障がい者の一般企業への就職をサポートする就労移行支援事業所「カレント」を運営するLPH。グループで人材サービスを提供する強みを生かした支援プログラムで着々と事業基盤を築きつつある。

独自のプログラムで障がい者の就労を支援

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株式会社LPH
代表取締役会長
坂入 孝治 (さかいり・たかはる)

 障害福祉サービスから一般企業への就職が急速に増加しており、そうした人材をサポートする就労移行支援事業も活発化している。昨年7月、新たに設立されたLPHは「発達障がい者と働く事が当たり前になる社会を創る」をモットーに、水草水槽の育成プログラムを軸にしたユニークな運営が特長だ。

 働くことに不安があったり、仕事が長く続かなかったりといった悩みを抱える障がい者向けの就労移行支援制度では、生産活動や職場体験などの機会を通じて就職に必要な知識や能力の向上のために必要な訓練、就労に関する相談や支援を行う。

 「平成30年4月の障害者雇用促進法改正では、企業の精神障がい者雇用が義務付けられることから、今後ますます支援事業のニーズが高まってきます。弊社では、これまであまり注目されなかった発達障がい者を主な対象に、単に就業先を見つけるだけでなく、ずっと働き続けられるような細やかなフォローも含めた就労支援を行っています」と語るのは、同社の坂入孝治会長。

 5年前に設立し、幅広い分野で人材サービス事業を展開するラブキャリアの経営が軌道に乗ったことから、徐々に業容を拡大。クリエイティブメディアやウェブプロモーション、求人広告などの新規事業を立ち上げていく中で、人材サービスの強みが生かせる事業として障がい者就労移行支援事業に着目した。

 「営利企業が運営する一般的な就労移行支援事業所は、法制度の関係もあって収益を上げるためには、どうしても週5日来所できるような障がい者の方をを優先してしまう傾向があります。しかし、そうなると現状は週に1〜2日しか来所できない方々はサービスを受けることが困難になります。そこで当社では、そうした方々も受け入れ、それぞれの個性に応じたサービスを提供しています」

 もちろん、事業として行うため採算度外視とまではいかないものの、このような柔軟な受け入れ体制が可能になるのは、グループ全体の経営基盤がしっかりと安定しているからこそ、といえるだろう。

事業の根底にある障がい者支援への想い

 そもそも、このような事業に参入したもう一つの大きな理由が、坂入会長自身の異色のキャリアにある。

 「人材サービスの世界に飛び込む前は、養護学校で講師として働いていました。当時は窮屈で馴染むことができませんでしたが、私自身も社会性に乏しい部分を自覚していたので、余力ができればいずれはまた障がい者支援を中心とする、社会貢献に関わる事業に取り組みたいと考えていたのです」

 そんな同氏の思い入れもあって運営される就労移行支援サービス「カレント」では、自己理解講座、感情コントロール講座、対人コントロール講座などそれぞれの状況に応じたカリキュラムや、パソコンを使ったプログラム、ビジネススキルを身に付ける企業への訪問実習などに加え、他の事業所に見られない独自のプログラムを提供する。それが「水草育成プログラム」だ。

 手間と根気が必要とされる水草の育成を通じて、手先の器用さや継続的に物事に取り組む姿勢、そして作業分担に伴う責任感など、就労につながるさまざまな力を養うことができる画期的なプログラムであり、専門家のアドバイスを元に作成したマニュアルをベースに運用を開始しており、すでに大きな効果を発揮しつつある。

水草の育成を通じて利用者の長所を伸ばす

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困難を伴う水草育成を通じて社会貢献を目指す

 具体的な作業としては、水槽の水質管理や水槽内の掃除・換水作業、水草のトリミング、流木アート作成、水草アクアリウムの設置といった基本的なものから徐々にステップアップし、必要な備品や材料の発注業務、水草販売へ向けた準備・広報、データ管理などのデスクワーク、さらに展示会企画など各個人の長所に合わせて幅を広げていくことが可能になる。

 床面に防水加工が施された「カレント」内には大小12の水槽が設置され、来所者の作業を受けて水草が日々成長している。そして、単に作業のツールとしてだけではなく、さらなる広がりを期待できるのがこの「水草育成プログラム」のもっとも大きなメリットだ。

 「ここで水音を聴きながら水槽を目で見て楽しむ事自体も、癒しの効果があって大変好評を得ています。さらに、育成した水草を水槽にレイアウトして企業や病院、飲食店などにレンタルする事業もスタートしました。これにより、月1〜2回のメンテナンスに『カレント』の障がい者の方を雇用するといった循環も成立します。本来の就労支援事業との相乗効果を発揮して、より充実したサービスの提供ができるこのプログラムには大きな手応えを感じています」

 発達障がい者の中には、芸術的な素養が高いケースも見られることから「いずれは水草レイアウトの世界大会への出品も」と夢は広がる。

グループの総合力を結集し充実したサポートを実現

 さまざまな形で障がい者の就労移行支援を行う同社、その強みの背景となるのは、グループを挙げたバックアップ体制だ。

 「就労支援の期間中、職業体験などを行ったとしても、基本的に障がい者の方は無給となります。ただし、グループで人材派遣も行う当社では、例えば週の半分は「カレント」に通い、残り半分をグループ会社での企業研修とすれば、最低賃金であったとしてもその分の賃金を得ることができます。仕事によって賃金を得る経験は、その後の本格的な就労に向けても大きな一歩になります。ここが単独で運営する他の事業所との大きな違いです」

 さらに現在、障がい者採用に特化した求人マッチングサイト「pogy(ポギー)」のオープンに向けた準備も進行中だ。一般的な障がい者向け求人サイトでは、どうしても求職者の情報が不足するため結果としてミスマッチが起こりやすくなっているという。「pogy」では、グループ内で制作部門を持つ強みを生かし、動画やデータを駆使して求職登録した障がい者の特性を詳細にアピールすることができる。こちらも、人材サービスを得意とするグループの総合力を生かした取り組みといえそうだ。

 「人口のうち8%は発達障がい者である、というデータもあります。より良いサービスを提供すれば、口コミで利用者も増えていくものと期待しています」

 他に見られない障がい者支援の新たなスタイルは今後、さらに注目を集めそうだ。

 

株式会社LPH

  • 設立/2016年7月
  • 資本金/300万円
  • 事業内容/障がい者の就労移行支援事業所「カレント」の運営
  • 会社ホームページ/http://lph.co.jp

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