経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

日本上陸のクロームブック、米国並みの市場開拓は可能か

「C720」

 日本の法人展開には課題が山積

 ただし、日本での市場開拓には疑問の声も挙がっている。

 まず日本では米国ほどにWiFi環境は整っていない。無線のネット環境が整わなければ、使える場所も限られてくる。オフラインでできる作業もあるが、ネットありきの端末だけに、日本のネット環境は普及のマイナス要因となる。

 次に価格も気になる。日本エイサーによると、今回発売するC720の販売価格は4万円前後で、米国での販売価格と比べると若干の割高だ。C720自体は、最新のウインドウズ8をインストールしても使用に耐え得るだけのスペックとなっており、クロームブックとしては若干のオーバースペックの可能性もある。その分、販売価格が上がっているきらいがあり、このため、安いという前提が崩れる。しかもこの価格設定はグーグルの意向だという。

 4万円台となると、安価なウインドウズのノートPCもあり、差別化は難しくなる。価格帯がかぶってくると、PCメーカーとしても自社のノートPCとビジネスを食い合う可能性がある。日本エイサーとしては、ウインドウズPCとクロームブックとで広くラインアップしておくスタンスだというが、どこまで販売に注力するかは微妙だ。

 また、法人向けが中心となるが、成熟したPC市場において、法人向けこそ、既存のPCメーカーもビジネスチャンスを求めている。それだけに競争が激しい。さらに日本のビジネス慣習を考えると、マイクロソフトのオフィスドキュメントの普及シェアが圧倒的で、これが逆風となる。クロームブックもオフィスドキュメントの閲覧・編集・作成は可能としているが、操作性や汎用性はオリジナルのオフィスが優る。そうなると価格面では優位だが、マイクロソフトのタブレット「サーフェス」とも競合してくる。また、クロームブックでの編集の過程で、ドキュメントのフォーマットが狂う可能性もあり、日本の官公庁では使えない。企業も採用を見送る可能性がある。

 「キーボード入力のできるタブレット」という感覚で、一部のマニアが飛びつく可能性もあり、民生用のほうが意外と伸びるのではないかという見方もある。日本エイサーのボブ・セン社長は、民生用の展開について、「準備は整っている」と語っており、グーグル次第と言える。

 クロームブックの機能やコンセプトの利点は理解できるが、日本と米国を比較した場合、利用のためのインフラと商慣習が違い過ぎるため、日本では苦戦を強いられるだろう。ただ商慣習よりはインフラのほうが先に改善が進む可能性がある。オフィスドキュメントの問題は仕方ないにせよ、ネット環境については、通信会社が本腰を入れてくれば、クロームブックを利用しやすい環境が広がる。

 今回、クロームブックの企業からの問い合わせ窓口はソフトバンクテレコムになっており、ソフトバンクがWiFi環境の普及をセットで進めるならば、一気に広がる可能性はある。まずはネット環境の整備をどこまで進められるかだろう。

(文=本誌/村田晋一郎)

 
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