2019年4月、国内インターネット専業証券で初の女性社長が誕生した。創業者であり、カリスマ社長と呼ばれた松本大前社長から後任を託されたのが清明祐子氏。清明氏は09年にマネックスグループに入社し、子会社社長やグループ役員を経て、マネックス証券の社長に就任した。清明社長はカリスマの後任としてどんな会社をつくっていくのか。聞き手=和田一樹 Photo=山内信也(『経済界』2019年11月号より転載)

 

清明祐子・マネックス証券社長プロフィール

清明祐子氏

せいめい・ゆうこ 2001年三和銀行(現三菱UFJ銀行)入行。06年にMKSパートナーズに参画。09年マネックス・ハンブレクト(現マネックス証券)入社、11年に同社代表取締役社長に就任。13年に転籍しグループ常務執行役やマネックス証券副社長執行役員などを経て19年4月より現職。

 

覚悟を持って決断し目の前の課題に集中する

 

―― 新社長発表時、5大ネット証券(マネックス証券、SBI証券、楽天証券、カブドットコム証券、松井証券)で初の女性社長ということにも注目が集まりました。

清明 考えたこともなかった観点でしたので単純に驚きました。女性というだけでこんなにも話題にしていただけるんだなと(笑)。

 ただ、何事も「初の」ということは道を切り拓くということで、自分がそういっためぐりあわせで光栄だなと感じています。

 現在も兼務していますが、当時はマネックスグループの常務執行役という立場からグループ全体の企画を統括しておりましたので、次年度の体制を含めたグループ全体の戦略についてミーティングを行っている場で自然と社長就任の話が出たんです。

 これまでもグループの中心的なポジションで仕事を任されているという自負はありましたから、きっちりと貢献していかなくてはいけないなと常々思ってはいましたが、まさか社長を打診されるとは思ってもおらず驚きました。

―― 2009年にマネックスグループに入社してから、2年後には子会社の社長、その2年後にはグループの執行役員と、経歴を見ると順風満帆な印象を受けます。

清明 昔からつらい時でも周囲に苦しい雰囲気を見せないようにしてきましたので、社内でも出世街道を進んだ印象を持たれているのかもしれません。

 しかし、33歳で、当時マネックスグループの子会社であったマネックスハンブレクトの社長になったときは、分からないことだらけで苦しかったです。過年度に作った赤字があり、黒字に戻すためには、とにかく案件をこなして稼ぐしかないという状況でした、

 また、数字を作る一方で、会社の組織も構築していかなければなりませんでした。しかし経営はお手本があるわけでもなく、どうすることが正解なのかわからなくて毎日大変だったことを覚えています。もともと寝たら嫌なことは忘れるタイプなんですけどね(笑)。

―― 悩んでいたとのことですが、マネックスハンブレクトの社長になった年から2年連続で黒字化を達成しています。結果を出せた要因は何ですか。

清明 とにかく目の前のことを全力でクリアしていきました。子会社の社長になったものの、長く社長でいようとは全く考えておらず、それが組織にとって最適ならば社長のポジションも譲る覚悟でした。

 あとは決断を下さなければいけない場面で、できる限り情報を収集したあとはあまり時間をかけすぎないようにしていました。結局、何事もすべてを分かった上で判断することはできず、リスクはゼロにならないと思っています。ですからひとまず必要だと思うものを集め、いったん決めてしまう。あとはそこに覚悟を持てるかだけです。

 今回、マネックス証券の社長を受けた時もそうでした。最後は覚悟できるかできないか、それだけなんです。

 

マネックス証券の立ち位置を明確に打ち出す

 

―― これから他社とどのように戦っていきますか。

清明 口座数や手数料で比較されることはあります。全体平均で見て相対的に手数料が高い商品はありますし、口座数も当社より多い企業があることは事実ですから、これは真摯に受け止めています。

 しかし、口座数で追い抜きますとか、すべてにおいて手数料最安値を目指しますという風には思っていません。忘れてはいけないことは、当社には181万の口座があり、口座数も伸び続けているということです。まずわれわれを選んでくれて、お取引をいただいているお客さまを大切にしなくてはいけないと思っています。

―― マネックス証券が選ばれる理由はなんだとお考えですか。

清明 お客さまがわれわれを選んでくれるのは、私たちがお届けする情報やサービスがよりお客さまの役に立っているからだと思っています。セミナーなどもできる限りのリソースを投入し、マネックス証券に相談すれば親身になってくれ、悩みが解決すると思っていただけるような立ち位置を目指してきました。

 ですから、常にお客さまと真摯に向き合う証券会社という立ち位置こそ大事にしたいと思っています。

―― これからどんな会社にしていきますか。

清明 証券会社は「マーケット次第」という言葉を使いがちだと思っています。

 例えば、日本の株式市場の流動性が低いとなれば、それを業績不振と結びつけてマーケットが悪いからねと言い訳ができてしまうんです。当然、市場動向には大変気を配っていますが、それ以外の部分で何か逃げない指標を確立し、経営の軸にしていきたいと思っています。

 それから、マネックス証券は創業から20年がたって、どんな証券会社かというイメージがぼやけてきた部分もあります。そこで「私たちはこういう会社です」というメッセージを改めて打ち出していきたいと考えています。

 そのためには、なにか施策を打つ時には必ずその意図も合わせて明確にしていきたいと思います。

 例えば今年、米国株取引の最低手数料を引き下げました。この理由は、お客さまが安定的な資産形成を行うためには、ドル資産であり成長を続ける米国株も持っている方がよいと考えるからです。目的は収益や口座数を増やすことではなく、新しいお客さまが気軽に米国株取引を始められるようにすそ野を広げることでした。

 このように、一つ一つのアクションの意図を明確にし、取り組みを重ねていった先には、新しいマネックス証券が出来上がるはずです。そして、「悩んだらマネックスに聞いてみよう」、そんな風にお客さまに信頼される証券会社を目指していきたいと思います。

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