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北朝鮮経済楽観論

変貌するアジア

 昨年末から今年にかけて、米ソニー・ピクチャーズ・エンターテイメント製作した『ザ・インタビュー』(セス・ローゲン、エヴァン・ゴールドバーグ監督)が全米やネット上で大ヒットした。同映画はコメディタッチで、北朝鮮の金正恩第一書記を揶揄する内容となっている。

 そのため、北朝鮮サイバー部隊と思われるハッカー集団が、米ソニー・ピクチャーズを一斉攻撃したので、同社はいったん公開を諦めた。だが、オバマ米大統領の北に対する厳しい非難や米国世論の後押しがあり、米ソニーは映画の公開を決定したのである。

 さて、今年1月、オバマ大統領は、「やがて北朝鮮は崩壊する」と公言した。我が国でも、北朝鮮に対する同様な“ステレオタイプ”の見方がある。
確かに、先代の金正日国防委員長の下、北朝鮮は核やミサイルをちらつかせながら、瀬戸際外交を展開してきた。そして、北は、我が国を含め周囲の国々から、食糧・エネルギー援助を獲得してきた経緯がある。

 金正恩第一書記に代替わりしても、依然、北の経済状況は厳しく、食糧難が続いている。例えば、中朝国境で、北朝鮮兵士が食料や賄賂を受け取るほど、その士気は落ちている。また、多くの脱北者の証言からも、北の経済的困窮に関する情報には枚挙にいとまがない。
これらは、どれも真実だろう。このような議論を聞けば、誰しも北が明日にでも崩壊すると考えても不思議ではない。

「北朝鮮経済楽観論」

 実は、以上と真逆な楽観的議論がある。意外にも、北朝鮮経済は徐々に回復しているという。

 福田恵介・東洋経済副編集長は、金正恩第一書記が「われわれ(朝鮮)式経済管理方法」を採用したと主張する。同副編集長によれば、北は1990年代から2000年代にかけて、深刻だった食糧難もほぼ克服し、少なくとも、平壌には活気が出てきたという。

 昨年、金第一書記の「5・30談話」(福田恵介「スクープ!これが北朝鮮『5.30談話』だ」『東洋経済ONLINE』2015年1月11日)が発表された。その中では、「社会主義企業責任管理制」(工場、企業所、協同農場が・・・実際の経営権を持ち、企業活動を創意的に行い、・・・勤労者が生産と管理において主人としての責任と役割を全うする・・・企業管理方法)が強調されている。これは、1950年代後半、中国共産党による「大躍進」失敗後、劉少奇や鄧小平らが採った「経済調整政策」に似ている。この政策によって、「大躍進」で疲弊した中国経済は一息ついた。

 他方、三村光弘・環日本海経済研究所調査部長は、現在、金第一書記は「核兵器と経済強国」の両輪とする路線を採っていると力説する。三村部長によれば、北朝鮮は、経済成長するための諸施策―石炭・金属工業発展や輸出志向型産業建設―を打ち出している(「第9章 北朝鮮の新政権の経済政策と今後の見通し」『朝鮮半島のシナリオ・プランニング』日本国際問題研究所<2014年>)という。おそらく三村氏は、福田氏の考えに近いと思われる。

北朝鮮の周辺諸国へ援助を求める姿勢とは

 しかしながら、北朝鮮の周辺諸国へ援助を求める姿勢は、今もなお変わっていない。

 周知のように、金第一書記は、オバマ政権や習近平政権とは一線を画している。そこで、昨年、金書記は我が国との間で「拉致問題」を解決しようとするポーズを見せた。日本人拉致被害者や日本人妻、日本統治時代、北で亡くなった方の遺骨等で、日本政府からカネをせしめようとしたふしがある。

 安部政権は、横田めぐみさんを含め、全員の日本人拉致被害者や日本人妻等を返すよう北に要求した。だが、結局、日朝交渉は決裂している。

 そのため、金書記は、今度は、ロシアのプーチン大統領に近づいた。近年、北朝鮮は、ロシアからの借款の大半(110億米ドルのうち100億米ドル)を棒引きしてもらっている。
他方、ロシアは北朝鮮に天然ガスパイプを引き、ロシア産天然ガスを北へ送る意向である。プーチン政権としては、極東への影響力を増大させるチャンスかもしれない。

 ちなみに、金正恩書記は、今年5月にロシアで行われる「戦勝70周年記念」に出席する予定である。同書記の外交デビューとなるだろう。ひょっとすると、当地で、金書記は支持率が20%台まで下落した朴槿恵韓国大統領と会談を行うとも噂されている。

 

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