創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。

100年弱の歴史を持つ高砂香料工業

── まず御社の特徴をお聞かせください。

桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える香料の専門メーカーです。基本的にBtoBのビジネスを展開しており、現在は4つの事業を中心に展開しています。食品用の香料を扱うフレーバー事業、香水やシャンプー、入浴剤や芳香剤などの香料を扱うフレグランス事業、フレグランスの素材となるアロマケミカル、そして、医薬中間体などを扱うファインケミカル事業です。

 当社は創業以来、技術立脚を企業理念に掲げてきました。合成香料の分野では、その技術力が評価され国内、海外を問わず、当社の強みとなっていると思います。

桝村 聡

桝村 聡(ますむら・さとし)
1983年千葉大学工学部卒業。同年高砂香料工業入社。2013年取締役常務執行役員。14年5月に社長に就任。

── 社外取締役には、ノーベル化学賞を受賞された野依良治先生もいらっしゃいますね。

桝村 当社は83年に世界で初めて不斉合成法によるℓ-メントールの工業化に成功しているのですが、その開発において野依先生と共同研究を行いました。その経緯があって、現在も社外取締役に就いていただき、大所高所から貴重なご意見を伺っております。

── 海外への展開も早かったと聞いています。

桝村 60年にはニューヨークとパリに駐在所を開設しています。その後は、米国・メキシコ・ブラジル・フランス・ドイツ・スペイン・シンガポール・中国など、研究所・工場を持つ拠点をはじめ、全5大陸を網羅する30を超える事業所を展開しています。当社の社員の60%は海外の人材です。

── 社長ご自身は、入社以来、技術畑だとうかがっています。

桝村 もともと私はフレーバーリストなのです。当社の場合、匂いの元となる原料の開発、製造と、その原料を使って顧客である企業が求めるフレーバーの開発、製造の両方を行っているのですが、私はずっと後者を担当していました。長年研究所にいたものですから、私自身が将来的に社長になるとは全く想像していませんでした。

── 社長として、今後目標とされることは。

桝村 もともと技術立脚を理念に掲げる会社ですので、原点に立ち返って、製品作り、工程の改良など、イノベーションを早めに実現していきたいと思っています。

── 中期経営計画を策定中とうかがっておりますが、どのような内容になりますか。

桝村 まず、14年でこれまでの中期経営計画が終了しました。これまでの中期経営計画では、売り上げをみると海外での実績が比較的好調でした。それを含めて、売上目標は概ね目標に近づいたのですが、利益面では難しいところです。

 原因としては、13年4月の平塚工場の火災事故があります。事故の直接被害もありますが、よりいっそう安全管理に力を入れるようになり、そのコストが掛かっています。今は、それらの反省を込めた新たな中期経営計画を策定中です。

桝村聡氏が語る高砂香料の未来 東南アジア市場への取り組みを強化

── 新たな中期経営計画では、数値目標はありますか。

桝村 策定中ですので、具体的には申し上げにくいところがあります。しかし、利益体質の改善、研究開発の強化、事業の課題解決、人材育成、顧客の信頼回復の5つを軸に考えています。加えて、売上高の海外比率が5割に達するような状態ですので、グローバルな視点での制度改革も進めていかなければならないと思っています。

研究開発力が企業価値の源泉である── 人材育成の面では苦労も多いのではないでしょうか。

桝村 広汎な仕事をすべて社内で実施することは難しいので、ある程度は外部の力をお借りすることも必要だと思います。しかし、すべてアウトソーシングしていると、骨太の会社にはなれない。会社の基盤が成長しないと思っています。そういったことを考えると、1つの課題に対して自分の力で解決していくことができる、そういう能力を持った人材を育てていかなければならないと思っています。

── 市場として、今後の展望をお聞かせください。

桝村 日本市場は、これ以上人口が増えることが望めない以上、やはり海外に今まで以上に目を向けていかなければならないと思っています。特に東南アジア市場には注目しています。当社は早期にシンガポールに拠点を設けていますが、その利を生かしていきます。また今春、シンガポールに新工場を建設し、研究所、工場も集約しました。

 市場としては、ただ香りが良いと言うだけではなかなか認めてもらえなくなっています。安全・安心な製品を安定してお届けすることはもとより、より付加価値が高い製品が求められています。モノが良ければ売れるということではなくなっています。そこを意識して、技術立脚の精神で今後も研究開発に力を入れていきたいと思います。

(聞き手=本誌/清水克久 写真=佐藤元樹)

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