「支持政党なし」の代表は一風変わったビジネスマン

支持政党なし  不動産登記情報を扱う「登記簿図書館」をご存じだろうか。

 かつては法務局でしか取得できなかった登記簿情報がオンラインで簡単に取得でき、かつ、法務局では対応できないさまざまなサービスを提供するというものだ。保有登記情報は全国2450万件、会員数9500社を誇る。

 この登記簿図書館を手掛ける情報通信ネットワーク(JTN)グループ社長の佐野秀光氏は、とにかく変わった人物だ。事業家にして、選挙で話題になった「支持政党なし」の代表でもある。佐野氏の政治活動については後述するとして、その一風変わった事業家としてのスタイルと、現行のサービスについてまずは説明したい。

 佐野氏が会社を立ち上げたのは大学1年生の時。当初は学習塾や家庭教師派遣の事業を展開していたが、あるとき登記簿を取得する用件で出向いた法務局で、窓口の混雑ぶりを目にする。そこで閃いた佐野氏は、登記簿の取得代行ビジネスを思いついた。

 スタートさせたのは、全国に約1千カ所ある法務局の周囲にいる司法書士や行政書士の協力を得て、注文から1時間で登記簿をFAXするというサービスだ。とはいえ、1千カ所である。佐野氏自ら日本全国を歩き回り、協力者の確保に奔走。約10年かけて、全国に3千人のネットワークを作り上げた。

 「各法務局の担当が1人しかいないと、量が多い場合などには1時間以内にFAXできないこともあるので、人数を集めるのが大変でした」と、佐野氏は話す。

 2000年に法務局がインターネットによる登記情報の閲覧サービスを開始したのを機に、佐野氏は法務局より低料金で登記情報を提供することにした。現在は法務局で取得するより1円安い、334円で登記情報をユーザーに提供している。

 法務局より安いのだから、これだけだと当然ながら赤字。どうして商売が成り立つのか、と不思議に思われることだろう。実はここがミソで、収益源になるのは業務を通じて得られるデータベースだ。

 登記情報を必要とするのは主に不動産業者や金融業者などだが、その多くで最新の登記情報以外にも2次利用のニーズが高い。ユーザーは追加料金を払うことで、たとえば地域、延べ床面積、築年月日といったさまざまな条件を指定して登記情報を取得できる。個人や法人名が所有している不動産情報を、名前から検索できる名寄せ機能も利用可能だ。

 また、法務局が提供するのはPDFのみだが、エクセル出力にも対応して使い勝手を良くした。法務局では対応していないサービスとして、青い文字で地番が記された「ブルーマップ」をネットで閲覧でき、かつブルーマップ上から登記情報も取得出来る機能も備えている。

 「データが1千万件以上集まらないと商売にならないと思っていたので、それまでは我慢。何年耐えられるかの勝負でしたね」

 現在のサービスが可能になったのは、過去に苦労して築いた3千人のネットワークと登記情報の蓄積があってこそ。簡単には真似できないのが、佐野氏のビジネスの強みだ。

「支持政党なし」の狙いは選択肢を増やすこと

  佐野氏がこだわるのは「日本初」ということ。登記簿図書館のビジネスでも、法務局より「1円安い」という部分にこだわったという。

 同じく、冒頭に紹介した政治活動でも「日本初」の試みに挑戦している。小学生のころから国会議員になりたいと思っていた佐野氏。だが、どこかの政党に入りたいという考えは最初からなかった。「新党本質」(後に 「安楽死党」に改名)を結成し、2009年に初めて衆議院議員選挙に立候補した際、主張したのは臓器提供を条件に安楽死を合法化するという政策だった。

 16年に「支持政党なし」を立ち上げた目的は、有権者の選択肢を増やすこと、そして直接民主制の実現だ。法案ごとにインターネット投票を行い、賛否の比率に応じて党としての態度を決める。だから政策は一切ない。

 「たとえば議席数が10あれば、ある法案に賛成7割、反対3割の場合は7人が賛成に回り3人が反対に回るといったことができます。支持政党が特にない有権者の多くは消去法で票を投じているので、その受け皿になりたい」と、佐野氏は語る。

 事業と政治活動のどちらに比重を置いているのかという質問には

 「選挙にはお金がかかりますが、政治活動のために事業を行っているわけではありません」と答える。

 とにかく、自分の中にある願望に忠実に行動した結果、ユニークな人生を歩んでいる佐野氏である。

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年1月号
[特集]
平成の事件簿

  • ・[イトマン事件]闇勢力に銀行が食い荒らされた戦後最大の経済事件
  • ・[ダイエー、産業再生機構入り]一代で栄枯盛衰を体現した日本の流通王・中内 功の信念
  • ・[ライブドアショック]一大社会現象を起こしたホリエモンの功罪
  • ・[日本航空経営破綻]親方日の丸航空会社の破綻と再生の物語

[Special Interview]

 高橋和夫(東京急行電鉄社長)

 「100周年に向けて、オンリーワン企業の強みを磨き続ける」

[NEWS REPORT]

◆かつてのライバル対決 明暗分けたパナとソニー

◆経営陣に強い危機感 富士通が異例の構造改革断行

◆売上高1兆円が見えた ミネベアミツミがユーシンを統合

◆前門の貿易戦争、後門の技術革新 好決算でも喜べない自動車各社

[特集2]経営に生かすAI

 「人工知能は『お弟子さん』
日常生活が作品になるということ」
落合陽一(筑波大学准教授)

ページ上部へ戻る