古い体質が残り実体が見えにくい葬儀業界の中で、「パッケージ化された分かりやすいサービス」「家族葬など小規模葬儀に特化」「低価格だが高品質のおもてなし」「出店スピードの速さ」等を強みに事業拡大。人生の終末や死別後に備えた事前準備を行う。文=榎本正義

 

村元 康・ライフアンドデザイン・グループ社長プロフィール

村元 康氏

むらもと・こう 1965年東京都生まれ。92年鎌倉新書取締役。2000年エポック・ジャパン創業。08年早稲田大学大学院アジア太平洋研究科(現早稲田大学ビジネススクール)修士課程修了、MBA取得。16年エルアンドイーホールディングス(現ライフアンドデザイン・グループ)設立、社長に就任。

 

超・超高齢社会に向け業態転換を進めるライフアンドデザイン・グループ

 

葬儀産業の将来に危機感

 2010年に総人口に占める65歳以上の人口比率が20ないし21%に達する「超高齢社会」に突入した日本。そのスピードは衰えず、35年には世界に先駆け3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上という「超・超高齢社会」への突入が予想されている。

 これを受けて死亡者数は年々増加し、40年にピークの160万人を迎える。「死」に関連する市場規模も増加傾向で、07年に62.9兆円だったものが、25年には100兆円を突破すると見込まれている。

 一方で、葬儀売上高は死亡者数の推移ほど増加は見込まれていない。参列者が親族のみの「家族葬」、通夜・告別式などの儀式は行わず、自宅または病院から直接火葬場に遺体を運び火葬にする「直葬」や、告別式のみ行う「一日葬」など、一般葬に比べて小規模な葬式のニーズが高まっているためだ。

 葬儀費用は07年から約10年で約2割減の約190万円になっている(出典:一般社団法人日本消費者協会「葬儀についてのアンケート調査」より)。

 「私がこの業界に関わることになった当時、葬儀は伸びる産業で有望な市場だと思われていました。その市場成長性に目を付けた新規プレーヤーも続々参入していました。しかし私は、いろいろな資料を見ながら、死亡者数が伸びても葬儀単価が下がれば総額は上がらないと危機感を感じ、葬儀社の2代目、3代目経営者に講演などを通じて話していました」

葬儀の出版物を通じて業容を拡大

 そんな村元康氏は、葬儀の業界紙を発行していた鎌倉新書の創業者の次男だ。

 村元氏は他業界の企業に勤務した後、同社の取締役に就任するや、宗教家向けの書籍では市場が小さく売り上げも拡大できないと考え、供養産業(仏壇・仏具・墓石)・業者向けにビジネスを展開すべきと、供養産業のニュースや分析資料を掲載した業界紙「マーケティングレポート」(現「仏具」)を創刊。販売部数を大きく拡大し、同社の経営を安定させることに成功した。

「葬儀白書」

 さらに同社の経営資源である供養産業とのネットワーク、出版ノウハウ、業界調査の知見等を生かした新規事業を模索し、当時葬儀業界を全体的に網羅し各種データをまとめた上で業界の将来像を予測した「白書」がないことに目を付け、1997年に「葬儀白書」を執筆、出版する。これは4万5千円と高額ながら、数千部を販売し業界のバイブルとなった。

 その後、これら出版物を通じて全国の供養産業経営者、特に葬儀社経営者と接点ができるとともに、経営支援の依頼が多くなり、供養産業及び葬儀社の経営コンサルティングに着手する。

 2000年には経営コンサルタントとして付き合いの深かった葬儀社の若手経営者など11人に声を掛け、共同でエポック・ジャパンを創業。家族葬「ファミーユ」を全国展開するフランチャイズ事業を開始する。

 

ライフアンドデザイン・グループの事業と実績

 

消費者意識の変化に対応する葬儀ビジネス

 「葬儀に本当に必要なものだけをパッケージにして販売」「家族葬などの小規模葬儀専門」とコンセプトを定めたことが消費者意識にマッチし、価格を従来の2分の1から3分の1にしたこと、提供するサービスを明確にし、サービスの明細を付けることで明朗会計にしたこと、フランチャイズ化により管理や広告宣伝が効率化できたことなどにより、同社は高い収益率と成長性を実現した。

 「マクドナルドのハッピーセットのように、葬儀も本当に必要なものだけをピックアップし、パッケージにしてセット販売することで、消費者意識の変化に対応できるのではないか」と考えた村元氏は、ビジネスのイノベーションをどう生み出すのかという問題意識を持ち、その解決には実業だけでなく研究としてのアプローチも必要と考え、研究者としての道も歩み始める。

 現在は、早稲田大学商学学術院客員教授としてビジネスイノベーションを研究し、「起業家養成講座」を担当する一方、同大学研究推進部産学官研究推進センター技術コーディネーター/同大学インキュベーション推進室シニアコンサルタントとして研究成果の事業化支援を行っている。

 2016年設立のエルアンドイーホールディングス(現ライフアンドデザイン・グループ)は、他の葬儀社向け経営コンサルティング事業、葬儀社向けコンタクトセンター機能及びオペレーションシステム受託、販売・ライセンシング事業を行うビジネスサポート事業、葬儀受注・施行以外に顧客との新しい接点を創出するインターネット関連新規事業を行うウェブサービス事業を展開。傘下に葬儀・介護事業を行う洛王セレモニー、葬儀事業の神奈川こすもす、ルミーナ、介護・看護事業のセレサを擁し、連結売上高60億円をあげる。

葬儀費用が減少する中で右肩上がりの成長

 この葬儀関連子会社は自社葬儀会館を展開運営し、一般消費者向けに葬儀サービスを提供。顧客の変化に対応した家族葬専門葬儀社として小型会館・小規模葬に特化した効率経営を実現している。

 出店基準の明確化・事業計画フォーマットの確立などにより、出店スピードが速く、急成長中だ。ドミナント戦略による口コミ、メディアミックスによる高い広告宣伝効果などにより、それまで経営不振にあえいでいたこれら子会社の売上高はV字回復し、右肩上がりを続けている。さらに経営コンサルを行った他の葬儀社の業績までもが、いずれも右肩上がりになっているという。

 「今後は、これまで構築してきた顧客接点を活用し、葬儀やエンディング産業のみにとらわれず、誕生、就学、就職、出産、子育て、働く、住む、楽しむ、教育、リタイアなど、すべての人々のライフデザインをサポートすることでエンディング産業の企業から脱皮し、ライフイベントのプラットフォームを運営する企業となることを目指します」

 自分たちが家族葬を仕掛けた約20年前をはるかに超えるパラダイムシフトを想定し、自ら変化し続け、イノベーションを実現していくことに村元氏は狙いを定める。

 

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