古河電気工業で約30年間働き、その後のJリーグ、日本サッカー協会で16年間、組織運営をしてきたので、その経験を生かせると考えたのです。

―― 理事長に着任されて、気が付かれたことは。

川淵 欧米の大学は入学が簡単で卒業しにくい、でも日本では入るのが難しく卒業は簡単だという話をよく聞きます。私は、卒業を難しくしたほうがいいと思います。在学中に一生懸命勉強させて、苦労を重ねさせたほうが、社会に出てから役に立つと思うからです。ある時、学長に相談したのですが、「学生は卒業しやすい大学に流れます。そんなことをしたら大学は潰れますよ」と言われました(笑)。

 でも、「首都大学東京は卒業するのは難しいけれど、卒業生は有能だ」という評判が広がれば、志願者は増えると思います。

―― 来年10周年を迎える首都大学東京の課題は。

基礎ゼミナールの授業風景

基礎ゼミナールの授業風景

川淵 知名度がとても低いのでどうやって世間に広げていくかが目下、最大の課題です。首都大学東京と聞くと、多くの人は新設された私立大学と思ってしまいます。学生にアンケートすると、相当数が大学名に不満を持っていることが分かりました。

 友人に大学の説明をするときや、就職活動でも、必ず「元の都立大学です」と説明しなければならない。これが学生のプライドを傷つけています。また卒業生も「自分たちの大学がなくなってしまった」と感じているようで、そうなると後輩のために何かしてやろうという気持ちが湧きにくい。これは大きな問題です。まだ10年弱の歴史しかなく、首都大になってからの卒業生もわずかしかいません。彼らが社会の枢要な地位に上り、影響力を発揮できるのにはまだまだ時間がかかります。だから、今のうちに知名度を上げて、立派な大学にすることが必要です。

1年生からのインターンシップ制度、ゼミが充実

南大沢キャンパス<BR>(中央はシンボルである「光の塔」)

南大沢キャンパス
(中央はシンボルである「光の塔」)

―― 知名度が低い中で、志願者数の推移はどうですか。

川淵 受験生の親御さんや高校、予備校の先生はよくご存じですから、その点では大きな問題はありません。志願者は9千人以上おり、志願倍率は一般選抜で7倍を超えています。

―― 首都大学東京の特徴、セールスポイントは。

川淵 私がとても面白いと思ったのは、1年生からインターンシップに行かせる制度があることです。選択科目ではあるのですが、それでも3割くらいの学生は1、2年生の時にインターンに出ています。学生が将来の目標を見定める、目的意識を持つという以外にも、首都大学東京の取り組みを広く社会に伝えることで、大学の知名度向上にもつながっていると思います。

 また1年生から入れるゼミがとても充実しており、例えば「大学で何を何のために学ぶのか」という興味深いテーマもあります。このテーマで真剣に討議して自分自身で問題を発見、解決していく能力を身に付けるのはとてもいいことだと思います。特に1年生からいろいろな問題を意識させるということは、非常に意義があると思います。

―― グローバル人材育成のほうはいかがでしょうか。

川淵 これからは世界と本格的に競争していく時代が来ます。そのために2015年度入試からグローバル人材育成入試(AO入試)を始めました、これで入学した学生は海外留学が必修です。また海外協定校との交換留学や短期語学研修等の留学制度も充実しています。一方で留学生の受け入れも増えており、その人たちと交流を深めることでグローバルな意識を高めてもらいたいと思います。

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