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肖像画を描くには最初の5秒が肝心--小野日佐子氏(肖像画家、京都造形芸術大学芸術学部教授)

小野日佐子氏

 京都造形芸術大学の教授として教鞭をとり、また日本テレビの「世界一受けたい授業」に出演するなど、活躍の場を広げられる肖像画家の小野日佐子さんにお話を伺いました。小野さんはこれまで、ゴルバチョフ元ソ連大統領やジョージ・ブッシュ元米大統領など、世界有数の要人、著名人を描いて来られました。輝かしい経歴のお話や、肖像画家としてのお仕事についてお聞きしました。

小野日佐子氏の半生 人と向き合うために肖像画家の道へ

小野日佐子

小野日佐子(おの・ひさこ)
福岡県生まれ。肖像画家として各国の大統領や俳優ら手掛けた作品は、数百点にのぼる。1997年NY国連本部ギャラリーにて25人の環境に貢献した女性達の肖像画展を開催。2003年環境経営学会理事・事務局次長就任、09年世界芸術家連合より世界著名肖像芸術家賞受賞、中国国連文化総署委員・日本国執行委員長就任。11年より京都造形芸術大学キャラクターデザイン学科長・教授。

佐藤 絵に目覚めたのはいつごろなのですか。

小野 初めて絵を描いたのは2歳の時で、神社の境内にいた鳩を描いていたと父が教えてくれました。まるで象形文字みたいな絵だったそうです(笑)。その後は絵を習い事として続けていましたが、本格的に画家を目指したのは高校生活が後半に差し掛かったころでした。

佐藤 画家の進路を選んだきっかけがあったのでしょうか。

小野 私は思春期の頃、対人関係をうまく築けないことがありました。ただ、絵を媒介にすれば人とかかわるきっかけが作れたのです。だから、画家として絵を描いていく道を選択しました。

佐藤 人とのコミュニケーションが苦手というようには見えませんので意外なお話です。絵をとおせば人と向き合えるということですね。

小野 そのとおりです。直接人と接触できないから絵を描く行為をとおして人と向き合い、その人を感じてきました。

対談の様子佐藤 その後は肖像画家として歩み始める小野さんですが、モデルとなられる方は著名人が多いですね。どのように描いていらっしゃるのですか。

小野 どんな時でも、まずはモデルとなる方を知るところから始めます。私の場合は対面式で描き続けるということはしません。集中力が切れると第一印象で気付いた魅力の記憶が薄れてしまうことがあるからです。とにかく出会った瞬間の5秒が重要で、そのあとはモデルの方と話したり、スケッチをしたりして相手を知っていきます。肖像画の制作は自分のアトリエに戻ってから。会話などを通して発見したモデルの方が輝いた一瞬を理解し、何を描くか明確にしてから筆を取り、制作に没頭します。描く過程を楽しむというより、完成に向けて1つずつ積み上げていくという感じです。

小野日佐子氏が3巨頭と写真を撮った理由

20140923_SansanTalk_04佐藤 小野さんはゴルバチョフ元ソ連大統領やジョージ・ブッシュ元米大統領、サッチャー元英首相と一緒に撮影された写真がありますが、合成写真ではないかと言われることもあるそうですね(笑)。

小野 ええ(笑)。これは1995年に米国で行われた人類の平和と発展を願うフォーラム〝State of the World Forum〟の時の写真です。この3人がそろうことは奇跡だと言われました。

佐藤 この出会いの経緯は。

小野 私のエージェントがゴルバチョフ財団のお手伝いをしていたことがきっかけで3人の肖像画を描くこととなり、フォーラムの際に対面が実現しました。要人を描くのはこの時が初めてでしたから、頭の中が真っ白になりました。

佐藤 これが初めてだったのですね! それは強烈。

小野 ただ、この強烈な経験のお陰で、その後はどなたにお会いしても平静でいられるようになりましたね。

肖像画家 小野日佐子氏が今までで印象に残ったモデル「鉄の女」

小野さんが描いたマーガレット・サッチャー元英首相

小野さんが描いたマーガレット・サッチャー元英首相(1995年)

佐藤 誰もが知る著名人を描いて来られた小野さんですが、今までで印象に残ったモデルの方はいらっしゃいますか。

小野 それぞれがとても個性的で、思い出深いのですが、お会いする前と後でイメージに差があったのはサッチャーさんでしょうか。サッチャーさんは男勝りで他人に厳しい方と言われていましたから、お会いするまではとても緊張しました。

佐藤 鉄の女と呼ばれていましたからね。

小野 はい。でも、お会いするととても雰囲気が柔らかく、気遣いのある、優しい方でした。

佐藤 サッチャーさんとはどのようなお話をされたのですか。

小野 私が緊張していることに気付いてくださったようで、ファッションが素敵ね、きれいな絵描きさんね、などと言ってくださいました。仕上げた作品は女性らしく表現し、喜んでいただけたようです。

 ゴルバチョフさんは1995年、96年と2年連続でお会いし、優しくしていただきました。ライサ夫人とは「夫の出張に同行する機会が多いのですが、スーツケースに入れると服がすぐにしわになるの」と相談を受けたことがあります。イッセイミヤケの服はしわになりにくく、お風呂で洗っても翌日着られますよとお話ししました(笑)。

肖像画家 小野日佐子氏が気づいた特権とは

小野日佐子

佐藤 とても気さくな方なのですね。世界のリーダーとして活躍した彼らの共通点のようなものはありましたか。

小野 今のエピソードにもありますが、皆さん優しく、何事にも動じない余裕がありました。重要な決断を何度も下してきただけあり、瞬発力を備え、自分の意見をしっかりと持っていらっしゃる方ばかりでした。それに、人の話を聞き逃しません。ささいなことでも後々まで覚えていらっしゃるので、しまったと思うこともあります。

佐藤 貴重な体験でしたね。

小野 はい。私はアーティストですから、どなたでも心のドアを開けてフレンドリーに接してくれていると感じています。

佐藤 警戒されないということは特権です。

小野 それが特権であるということに、肖像画家になってしばらくして気が付きました。だから、生きている間はたくさんの方を描きたいと思っています。

佐藤 同時に、大学の学科長として後進の育成指導にも力を入れていらっしゃいますね。

小野 私は彼らをサポートするような気持ちでいます。多くの学生が、自分に自信を持てず、すぐ自分には向いていないと言ってきます。だから好きなことに突き進み、自信を持てるように背中を押してあげたいと思っています。


対談を終えて対談を終えて

プロの肖像画家の小野さんに、僭越ながら似顔絵を描いてプレゼントしました。穴があったら入りたい気持ちでしたが、小野さんは「特徴をよくとらえていて、大好きな絵です」とありがたいお言葉を頂戴しました。さらに小野さんから私を描いてくださった絵をいただき、恐縮しきりでした。お互いに絵への思いを語り合い、幸せな時間を過ごすことができました。

 
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