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朱立倫国民党主席の訪中

変貌するアジア

 昨年11月末、台湾では統一地方選挙が行われた。与党・国民党は6直轄市選挙で大敗(現職の朱立倫・新北市長のみが当選)し、馬英九総統(兼国民党主席)はその責任を取って、党主席を辞任した。年明けの1月、正式に朱立倫が新国民党主席に就任した。

  その朱立倫(外省人と本省人のハーフ)が今年5月初旬、上海で行われた第10回「両岸経済貿易文化フォーラム」(以下、「国共フォーラム」)に出席した。同月4日、朱立倫は、習近平国家主席(兼共産党総書記)と会談している。

  実は、2005年4月末、当時、野党だった連戦国民党主席が訪中し、60年ぶりに胡錦濤国家主席(兼共産党総書記)との国共会談を実現した。その際、国共は将来の「中台統一」を見据え、「国共フォーラム」開催を合意した。

 2009年5月、長沙で開催された「国共フォーラム」に合わせ、呉伯雄国民党主席が訪中し、胡錦濤国家主席(同)と会っている。だが、呉伯雄はあくまで馬英九総統の代理に過ぎなかった。

 

  今回は、6年ぶりの国共首脳会談だった。習朱会談では、「一つの中国」の堅持、「台湾独立」反対、「92年コンセンサス」の追認等が改めて強調された。

 ちなみに、「92年コンセンサス」とは、1992年、香港で行われた国共会談の際、両党が「一中各表」(おのおのが「一つの中国」を定義)を確認したと言われる。ただし、文書は残っていない。李登輝元総統らはこの「コンセンサス」の存在自体を否定している。

 

  日清戦争の結果、台湾が日本に領有されて今年でちょうど120年になる。その間、中国大陸と台湾が一緒に国民党の施政下に入ったのは、わずか4年あまりである。

  1945年8月、日本がアジア・太平洋戦争(「大東亜戦争」)で敗北し、GHQ最高司令官、ダグラス・マッカーサーは蒋介石に(日本からの)台湾接収を命じた。同年10月、国民党は台湾の支配を開始する(ただし、その支配は、単にGHQから委託されたものであり、国民党による “台湾不法占領”だという見解も存在する)。

 

  その後、国民党は「国共内戦」に敗れ、1949年12月、台北へ遷都という形で台湾へ逃げ込んだ。確かに、この約4年間、表面上、中台は中華民国の施政下にあったと言えなくもない(1948年以降、中国大陸では共産党支配地域が拡がり、すでに国民党は大陸での施政さえ危うくなっていた)。

 

  率直に言って、「一つの中国」とは、国共が作り上げたフィクション(虚構)である。台湾海峡両岸には、1949年以来、中華人民共和国と中華民国という2つの政治実体が存在することは誰にでも明白だろう。このフィクションを未だ世界の大半の諸国が認めていること自体が面妖である。

  また、「台湾独立」の本来的意味は、党外(1986年の民進党結党まで、国民党以外の野党人士を指した)が唱えた「中華民国体制からの独立」である。決して「中華人民共和国からの独立」ではない。

 

  そして、2000年、野党・民進党が国民党から政権を奪取した時点で、「中華民国体制からの独立」の意味を完全に失った。台湾住民自らが台湾を支配する構図ができ上がったからである。

  実際、中国共産党は、1949年に大陸で政権を奪取して以来、1日たりとも(澎湖島を含む)台湾本島を実効支配したことがない。したがって、「台湾独立」とは中華人民共和国からの「独立」では決してあり得ない。他国(あるいは他民族)から実効支配されてもいないのに、分離・「独立」するというのは論理矛盾である。

 

 21世紀に入り、2つの国家が「独立」を遂げている。2002年に、東ティモールがインドネシアの支配(国際法的にはポルトガル)から脱して「独立」した。また、2011年、南スーダン(キリスト教徒が多数)がスーダン(大半がアラブ系イスラム教徒)の領土の一部から分離して「独立」している。

 既述の如く、1949年以降、台湾海峡両岸には別の政治実体が並存していることは火を見るより明らかだろう。これを「一つの中国」と呼ぶのは、かなり無理がある。他方、80%以上の台湾住民が両岸の「現状維持」を望み、「中台統一」には否定的である。

 

 習朱会談では、海峡両岸は「運命共同体」という新しいキー・ワードが使用された。けれども、中国は今や経済的苦境は隠せないまでになっている。台湾側も中国にお付き合いして、このまま大陸と一緒に沈んで良いのだろうか。

 来年1月、台湾の総統選挙では、野党・民進党の巻き返しが有力視されている。蔡英文民進党主席が、総統選で勝利する可能性は濃厚だろう。そのためか、依然、朱立倫は総統選出馬を渋っている。

 

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