経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

イラクに引き戻されたオバマ大統領の決意

津山恵子のニューヨークレポート

米国人記者の処刑で本格的な武力抗争へ

 ところが、ジャーナリスト処刑のビデオで風向きが変わった。

 ISISは、2001年に米同時多発テロを指揮した国際テロ組織アルカイダよりも凶悪とされる。イラクとシリアで活動していたアルカイダから分派し、13年4月に結成を宣言した。イラクとシリア両国の3分の1という広大な地域を支配し、そこにある油田からの原油販売収入で豊富な資金を得ている。その収入は、米メディアによると1日200万ドルに上るという。米国にとっては、2カ国に火種を抱える状態だ。

 ジャーナリストの処刑を受けて、オバマ政権はISISを早急に封じ込め、「将来は世界的なカリフ(イスラム国家の最高指導者)を樹立する」とする組織の狙いをくじかなくてはならなくなった。オバマ大統領の慎重姿勢は消えた。20日に休暇先から公表した声明では、「ISISの思想は破綻している。21世紀に彼らの居場所はない」と強く非難している。

 26日に退役軍人を前に「鉄槌を下す」としたオバマ大統領の演説をきっかけに、同政権はシリア内での空爆を準備しているとの見方が広がっている。

凶悪組織の壊滅を世論が後押し

 支配地域が2カ国に及んでおり、イラクだけを空爆しても、勢力を削ぐには効果的ではない。約1年前、シリアのアサド政権が化学兵器を使用して市民を殺害したとして空爆を計画した際、世論の反対でオバマ大統領は空爆を見合わせた。しかし今回は、ISISというターゲットがはっきりしており、ジャーナリストの殺害という事件の直後で、見合わせることはないだろう。

 問題は、シリアでは、イラク北部で成果を収めたような限定的な空爆ができるかどうかということだ。イラクには、クルド人部隊やイラク政権などの友軍がいたが、シリアでは皆無だ。内戦状態が長く続いており、米国の情報収集活動も不十分だとされる。

 米CNNなどメディアは、「シリアのISISはどこに勢力を集めているのか」「果たして勢力を削ぐことはできるのか」という報道で埋め尽くされている。

 広大な地域で、勢力拡大の動きが衰えず、しかも豊富な資金を持つという、近年にない強力な過激組織を壊滅させることができる中長期的なプランがオバマ政権に策定できるのか、課題は山積みだ。

 

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