経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

予断を許さない香港の雨傘革命

変貌するアジア

自由選挙が行われないことへの不満が爆発

 現在、香港では、2017年の行政長官選挙制度をめぐり、「雨傘革命」と呼ばれる大規模なデモが起きている。

 まず、今回のデモが起こった経緯をおさらいしておきたい。今年8月末、中国共産党は、全国人民代表大会で、行政長官候補者は1200人の「指名委員会」(親中派である選挙委員会からの横滑り組織)の過半数の同意が必要であると決定した。この結果、候補者は必然的に「親中派」の2~3名に絞り込まれてしまう。当然、この制度下では、民主派が候補者になることは難しい。たとえ18歳以上の普通選挙の形式を採っても、親中派の候補者の中からしか選択できない制限選挙となってしまう。

 元来、次期行政長官選挙は、1200人の指名委員会中、150人(全体の8分の1)以上の推薦があれば立候補できる、とされていた。だが、中国共産党はこの約束を反故にしたのである。

 この決定に怒った大学生や中高生を中心に、香港の数カ所で大規模なデモを繰り広げられるに至った。彼らが掲げた標語は、「オキュパイ・セントラル」(金融街の中環を占拠せよ)である。デモ隊は香港警察の催涙スプレーや催涙弾を警戒して、雨傘で応戦していることから、雨傘革命と呼ばれている。一部では、警官がデモ隊に暴行したとの情報もあり、事態は深刻化している。

 共産党のメンツが最優先される理由

  この事態を収束させるには、まず、梁振英行政長官が辞任し、次に、民主派候補も出馬できるように選挙制度を元に戻せばよい。それがまっとうな意見のはずだが、中国ではそうならない。一度、全国人民代表大会で決定した事項を覆せば、共産党のメンツが丸つぶれになる。

 そもそも、梁振英氏が行政長官に就任した際の選挙でも、ある問題が取り沙汰されていた。梁氏は香港における「地下中国共産党員」だという噂があり、選挙委員会メンバーに不人気だった。そこで、当時の胡錦濤主席が、女性閣僚だった劉延東国務委員(現副首相)を深センへ派遣。劉氏は現地で選挙委員会メンバーと会い、梁氏に投票するよう根回しを行った。その結果、梁氏は689票を獲得し、ほかの候補者である親中派の唐英年氏(285票)や民主派の何俊仁氏(76票)を破り、行政長官に当選したという経緯がある。そのため、一部の市民の間では、梁氏は「689」と揶揄されている。

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