「ぼくのレストラン」シリーズなどの経営シミュレーションゲームで若者のハートを掴んだ。その後もヒット作を連発しているが、今後はブラウザゲームからネイティブゲームの開発、運営に注力する。今後の戦略を聞いた。聞き手=本誌編集委員/清水克久

 安徳孝平氏は語る ゲーム開発のノウハウがなく試行錯誤の連続

-- 2009年に起業された経緯をお聞かせください。

安徳 もともとは、私と取締役の公文善之の2人でヤフー向けにオンラインのスケジュール管理のサービスを開発して提供していました。当時はまだiモードのサービスが始まったばかりで、PCと携帯電話の両方で使えるサービスというのはとても珍しく、人気もありました。ただ、いわゆるITバブルが終わりを告げた時期と重なったこともあって、サービスごと、ヤフーさんに買い取られる形になったのです。そこから8年ほど、私も公文もヤフーで働いていました。ただ、個人的には若干不本意な形で終わっていたので、もう一度チャレンジしたいという思いが強く、09年に当社を起ち上げたのです。

-- 当初から、ゲームアプリの開発を行っていたのですか。

安徳 最初はもっとビジネスソリューション系のサービスを考えていました。キーワードとしては、モバイルとソーシャルの融合でした。ところが、この考えを煮詰めていくと、ゲームのほうが適しているのではないかという考えに至って、ゲームの開発を始めたのです。ちょうどその頃は、SNSプラットフォームのオープン化が始まった時で、ミクシィさんなどのソーシャルサービスにゲームを提供し始めたのです。ただ、ゲームの作り方というものが全く分からなかったので、見よう見まねで試行錯誤の繰り返しでした。

-- ゲームがヒットして12年にマザーズ上場、翌13年には東証1部上場を果たしましたね。

安徳 そもそもゲームの作り方を知らなかったので、最初から悪戦苦闘で失敗の連続でした。ユーザーもソーシャルサービスにゲームがあるだけで満足していたのですが、時間がたつにつれ、やはり、より面白いゲーム、完成度が高いゲームを求めるようになりました。そこで、グリーさんの出資を得て、ゲーム制作のノウハウを教えていただいたのです。そこからさらに試行錯誤の連続だったのですが、ようやく楽しんでいただけるゲームを提供できるようになりました。

 現在も継続的にサービスが続いているのは、経営シミュレーションゲームで、レストランを経営する「ぼくのレストラン」シリーズやアパレルショップを経営する「ガルショ☆」などです。いまではカードバトルゲームなどもリリースしていますが、最初は女性ユーザーにターゲットを絞りました。比較的男性ユーザーはより面白そうなゲーム、新しいゲームに移行していくのですが、女性ユーザーは1つのゲームを長く続ける傾向が高いのです。また、単なるバトルゲームだと、自分がある程度強くなると飽きてしまう。しかし、経営シミュレーションゲームは勝ち負けがないので、長く続けてもらえるという点も特徴です。

enish本社にて

enish本社にて

安徳孝平氏の思い 日中韓での展開で、アジア市場を収益基盤へ

-- 最近はブラウザゲームからネイティブアプリにユーザーの人気が移っていますね。

安徳 ブラウザゲームは、まだまだパイは大きいのですが、昨今のソーシャルサービスの状況を見ると将来的には成長の余地が少なくなっていくでしょう。だからどうしてもネイティブアプリに注目せざるを得ません。

 ネイティブゲームのアプリを提供していくとなると、今までのプラットフォーマーでなく、アップルさんやグーグルさんが相手になります。市場が一気に海外まで広がっていくので、ヒット商品を作れば、顧客が増大する可能性が大きいのです。

-- ネイティブアプリに移行するに当たっての課題は。

安徳 ネイティブアプリの開発には、ブラウザゲームと比較して、開発費用は3倍、期間も1年ほどかかってしまいます。また、ヒットするゲームはゲームデザインとアート、テクノロジー、マーケティングのすべてが求められます。昔のように、スキルの高いスター技術者が独力で開発できるものではなく、会社全体の総合力がなければとてもヒット作は生まれないでしょう。そういった意味で、会社の規模や資金力も重要なポイントになるので、昨年12月、東証1部に市場変更した際に調達した資金は、開発部門に投入します。

 現在7本のゲームアプリを制作中です。そのうち5本は、本年中にリリースします。

-- 海外にも拠点をつくったと聞いています。

安徳 まずはサービスの運営部門の拠点を韓国と中国に作りました。近い将来、中国には開発部門も置きたいと考えています。世界のゲーム市場を考えると、中国の潜在成長力は無視できません。いずれは国内と海外での売上比率が半々になれば面白いと思っています。

 

enish(エニッシュ)

安徳孝平(あんとく・こうへい)

1971年生まれ。96年イェルネット取締役。2009年Synphonie(現enish)を設立して代表取締役。11年取締役プロダクト本部長。14年3月、再び代表取締役社長に就任。

 

【新社長登場】の記事一覧はこちら

経済界電子版トップへ戻る

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年12月号
[特集] 沸騰する食ビジネス!!
  • ・食ビジネスが熱い!! 未来型食品が社会課題を解決する
  • ・市場規模70兆円! 食ビジネスが過熱するわけ
  • ・完全バランス栄養食で誰もがラクして健康になれる
  • ・人工光型植物工場で世界の食と農に新しい常識を
  • ・宇宙食ビジネスで勝ちに行く 10年後に5千億円市場創出へ
  • ・“大人の給食”で栄養の基盤をつくる
  • ・人工肉で糖質制限者に無制限のおいしさを
  • ・テクノロジーで高品質なジビエ調達が可能に
  • ・昆虫食ビジネスの時代到来
[Special Interview]

 伊藤秀二(カルビー社長)

 掘り出そうカルビーの未来

[NEWS REPORT]

◆エンジニアへの高額給与で 富士通は生まれ変われるか

◆豊田章男・自工会会長が挑む東京モーターショー100万人

◆消費増税で現金主義は終焉 キャッシュレス時代が到来した

◆加速するeスポーツ市場! インテルが東京で世界大会を開催

[総力特集]

経済界創刊55周年記念 新しい日本のかたち

東京1964からの55年と東京2020以降の日本の姿

ページ上部へ戻る