中国の福建省に生まれ、広州中医薬大学薬学部の3年生だった20歳の時に一家で日本に移住してきた。中国では恵まれた環境に育ってきたが、日本に来てからは苦労の連続。日本語学校に通いながら大学受験に取り組み、慶応義塾大学に進学。卒業後は武田薬品工業に就職したが32歳の時に周囲の反対を押し切って起業した。

渡邉敏行氏が語る 起業の想いと「青蓮」の精神

 「(武田薬品工業には)6年半いましたが、営業の厳しさやマーケティングの重要性、それに品質管理や人材育成など、いろいろなことを学ぶことができました」と渡邉社長は語る。そのまま勤務し続ければ、今頃は幹部候補生の1人だったかもしれないが、どうしても起業するという夢は捨てられなかった。

 「人材派遣やITも考えましたが、中国と日本の架け橋になれるような仕事は何かと考えた時に真っ先に思い付いたのが中華料理店だったのです。街中にある店はまずいし高い。だから、本物のおいしい中華料理を手ごろな値段で提供すれば、きっと成功すると思ったのです」

 最高の料理を出すには、まずは料理人が鍵となる。そこで渡邉さんは親戚などの人脈を使って、中国で料理の国家資格を持つ一流の料理人を連れてきた。

 店名は「健康中華・青蓮(せいれん)」。医食同源の精神の下で、化学調味料を一切使用せず、塩分も控えて素材そのものの旨味を生かすことに徹した。

 「塩や化学調味料をたくさん使って味を調えれば確かにおいしいと感じますが、それは本物とは言えません。だから最初はお客さまから味が薄いと言われたこともありますが、調整を重ねた今では好評です」

 2003年に「青蓮」を運営するベビーピュアを設立し横浜市の戸塚と保土ヶ谷に2店舗を同時オープンさせ、現在は35店舗(FC含む)を運営するまでに急成長した。しかし、順風満帆だったわけではない。

 「駄目だと思ったこともありますが、いくつかの幸運も重なってここまで店舗を増やすことができました。でも今は出店を抑えています。ネックは店舗運営を任せられる店長以下の優秀な日本人スタッフが集まりにくくなっていることです」

 景気が回復して人材が売り手市場になると、飲食業はどうしても不人気となってしまう。だからといって、人件費を上げれば料理の単価も上げざるを得ないので「お手ごろ価格で本物の中華を」というコンセプトが守れなくなってしまう。昨年の改正労働法施行で、パート従業員も正社員並みの待遇をせざるを得なくなり、人件費負担のコストアップは今や、飲食業界全体に大きな影を落としている。

 「今は様子見ですが、その間に借金を減らして財務体質を強固にし、攻めのステージに入ったらFC展開でどんどん出店します」と渡邉社長は語る。

 

 

「ベビーピュア」ホームページ

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年3月号
[特集]
環境が経済を動かす

  • ・総論 災い転じて福となせるか 持続可能な社会の成長戦略
  • ・越智 仁(三菱ケミカルホールディングス社長)
  • ・100年後を考える 世界最大級の年金基金「GPIF」
  • ・金融業界はこう動く
  • ・脱炭素化の遅れがはらむ「座礁資産」の危険性
  • ・脱炭素化で移行する「地域循環共生圏」とはどういう社会なのか!?

[Special Interview]

 中田誠司(大和証券グループ本社社長)

 「SDGsを経営戦略の根幹に据えることで企業は成長する」

[NEWS REPORT]

◆稲盛哲学を学ぶ盛和塾解散を塾生たちはどう聞いたか

◆米中経済戦争の象徴となった「ファーウェイ」強さの秘密

◆EV時代にあえてガソリンエンジンにこだわるマツダのプライドと勝算

◆それは自由か幸福か——「信用スコア」で個人の信用が数値化された世界

[特集2]関西 飛躍への序章

 大阪万博開催で始まる関西経済の成長路線

ページ上部へ戻る