経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

森島寛晃・セレッソ大阪社長が目指すクラブ経営とは

森島寛晃・セレッソ大阪社長

前身のヤンマーディーゼルサッカー部を経て1993年に創設されたセレッソ大阪。その25周年にあたる2018年12月に社長に就任した森島寛晃氏は、ヤンマー時代も含めて通算28年間セレッソ一筋、「ミスターセレッソ」の愛称を持つ。今も多くのファンに愛される新社長が目指すクラブ経営とは。聞き手=島本哲平 Photo=藤岡修平(『経済界』2020年1月号より転載)

森島寛晃・セレッソ大阪社長プロフィール

森島寛晃

(もりしま・ひろあき)1972年生まれ。91年、静岡・東海大一高(現東海大静岡翔洋高)からヤンマー(現セレッソ大阪)入り。98年フランス、2002年日韓とワールドカップ2大会出場。08年引退。セレッソ大阪のアンバサダー、チーム統括部を経て、18年12月21日より現職。広島県出身。

ミスターセレッソ・森島寛晃が創るこれからのセレッソ大阪

―― 社長に就任された経緯を教えていただけますか?

森島 2008年に選手を引退した後は、6年間アンバサダーとしてクラブの広報活動に携わりました。その後、16年からチーム統括部という、より現場に近いポジションでチーム作りに関わってきましたが、前任の玉田社長が退任されることになり、18年10月頃にクラブの方から社長就任の打診がありました。

セレッソ大阪の前身のヤンマー時代から通算すると28年間もこのクラブにいるので、声を掛けていただいたのは光栄なことですが、すぐに「やります」とは言えませんでした。

というのも、私には経営の知識がないことに加え、引退した時に監督としてピッチに戻ってくると公言したからです。それでも何度かお話をする中で、「多くの方に愛されるクラブにしたい」とのクラブの想いを形にするため、やれることを精いっぱいやろうと決断しました。

―― 選手からクラブのサポートへと立場が変わり、今度は経営者です。ご自身の中で変わったことはありますか?

森島 試合を見に行っても、ピッチよりもスタンドのサポーターの人数や周りのブース、あるいは試合前の盛り上がりなどが気になるようになりました。あとは街を歩いていても常にいろいろな看板が気になるようになりました。その看板の会社がどんな企業かをグーグルで調べるなど、今までにないグーグルの使い方をしています(笑)。

―― スポンサー企業の看板ですか。

森島 スポンサーとはかぎりません。いつ、どんな会社と縁ができるか分かりませんから。もちろんスポンサー企業についても勉強していますし、そうやって意識しているせいか、街中でスポンサーの名前を見つけただけで身が引き締まります。

―― Jリーグのチームの社長の中で、選手出身者はほとんどいません。元選手だからこその強みはありますか。

森島 チームというのはいろんな個性のある選手たちが集まってできあがります。それをうまく機能させるには、モチベーションを上げていくことが必要です。これは選手だけでなく、スタッフも同様です。

ですから私は社長として、モチベーションの上がる環境づくりを行っていますが、その点において、かつて選手としてチームをまとめてきた経験が生きてくると思います。

いろんなところで改善を進めていますが、単に声を出して指示するだけでなく、行動で示していく。それによってクラブ、チームがひとつにまとまるよう努力しています。

「大阪と言えばセレッソ」と言われるクラブを目指す

―― 社長に就任して間もなく1年です。経営者として一番大切にしていることは何ですか。

森島 社長というポジションに責任を持つということです。それが何かというと、これから先を見据え、「良いものは良い、悪いものは悪い」と見極めをしっかり行い、決断することを心掛けてきました。でもこれがなかなかむずかしい。

他の企業の社長からは「楽しんでやらないといけない」とアドバイスをいただきますが、今はまだ肩に力が入りすぎて楽しめる状況にはなっていません。

―― スポンサー、サポーター、地域などに対してはどんな姿勢で向き合っていますか。

森島 12月に社長に就任、1月からクラブの新体制がスタートしましたが、最初に全スタッフに伝えたことは「常に感謝の気持ちを持つ」ということです。

私たちはサポーターやスポンサーなどいろいろな方の支えがあって活動ができています。選手とスタッフの間でもそうですが、常に誰かに支えられているということを意識して感謝の気持ちを忘れないということをクラブ全体で取り組みたいと思っています。

スポンサーに対してもお願いして看板を出していただくとか、「応援してください」と言うだけではなく、われわれもお返しし、お互いが必要な良い関係を築いていきたいと考えています。そのために企業と接点を持つための営業活動には力を入れています。

サポーターに対しても、選手が応援に対して感謝の気持ちを持ってプレーすることがさらなる応援につながっていきます。

地域に関してもホームタウンである大阪市・堺市との関係強化に積極的に取り組んでいます。地域のお祭りに参加したり、大阪市の全小学生に読書手帳をお配りしたり、新1年生にはランドセルカバー、5年生には林間学校から親ごさまに手紙を書いてもらえるようにかもめーるを寄贈しました。

どの活動も地域やスポンサーの協力があってできることです。それらの活動を通して地域の子どもたちにセレッソ大阪を身近に感じてもらいたいですし、私たちも地域・スポンサー、行政などと連携して子どもたちの育成に貢献したいと考えています。

―― 今後の目標を教えてください。

森島 長居でのホームゲームを毎試合満員にしたいです。そして来ていただいたサポーターの皆さんに感動を持ち帰っていただきたい。そうすることでサポーターが新たなサポーターを呼び、満員の応援はチームのさらなる力になり、それが感動を与えるようなプレーにつながります。スポンサーにとっても、スタジアムを満員にできるチームは価値がありますし、新たに興味を持ってくれる企業も出てくると思います。

大阪には、阪神タイガースのように試合に勝っても負けても常に話題になり愛され続けているチームがあり、スポーツという枠を超えて文化として根付いています。

セレッソも阪神のように、「試合があるから応援せなあかんな」「今日は勝ったな」「あかんかったな」と話題になり、「大阪と言えばセレッソ」と言っていただける、大阪の文化の一つになれるクラブを目指しています。

経済界 電子雑誌版のご購入はこちら!
雑誌の紙面がそのままタブレットやスマートフォンで読める!
電子雑誌版は毎月25日発売です
Amazon Kindleストア
楽天kobo
honto
MAGASTORE
ebookjapan

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界ウェブトップへ戻る