経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

試練の欧州統合

平石隆司氏(三井物産戦略研究所国際情報部欧米室長)

 〝Brexit〟は回避できるか

 英国でも、EU離脱や移民規制を訴えるUKIP(英国独立党)が得票率27%と、労働党の25%、現与党保守党の24%を上回りトップとなった。英国は15年5月に総選挙を控えると同時に、キャメロン首相が17年にEU離脱の是非を問う国民投票実施を約束しており、UKIPの躍進は〝Brexit〟(英国のEU離脱)を占う上でも注目される。

 ドイツと並んでEU経済を牽引する英国で欧州懐疑派が躍進した背景には、住宅・不動産部門中心に景気が回復する中、景気回復の恩恵が富裕層に偏り、実質賃金の低迷を背景に低・中所得層が十分に回復を実感できていないこと、財政・金融危機後、ユーロ圏諸国が欧州の統合深化を加速させる中で、英国との間で統合の最終的な姿やそこに至るまでのスピードをめぐる対立が先鋭化していること、がある。

 UKIPと支持層の重なる保守党政権は、来年の総選挙をにらんで対EU政策でUKIP寄りの厳しい政策をとらざるを得ない立場に追い込まれている。

 岐路に立つ欧州統合

 欧州議会選挙における欧州懐疑派の躍進は、欧州統合をめぐる、「指導層と一般国民」、「ドイツとフランス」、「英国と大陸諸国」、「南欧と北欧」間に存在する意見の相違を如実にあぶりだした。

 欧州の財政・金融危機に対しては、EUが財政・経済・金融面の統合を進めることで対処し、一時のような世界的金融危機につながるリスクは後退したものの、取り組みはまだ道半ばだ。幾重にも絡み合った意見の相違をうまく収束させられなければ、取り組みが滞る可能性もあり、次の世界経済の下降局面において危機が再発する恐れも残る。欧州統合の程度およびそこへ向かうスピードをめぐる模索は中長期的に続くだろう。

 

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