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金属3Dプリンタがプラスチック成形に大革命を――金子雄二(ソディック代表取締役社長)

ソディックには「世の中にないものは自分たちでつくる」という精神がある。昨年販売した「金属3Dプリンタ」はものづくりの現場を変える可能性を秘めている。

ソディックの独自技術を武器に放電加工機で世界的シェアを誇る

金子雄二

株式会社ソディック
代表取締役社長
金子 雄二(かねこ・ゆうじ)

放電加工機では世界トップクラスのシェアを持つソディック。その背景には、ものづくりにこだわった技術開発力がある。同社の中核事業である放電加工機は金属に穴を開ける加工を行うだけの機械だった。これに次々と改良を加えて電極が消耗しない方法を発明したり、金型加工に使える放電加工機などを開発。他にもワイヤー放電加工機の加工液を、従来の水から油に変更し、加工物の腐食・サビを抑えるといった画期的なアイデアで製品開発を続けてきた。

「放電加工機という、もともとあった技術に、当社独自のコア技術を搭載してきました。その成果で飛躍的に性能が向上し、業界では高速、高性能な放電加工機として認知されています」と語るのは金子雄二社長。

自動車業界、家電関連業界、電気電子部品業界での需要が高いが、昨今では特にスマートフォンでの金型需要が高まっているという。製造業において、コストダウンは常に挙げられる課題だが、同社の加工機は質を落としてコストダウンを図るのではなく、機械性能向上による付加価値の追求がなされている。

金子雄二

このような状況の中、同社が昨年販売した「金属3DプリンタOPM250L」(写真参照)が、今各方面から高い注目を集めている。通常、プラスチック製品を成形する金型づくりでは、冷却が重要になってくる。複雑な形状だったり、高精度が求められる加工では、わずかな冷却ムラが品質に影響する。そこで金型そのものを複数の部位に分解して製造することで解決していたが、この手法では金型そのものに高い精度が必要で、かつ手間ひまとコストがかかってしまう。

「ならば1つの部品で金型を作れないかと考えたのです。問題は冷却の部分ですが、OPM250Lで造形加工すれば内部の冷却配管を自由に配置できるので、金型の冷却ムラを解決できます。加えて、金型製造のリードタイムも半分以下にできます」(金子社長)

金子雄二氏の描く未来 “金型IoT”の実現でコスト、時間を低減

そもそも金型製造は手間ひまと高い技術が必要な仕事だ。それが金属3Dプリンタで実現できるとなると、メリットは計り知れない。しかしながら、従来の金属3Dプリンタでは、成型物の密度に問題があった。

「金属3Dプリンタで金型をつくるという考え方は10年以上前からありました。それが今日まで普及しなかったのは、金属密度を高めることが難しく仕上がり品の精度に問題が残ったからです。しかしOPM250Lでは高密度の成形を実現、OPM250Lで使った金型でプラスチックレンズを作れるレベルの精度を実現しています」(同)

金属3Dプリンタで金型を作ることによるメリットはこれまで述べたコスト、時間短縮、手間ひまの削減のほかにも、高品質の製品を均質にどこででも製造できるようになる点にある。従来、金型製造は熟練技術者の職人技に支えられていた部分もあり、特に高品質な金型では職人技が不可欠だった。しかし金属3Dプリンタで構築された生産システムは金型がほぼ一体化されて製造されており製造機械はOPM250Lのみ。つまり高品質な金型のデータを使えば、どこでもそのデータで同じ金型を製造することができるようになり遠隔地から生産を制御する“金型IoT”が実現する。

「市場にないものは自分たちでつくる」という精神が息づいている同社だが、さらなる挑戦も始まっている。シリコンウェハー上にLEDを搭載し、レーザーダイオードを生産する研究開発だ。これはある大学での研究に同社が技術協力しているもの。「シリコンウェハーは安価な半導体で、電子回路では広く使われています。しかし、シリコン上でLEDは光らないとされていました。これが光るようになれば、安価なLEDレーザーが実現します。そうなると例えば、NC装置への電気ノイズの影響を飛躍的に低減するといったことも実現する可能性があり、それだけ製造精度を高めることができるのです」(同)

ソディックの新しい分野への挑戦は業界の常識を大きく変えようとしている。

株式会社ソディック

  • 設立/1976年
  • 資本金/207億7575万円
  • 売上高/630億円(連結、15年3月期)
  • [東京ショールーム]/東京都中央区八重洲2-2-1 住友生命八重洲ビル1F 営業時間9〜17時
  • 会社ホームページ/http://www.sodick.co.jp/

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