1927年、高等商業学校として創立されて以来、87年の歴史を持つ千葉商科大学。少子化の加速で大学運営は厳しさを増しているが、同大学は大胆な改革を断行、サービス創造学部をはじめとする新学部を次々と設置して、就職率などでも着実に成果を上げている。 (聞き手/本誌編集委員・清水克久)

伝統ある単科大学から脱皮して実学の統合大学へ

島田晴雄

島田晴雄(しまだ・はるお)
1943年生まれ。65年慶応義塾大学経済学部卒業。82年同教授。東京大学先端科学技術研究センター客員教授、富士通総研経済研究所理事長。2007年慶応義塾大学を早期退職、同年千葉商科大学学長に就任。

-- まず、貴校の特徴をお聞かせください。

島田 本学は1927年、巣鴨高等商科学校として誕生しました。創立者の遠藤隆吉先生は、当時の商業道徳が乱れていると考えて、「学術、質実、人倫」の3つの教育を実践しました。ところが、戦争で校舎が焼失するなどの被害を受け、50年に商経学部商学科だけの単科大学として生まれ変わったのです。本学の母体となった巣鴨高等商科学校は、当時、3大高等商科学校の1つに数えられる優秀な学校で、千葉商科大学となって、中堅企業の経営層を多数輩出し、まさに高度経済成長を支えたと言っても過言ではありません。卒業生も沖縄から北海道まで全国に及んでおり、活躍しています。

-- 近年、次々と学部を新設されていますね。

島田 90年代が18歳人口のピークで、その後減少に転じたのですが、多くの大学はそこで改革を行いました。ところが、本学は残念ながらその流れに乗り遅れてしまったのです。また実学重視という点で専門学校との差別化も難しくなってしまった。そこで、慶応義塾大学から加藤?先生を学長に招聘して、大改革に手を付けたのです。加藤先生がまず手懸けたのが、グローバル人材を育成するための政策情報学部の設立でした。それまで商経部内の学科は増やしていましたが、学部の設立はそれが初めてです。その後、私が着任してからサービス創造学部、人間社会学部を設立、来年には国際教養学部を新設します。

ゼミナールの学生たち

島田晴雄学長が主催するゼミナールには海外から100人を超える学生が集まっている

-- 少子化の中での学部新設はリスクもあるのでは。

島田 サービス創造学部を設置したのは、これからはサービス産業の時代だと考えたからです。先進国の中で、日本は産業のサービス化が遅れています。ということは伸びしろが大きいということです。そこに特化した教育を行っていきます。また、欧米のコピーではなく、自らサービスを作りだしていくという狙いで、サービス創造学部という名称にしました。吉田優治学部長は非常に起業家マインドにあふれた人で、独創的な取り組みを行っています。50以上の企業と公式サポーター協定を結んで、各社から講師として前線で活躍されている方を招いています。また、学生をビジネスの現場に送り込むこともしています。企業から学ぶ、学問から学ぶ、プロジェクトから学ぶということができるのです。まさにアクティブラーニングと言えます。この学部の卒業生の就職率は99・3%と全国の大学の中でトップの数字です。

企業とアライアンスを組んで就職率向上へ

千葉商科大学

実学教育で高い評価を得ている千葉商科大学(千葉県市川市)

-- 人間社会学部や国際教養学部設置の狙いは。

島田 東日本大震災の衝撃は記憶に新しいですが、いま、社会は傷つきやすく壊れやすくなっています。行け行けドンドンの時代は終わり、知恵を使って助け合う必要が高まっている。今、高齢化が進んでいますが、所得に対する社会保障と税の負担率は4割に上っています。これが2050年には7割になるという試算もあります。これでは日本社会は成り立ちません。これを知恵と工夫で対応していかないといけない。いわば優しさのプロを育てなければならないのです。社会学や心理学、栄養学などをベースにして、新たなジャンルを創り上げる必要があり、それを担うのが、人間社会学部なのです。初年度はキャンペーン開始が遅れて志願者数がやや伸び悩みましたが、今年は大きく飛躍させます。

 国際教養学部は、他大学がやっていない新しいことに挑戦します。学部長に宮崎緑先生を抜てきして、グローバル人材の育成という視点で、実学重視の教育を進めます。例えば、海外のデパートの売り場や工場で、現地の人と現地の言葉で切った張ったのやり取りができるような人材の育成を目指します。

-- 大学改革の成果は。

島田 加藤先生が着任した頃、本学は残念ながら9200万円の赤字でした。ところが、4年後には7億円の黒字化に成功しています。AO入試の導入などの施策、職員が高校を頻繁に訪問して認知度の向上などを図った効果だと思います。就職の面でも、500社以上の企業とアライアンスを組んで、千葉商科大学の周辺に・内部労働市場・を創り上げました。それで年中、大学にさまざまな企業の人がやって来るようになり、それが就職率向上につながるなど、改革の成果は着実に上がっています。

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