経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

座りっぱなしの時間が長いと早死にする!? ~積極的に動いて、健康と仕事のレベルをアップしよう!~

老けるな!日常生活のメディカル冒険

坪田一男(つぼた・かずお)慶応義塾大学医学部教授。1955年東京都生まれ。慶応義塾大学医学部卒業後、日米の医師免許取得。米ハーバード大学にて角膜フェローシップ修了。角膜移植、ドライアイ、屈折矯正手術における世界的権威。再生角膜移植のほか、近視・乱視・遠視・老眼などの最先端の治療に取り組む。近年は研究領域を抗加齢医学=アンチエイジング医学に広げ精力的に活動。日本抗加齢医学会理事、日本再生医療学会理事など。著書に『老けるな!』(幻冬舎)、『長寿遺伝子を鍛える』(新潮社)、『ごきげんな人は10年長生きできる ポジティブ心理学入門』(文春新書)ほか多数。

 

人間は座りっぱなしで身体を動かさないと、健康を維持できない!?

 あなたは1日何時間くらい座っているだろう?

 僕たち人間の病気は、「感染性疾患」と「非感染性疾患(Non-communicable Disease=NCD)」の2つに大別できる。世界保健機構(WHO)では、がんや糖尿病、心血管疾患など、生活習慣の改善によって予防可能な疾患をまとめてNCDと位置付けており、その大きな原因として「身体を動かさないこと=運動不足」をあげ、世界的な健康問題だと警告している。

 実際、WHOが2011年に発表したNCDの死者による国別統計によれば、日本の場合、08年の死者全体の約8割がNCDで、これは15歳以上の約65%が運動不足であることが大きな要因のひとつと推測されている。また、座りっぱなしの時間の長さとがんや糖尿病、心臓疾患、高血圧などによる死亡リスクの関係を示す研究報告も次々と登場している。

 僕たちはいったいいつからこんなに動かなくなってしまったのだろう。

 人類が誕生した100万年前は、平均して1日に20㌔㍍は動いていたと推測されている。狩猟民族だった人類は身体を動かして狩りをしているときに、もっとも身体的能力と知能を発揮できるようにできていた。もともと知能は狩りをして生き延びるために育ち、チームワークのために発達したと考えられているが、人間の身体は動かすようにできており、動かすことよって健康も保たれるのだ。

 ところが、人類100万年の歴史の中で変わったことは多い。ひとつは食べ物だ。1万年前に農耕をするようになって食べ物の供給が安定し、現代では飽食、食べ過ぎの時代になっている。もともと遺伝子は〝少ない食べ物でいかに生き延びるか〟という設計から始まっているので、これが第一の変化だ。

 また、100万年前には猛獣や毒草など危険がたくさんあり、慎重で疑り深い性質が生き延びる確率を上げていたと考えられる。ところが、現在では社会扶助のシステムが構築され、昔に比べれば随分安全に暮らせるようになった。そのため、ストレスに対して過剰な反応をしていると、むしろ健康が損なわれる。ごきげんでのんびりした人の方が健康を保てる時代になってきたのだ。そして、活動量が減り、座りっぱなしの時間も長くなった。

座りっぱなしでドライアイのリスクも高まる!

 僕の研究分野でも、ドライアイと座りっぱなしの生活との関係に関する研究結果が出てきた。ドライアイの指標である涙液の安定性は、座っている時間が長い人ほど不安定であり、活動量の低い人ほどドライアイになるリスクが高くなるというものだ。

 ドライアイはコンピューター作業時間と関連することはたくさんの研究から分かっていたが、座っている時間そのものが影響しているということが分かったのは世界で初めての研究成果だ。

 がんや糖尿病、高血圧などたくさんの病気は、座り過ぎを防ぎ、身体を動かすことによって予防・改善できる。ドライアイと座りっぱなしとの関係が分かってきたことは、新しい予防や治療法への提言につながっていくだろう。

 個人的にも、00年からアンチエイジング医学の実践・研究を開始して運動や食事に配慮するようになってから、研究レベルでも健康レベルでも、大きな変化があった。

 特に長年悩まされてきたドライアイが治ったことは、とても大きな驚きだった。これには栄養バランスを考えた腹八分、ごきげんに生きることに加え、身体を積極的に動かすという習慣を手に入れたことが最も大きく関係していると思っている。

 13年前には5㌔㍍走るだけでもぜいぜいして身体がついていかず大変だったが、今では5㌔㍍くらいは楽に走れる。ちょっとやり過ぎかなとも思うが、平均すると1日に5~7㌔㍍は走っていて、月間走行距離は150~200㌔㍍だ。これだけ走ると時間もとるし、時間の使い方を工夫する必要があるのだが、僕の仕事の生産性は上がることはあっても下がることはない。論文数でも、特許の数でも、目の手術件数、本の執筆数、講演回数どれをとっても毎年大きく満足できる結果が出ている。

 これも座り過ぎず、運動をして、体調がベストになって頭も冴え、風邪もひかずに生活できているためだと心から思う。詳しくは、KKベストセラーズからの新刊『1日6時間座っている人は早死にする』にまとめましたので、関心のある方は是非ご一読を!

★今月のテイクホームメッセージ★

 座りっぱなしの生活を改善して、健康と仕事の効率を高めよう!

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