経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

開催意義不明の日中韓首脳会議

変貌するアジア

慰安婦めぐりせめぎ合う日中韓の首脳

 今年2015年10月28日、日中韓三カ国首脳会談直前、中国と韓国がソウル市内に中韓少女2体の慰安婦像を設置した。明らかに、中韓による安倍晋三首相への牽制だろう。

 同月31日、まず、李克強首相が韓国へ「公式訪問」した(ちなみに、2003年以来、日中韓首脳会談には温家宝首相が連続して参加している)。韓国では朴槿恵大統領によって公式晩餐会が開かれ、盛大に李首相は歓迎された。

 翌11月1日、安倍晋三首相が韓国を「実務訪問」した。李克強首相と違って、安倍首相はほとんど歓迎されなかった。朴大統領が日中への対応の違いを世界にアピールしたかったのだろう。だが、日中韓首脳会議は和やかな雰囲気の中で行われている。

 その日、朴槿恵大統領は、安倍首相と李克強首相を美術館へ招き、夕食会が催された。なぜ、韓国側は美術館で夕食会を開いたのだろうか。面妖である。

 さらに翌2日、ついに懸案の日韓首脳会談が開かれた。李博明政権以来、3年半ぶり、朴槿恵政権になって初めての会談となる。ただし、その後の昼食会、および日韓共同会見はなかった。

 結局、日韓は懸案の「慰安婦問題」について早期解決を目指し交渉を加速させることで一致した。

 けれども、両国の溝は埋まるはずはない。日本側が「問題は解決済み」との立場を崩していないからである。

 さて、なぜ朴槿恵大統領は、今日に至るまで安倍首相に会おうとしなかったのか。

 それは、朴槿恵の出自と関係しよう。父親の朴正熙大統領は、1965年、「日韓基本条約」を締結した人物である。一部の韓国人にしてみれば、“売国奴”とも言えよう。もし、娘の朴槿恵が“親日”的態度を見せれば、たちまち野党やマスコミによって叩かれる恐れがある。そのため、朴大統領は、頑なまでに“反日”的態度に終始してきた。

 そのため韓国外交の選択肢を狭くし、韓国は経済的苦境に陥っている。普段、日本叩きに勤しんでいる韓国メディアも、さすがに日韓の経済関係重視を唱えるようになった。

日中韓首脳会談の成果は?

 今年6月、中国と韓国はFTA(自由貿易協定)を締結した。だが、今後、中韓は日中韓3カ国間でのFTAを結びたいと考えている。同時に、韓国は、TPP(環太平洋パートナーシップ)への参加協力を安倍首相に要請してきた(今年10月5日、TPPが参加国12カ国間でようやく大筋合意に達したばかりである)。

 今回の首脳会談は、日韓がオバマ米大統領の顔を立てるため、“アリバイ的”に会談を開催したにすぎないのではないか。恐らく、水面下では米国から韓国側へ圧力もあったに違いない。

 オバマ政権としては、「慰安婦問題」や「歴史認識問題」等で日韓がいがみあっていたら、朝鮮半島に緩急があった時、北朝鮮・中国に対し、日米韓3国で対処できない。

 そこで、オバマ大統領は、朴大統領が訪米した際、安倍首相との会談を強く勧めた。奇しくも、韓国国内からも、日本との経済関係強化を求める声が上がっていた。そこで、朴大統領は、“仕方なく”安倍首相と会うことにしたのだろう。

 周知のように、北京で第18期中央委員会第5回全体会議(5中全会)が開催されている最中、10月27日早朝、米海軍はイージス艦「ラッセン」で、中国が領海と主張する南シナ海のスビ環礁(暗礁での軍事基地建造は国際海洋法違反)の12カイリ(約22km)「航行の自由」作戦を遂行した。オバマ大統領がようやく重い腰を上げたのである。

 わが国は、まもなく米軍の作戦に支持を表明した。ところが、韓国は中国の顔色をうかがって、すぐには米国への支持を公にしなかった。

 朴槿恵大統領は依然、「経中安米」(経済は中国に頼り、安全保障は米国頼み)路線を突き進んでいる。

 昨2014年、韓国の中国への輸出依存度は、26.1%と非常に高い。韓国の「中国一辺倒」政策はバランスを欠いていた。中国経済が絶好調の時は、それでも良かっただろう。

 しかし、目下、中国経済の低迷は目を覆うほどである。中国高官がいまだ、日本にAIIB(アジアインフラ投資銀行)への参加を再三、要請していることからもうかがえよう。

 今年2月、既に「日韓通貨スワップ」が終了している。その際、韓国側はその継続を望まなかった。けれども、最近になって、朴政権は通貨スワップを日本側に頼み込んで来たのである。安倍政権が青瓦台の依頼をどのように対応するのか注目される。

 今度の日中韓三カ国首脳会談の成果と言えば、これまで開かれなかった日韓首脳会談が開催されたことぐらいかもしれない。

 

筆者の記事一覧はこちら

【国際】の記事一覧はこちら

 
経済界 電子雑誌版のご購入はこちら!
雑誌の紙面がそのままタブレットやスマートフォンで読める!
電子雑誌版は毎月25日発売です
Amazon Kindleストア
楽天kobo
honto
MAGASTORE
ebookjapan
 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界ウェブトップへ戻る