丸安毛糸は、今年7月で設立60周年を迎えるニット糸の専門商社だ。三代目社長である岡崎博之氏は素材展示会の開催やネット戦略の拡充、海外展開といった施策を相次ぎ実施。“ニットの伝道師”としてきめ細かな情報提供を行い、顧客との関係を強化しながら業績を拡大させる。

 

 岡崎社長が祖父と父のつくった会社を継いだのは、2003年。既に繊維市場は縮小し、海外への生産移転が進んでいた。丸安毛糸はニット製品の企画、販売事業に参入して本業をカバーするが、国内での糸の需要は下げ止まらない。岡崎社長は“経営の師匠”と仰ぐ知人に、糸からの撤退について相談。そこで「糸は生活に必要だから、業界で最後の1社を目指せばいい」という助言を受ける。その一言で「うちは糸の会社。糸と製品の両輪で頑張ろう」と吹っ切れた。

 以降、岡崎社長が取り組んだのは、きめ細かな情報提供による業界関係者のサポートだ。07年ごろには本社内にニットに関する資料や素材を備えた「KNITLABO」を開設、社外向けに開放した。「デザイナーらが好きなときに好きなだけニットに触れられる空間」を目指した。

 「僕らのミッションは品物の提供にとどまらず、ニットを作る楽しさや、販売した時の喜びを提供すること。情報を共有して『一緒にニットを作ろう』という姿勢を大事にしたかったんです」

 11年からは流行の素材を紹介する「ニット素材展示会」を開催。映画やCMのパロディーなど、工夫を凝らしたダイレクトメールを作成。当日は来場者に景品をプレゼントし、社員が一緒に写真を撮影するなど、肩肘張らないイベント運営を行う。各地の取引先からの要望を受け、現在では東京、大阪、新潟、福島、山形の5カ所で年2回ずつ開催。昨年は東京の3日間で180社500人を動員した。地方では同種の展示会が少なく、同じ会社から20人以上が来場するケースもある。「注文しないといけない雰囲気は皆無」ながら、展示会は有力な新規開拓チャネルに。結果、ここ数年の業績は右肩上がりで、今年3月期の売上高は21億円を見込む。

 メルマガやブログなど、かねてから注力するネット戦略も結実、サイト経由で顧客を獲得するケースが増えた。そのほか、海外展示会に出展し、イタリアやフランス、ベルギーといった欧州市場の開拓を進めている。

 「海外でもニットを手掛ける楽しさを伝えています。楽しむからこそ、お互いにいいビジネスができますからね」

 

 

「丸安毛糸」ホームページ

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