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刑事捜査も政治次第(!?)黒人少年・射殺事件に見る米国社会の歪み

津山恵子のニューヨークレポート

暴力の連鎖を生む いびつな社会構造

 9月3日夜、米司法省がミズーリ州のある小さな警察に対し、過去の執務について、連邦法や合衆国憲法に違反していないか捜査を始めるという速報が入ってきた。極めて珍しいこのニュースには驚いた。

 捜査対象となるファーガソン警察は、白人警官ダレン・ウィルソンが8月9日、丸腰の黒人少年マイケル・ブラウン(18歳)を射殺した事件で、全米に名が知られた。警官の数54人と小さな警察だ。

 事件をきっかけに、現場周辺では、黒人住民による抗議デモが連日続いた。さらに、警察がデモ隊に催涙弾を使ったのをきっかけに、一部住民が近くの店舗に火炎瓶を投げつけ、強盗にまで発展したため、ジェイ・ニクソン・ミズーリ州知事が非常事態を宣言するまでに至った。

 なぜここまでこじれたのか。ファーガソンは、黒人の住民が全体の67%であるにもかかわらず、警察署の白人警官の割合は83%に上る。こうしたコミュニティで、白人警官が丸腰の黒人少年を射殺したのに対し、警察は、本人の身に危険が及ぶとしてウィルソン警官の名前を1週間も公表しなかった。また、十分な捜査を開始せず、少年に銃弾が6発も撃ち込まれていたことが分かったのは、事件から8日もたってからだ。家族の依頼による司法解剖で明らかになったが、6発のうち2発は頭部に命中していた。

 事件の捜査プロセスが、白人警官に有利とみられてもおかしくない捜査当局の対応に加えて、デモに対する催涙弾で、当局と住民の関係は悪化を続けた。

デモ参加者

「両手を上げたら撃たないで」と訴えるデモ参加者(米国ミズーリ州ファーガソン、PHOTO:AFP=時事)

 そこに「調停役」としてミズーリ州を訪れたのが、オバマ大統領に派遣された黒人のエリック・ホルダー司法長官だ。ホルダー長官は、抗議デモと警官隊の衝突が依然としてくすぶっていた8月21日、ファーガソンを訪れ、コミュニティ・カレッジに集めた地域の学生らと会談し、小さなレストランで地元のリーダーらにも会ったほか、死亡したマイケル・ブラウン少年の家族と対話した。どこも、通常、司法長官が行くような場所ではないが、地元の声を聞くための周到な計画だ。

 「私は司法長官だが、黒人でもある」と、同長官は地元の人々に語り掛けた。若い頃、ニュージャージー州のハイウェイで、スピード違反の疑いがあるという理由で、警察に止められ、さらに車内の捜索を受けたことを、「屈辱的だった」と話した。

 「しかし、その青年は今や司法長官だ。この国では、変化を引き起こすことができる。ただ、変化は待っていては起きない」

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