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日銀マイナス金利で金融機関の影響警戒高リスク運用を懸念――金融庁

 金融庁が、日銀のマイナス金利導入で地方銀行などの金融機関がリスクの高い運用に手を出したりしないか神経をとがらせている。もともとの超低金利がさらに急低下し運用難に陥っていることから、金融機関へのモニタリングを強化する方針だ。

 マイナス金利決定の翌営業日の2月2日、銀行には預金金利引き下げなどで対応する動きが相次いだ。横浜銀行と八十二銀行は1年以下の定期金利の預金を0.005%下げ年0.020%に、ソニー銀行は普通預金金利を0.020%から0.001%に大幅に引き下げた。

 日銀の決定を受け、長期金利が過去最高を更新したことなどを踏まえた対応だ。麻生太郎財務相は「歴史的にない未経験の領域。不安定で感情的なことも分からなくはない」と述べる。

 銀行はこれまで日銀に預ければ利息を得られたが、新たに預ける分には手数料を取られる仕組みになり、損をしてしまう。収益悪化が懸念され、対策が必要だが、市場金利がさらに下がり、運用で利ざやを確保するのは難しくなっている。ある大手銀行幹部は「銀行は間違いなく運用難になる。対応が経営課題として重要だ」と指摘する。

 中でも大手銀と比べると運用ノウハウに乏しい地銀にとっては厳しい環境だ。国債以外のリスク資産での運用を志向し、外債、不動産投資信託(REIT)、複雑な仕組みの金融商品などへの投資を膨らませれば、多額な損失につながりかねない。麻生財務相は「各金融機関の状況をモニタリングしないといけない」と話す。

 むしろ、金融庁が地銀に期待するのは、逆境だからこそ地元企業への事業支援を通じて、新たな資金需要をつくり出す取り組みだ。地方の人口減少や金利低下を受け、金融庁は数年前から、地銀に対し担保ではなく貸出先の将来性や事業内容を重視して融資を決める「事業性評価」の推進を一貫して求めてきた。

 ところが、金融庁が地方の中堅・中小企業に対し、昨年9月から実施しているヒアリング調査の中間報告では、3割の企業が「メーンバンクと経営上の課題や悩みを全く相談したことがない」との実態が分かり、金融庁幹部を「思ったより深刻」とうならせる。

 企業が金余りで資金需要が乏しい中、金利の下落によって地銀が預金で集めたお金の運用はますます難しくなる。金融庁は地銀が下手なリスク商品に走るのではなく、地元企業の経営課題解決への助言を強化し、新たな資金需要を創出することを促したい考えだ。

 
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