経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

アフリカビジネスに乗り遅れるな

世界で勝つためのイノベーション経営論

日本と南アフリカの相互理解の薄さ

 南アフリカのプレトリア大学ビジネススクール(GIBS=Gordon Institute of Business Science)の中に、日本研究センターがある。

 同センターは、2010年の日本・南アの国交樹立100周年を記念して、トヨタ自動車の製造販売を手掛けてきたブラッドリー家、プレトリア大学、南アに進出する日本企業等が基金を出し合って11年1月に創設された、「日本・南アにおける学術・ビジネスにおける交流のハブとなり、両国の人的ネットワークと相互理解の振興に貢献する」研究機関である。

 11年10月に「日本の強靱性」について講演に行ったのがきっかけで、13年3月にその第2代所長に就任してしまった。というのも、南アにおける日本企業や日本人の存在が、お隣韓国や中国に比べてあまりにも薄いからだった。

 まず、手掛けたのはなるべく多くの日本人を南アに連れて行くこと。また、ビジネススクールのMBA学生を一橋大学で受け入れることだった。

 昨年10月にはMBA学生20人を受け入れ、11月には7人の日本人ビジネスパーソンをビジネス視察に連れて行き、今年の8月には23人の日本人学生とビジネスパーソンの視察を実現できた。10月には再びMBA学生を受け入れる予定である。

 こうした交流を深める中で痛感するのは、両国間に横たわる相互理解の薄さである。

アフリカビジネスでベンチマークすべきマーケットとは?

「南アに行こう」と言うと、多くの日本人は「ジャングルに覆われた後進国」あるいは「高い犯罪率の野蛮な国」を思い浮かべる。

 しかし、南アは名目GDPで世界23位、1人当たりでは74位(7500㌦)で、中国の87位(6076㌦)を超えている。

 また、1652年オランダ東インド会社による入植が始まって以来400年の歴史を誇るケープタウンやヨハネスブルグは近代化した大都市である。

 同国はダイアモンド、金、鉄鉱石、石炭、プラチナ、マンガンなど世界有数の資源国である。もちろん、オランダと英国によるボーア戦争や20世紀後半からの人種隔離政策(アパルトヘイト)など国内に民族的な対立を抱え、同国のポテンシャルに不安を覚える声もある。

 しかし、クリント・イーストウッド監督、モーガン・フリーマン&マット・デイモン主演の「負けざる者たち」を鑑賞された方はご存じだと思うが(観ていない方はぜひ観てほしい)、27年間の投獄生活を経て自由と政権を勝ち取ったマンデラ大統領の不屈の想いは人類史上特筆すべき文化遺産であり、今こそ日本人が全力を挙げて支援すべき偉業である。

 この国の理想を支援しないで、一体どの国の理想を支援できるのだろうか。しかも、このマーケットには巨大な貧困層に加えて、「ブラック・ダイアモンド」と呼ばれる黒人中間層が急速に伸びている。

 まず、アフリカに進出するならば、このマーケットをベンチマークする必要があるのである。

アフリカビジネスで失敗しないためのBOP(ベース・オブ・ピラミッド)市場の基本

喜望峰にて参加者とともに

喜望峰にて参加者とともに

 13年夏、23人の学生・社会人を連れて南アフリカツアーを敢行した。理由はもちろん多くの日本人に南アフリカを知ってもらいたかったからである。

 その旅程で、GIBSの新進気鋭の経営学者タシュミア・イスマル女史にBOP市場(1日2㌦以下で生活をする経済最下層市場)での企業活動の基本を聞くことができた。世界人口で40億人を占めるこの層の重要性を初めに発見したのは、ミシガン大学にいた故プラハラッド教授だった。

 イスマル女史らは『ニューマーケッツ・ニューマインドセッツ』という新著の中で、この巨大な市場進出に当たって多くの先進国市場が失敗している理由は、こうした企業がその「マインドセット」を変えていないことにあると指摘した。この指摘は日本企業にとっても有益なため、そのいくつかを共有しておこう。

①きわめて当たり前のことだが、これから進出しようとするBOP市場とは、地理的・政治的・経済的・社会的にも全く異なるところだということを徹底的に認識すること。

②貧困層だからこそ品質が重要。彼らは何度でも消費できるわけではない。だから、品質が重要なのである。決しておざなりの商品戦略を立ててはいけない。

③貧困層は単にものを買う層ではなく、消費以上の購買体験を求めている。これは先進国でも同じだが、購買層を単に物理的に扱うことは許されない。

④こうしたマインドセットの変化を受け入れることは難しい、だからこそ変化に集中して、その受容を徹底的に管理しきることが重要なのである。

⑤最後に、貧困層が考えるように考え、行動するように行動する。第三者視点の戦略では決して成功を勝ち得ることはできないのである。

 次回では、日本企業の取るべきBOP戦略について詳しく考えてみたい。

 

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