北澤宏一(きたざわ・こういち) 1966年東京大学理学部化学科卒業。68年東京大学工学系大学院工業化学科専攻修士課程修了。72年マサチューセッツ工科大学冶金および材料科学専攻博士課程修了。87年東京大学工学部教授。2007年独立行政法人科学技術振興機構理事長。11年退任。同年福島原発事故独立検証委員会有識者委員会委員長。13年9月より現職。

北澤宏一(きたざわ・こういち)
1966年東京大学理学部化学科卒業。68年東京大学工学系大学院工業化学科専攻修士課程修了。72年マサチューセッツ工科大学冶金および材料科学専攻博士課程修了。87年東京大学工学部教授。2007年独立行政法人科学技術振興機構理事長。11年退任。同年福島原発事故独立検証委員会有識者委員会委員長。13年9月より現職。

武蔵工業大学は2009年、創立80周年を期に東京都市大学と校名変更した。創立時からの「学生の情熱」を大事にする私学として専門的実践教育で定評が高いが、今日では都市をキーワードに6学部を擁する総合大学になった。大学の未来像を北澤宏一学長に聞いた。 (聞き手/本誌編集委員・清水克久)

 

世界有数の大都市・東京のノウハウを世界に

-- 2009年に校名を武蔵工業大学から、現在の東京都市大学に変更されましたね。

北澤 最も重要なことは、大学名ではなく、その大学が何を研究しており、何を学べるかという点です。私は科学技術振興機構の理事長を務め、その後、福島第一原発の事故独立検証委員会有識者委員会委員長を務めました。そして学長となった現在までの間、ずっと考えてきたのは日本の科学技術のことです。今、日本の科学技術は世界でも高い水準にあります。ところが、その技術から産まれるアウトプットを生かし切れていない。科学技術を実践する場は、製造の現場なのですが、その工場が近年では海外に移転してしまっています。日本は、高度経済成長など非常に素晴らしい成長を遂げてきましたが、現在では産業の空洞化という課題も抱えています。本学では、科学技術の研究でいかに日本に貢献できるかを重要なテーマに考えています。

-- 具体的にどのような構想を持っておられますか。

北澤 ここで東京都市大学の校名が生きてくるのです。東京という都市は現在はもとより、300年前の江戸時代から世界一のメガシティーでした。ヨーロッパでは国々が地続きで戦争が絶えなかった上に、疫病なども蔓延していた。ところが江戸は戦乱も無く、世界一の衛生的な都市でした。大都市が持つ、人口過密によるさまざまな課題を当時から解決してきたのが江戸であり、東京なのです。その大都市運営のノウハウを世界に発信していかなければなりません。

 現在、本学は6学部18学科がありますが、その一つひとつに、都市とはどのようなものか、どのように成長していくのか、というノウハウがつまっています。世界人口の65%が都市に住む現代、これまで東京が克服してきた都市の課題を体系化し、世界に発信することこそ、本学の使命だと思っています。

 

世田谷キャンパス

世田谷キャンパス

社会のニーズを探り、社会に貢献する研究を

-- 都市経営も大事ですが、グローバル化、また地方の重視という方向性もありますね。

北澤 地方という視点から言うと、本学の卒業生約9万人が、日本中で活躍しています。まさに製造業をはじめとしたそれぞれの現場を支えているのです。その卒業生たちがさらに都市と地方をつなげる役割も果たしてくれます。地方で育ち、学び、働く人材も必要ですが、地方で育ち、都市で学び、また地方で働く人材も必要です。今、本学の卒業生の校友会支部が海外も含めて70支部あります。この支部と共同でさまざまな取り組みを行っていきたいと思っています。

 グローバル化という意味では、これから多くの学生を世界に送り出すという目標を持っています。留学に特化した教育課程も作っていきたいと考えています。一定期間留学をしても4年で大学を卒業できるように、海外の大学と連携して、単位互換などの制度も整備していきたいと思っています。

-- 産学連携なども積極的に取り組んでいますね。

北澤 産官学交流センターを軸に、さまざまな研究開発の連携、受託研究、共同研究などを行っています。何よりも大学での研究が社会に役立つことが重要です。研究者はまず自分の研究がありき、となりがちですが、まず社会のニーズを知り、それに応じた研究に取り組む必要があります。企業と連携・共同することで、社会から何が求められているかを知ることが研究者にとって重要です。

-- 大学には今、少子化という大きな問題がありますね。

原子力安全工学科の実習風景

原子力安全工学科の実習風景

北澤 少子化によって大学間の競争は激しくなるでしょう。それは危機でもありますが、逆にチャンスでもあります。このチャンスを生かさなければなりません。今、本学はその競争の中でさまざまな課題を克服しようと改革を続けています。今般、その改革のための理念や施策を、中長期的な視点から計画としてまとめ、さらに具体的なアクションプランを策定しました。それがまず何よりも大事なことです。そして、大胆に取り組むことが必要です。そもそも、本学は東急グループとの結び付きが深く、キャンパスも東京と横浜の間、文化資本の豊かな東急沿線にあります。東京と横浜にまたがる地域圏は世界最大の大都市圏と言っていいでしょう。本学はこの東京・横浜圏で東急グループとのつながりという優位点をさらに生かし、積極的な改革に取り組んでいきます。

 

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