経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

医学の知識を痩身エステに生かす――村山 舞(村山代表取締役)

健康的なダイエットを推奨するエステティックサロン「気エステティック イヴ」を展開する株式会社村山の村山舞社長をゲストにお迎えしました。お母さまの村山静江会長からバトンを引き継ぎ、どのようなポリシーを持って、経営に携わっているかをお聞きしました。

医学博士号を取得した後代表に就任した村山舞氏

佐藤 舞さんは会長であるお母さまのおそばでずっとやってこられましたが、代表に就任されて、気持ちの上で区切りのようなものは感じましたか。

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(むらやま・まい)1977年生まれ、新潟県出身。大学卒業後、英国に留学し、CIDESCO(エステティック国際資格)、CIBTAC(英国のエステティック国家資格)、IIHHT認定国際アロマセラピスト&リフレクソロジストなど8種の資格を取得。2012年昭和大学医学部医学博士号取得後、村山代表取締役就任。

村山 代表になったのは5年前ですが、あまりはっきりと気持ちが変化したというわけではありませんでした。実は私が学位を取ったら代表に就任するという話を会長とずっとしていたのです。日本ではエステ業界の歴史は浅く、最初に始めた方々が、まだ現役で活躍されているケースも多いです。美容を手掛けるにあたっては、あまり年齢が高くなるのはどうかと会長は考えていたので、私が医学博士号を取ったら1つの区切りとして引き継ぐことに決めていました。だから、どちらかと言えば学位を取る方を優先的に考えていましたね。会長がこの仕事を始めたのが35歳の時で、私が代表を引き継いだのも同じ年齢です。

佐藤 エステの会社のトップが医学博士号を取るのは珍しいですよね。

村山 日本ではそもそもエステの資格制度が確立されていなくて、エステティシャンとしてどこまで知識を持たなければいけないのかという目安がないんです。でも、お客さまの体に触れて、いろいろなアドバイスをするからには、素人が適当に行うわけにはいきません。私は大学卒業後に英国に行ったのですが、英国ではエステが国家資格になっていて、その次の段階として国際資格が取れる制度になっていました。

 英国で資格を取って帰国したのですが、現場で仕事をするうちに、痩身の専門家としては、生活習慣や身体の仕組みや栄養などのことをもっと知らなければいけないと感じました。それらの部分をもっとしっかり勉強して、スタッフの教育にも生かしたいと思ったんです。そこで会長の知り合いの方のご紹介で、昭和大学の先生の教室で勉強することになりました。

健康的に痩せるために必要なこと

佐藤 勉強は大変ではなかったですか。

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書き綴った日々の記録。ノートは現在14冊に及んでいる

村山 勉強の中身が薬理学だったんです。薬理作用の分野は、用語1つとっても私にとっては「宇宙語」の世界で、最初は全然分かりませんでした(笑)。初歩から教科書で学んで、授業に出席して付いていく形で、7年間かけて医学博士号を取ることができました。その後も定期的に通って、勉強は続けています。薬理だけではなくて、整形外科や皮膚科や内科など、いろんな先生方に持ち回りでセミナーをやっていただけるのですが、それがすごく楽しいですね。そこで得た豆知識を毎日書いて各店舗にファックスしてスタッフに伝えているのです。

佐藤 健康でないといい仕事はできないですし、そうした豆知識が集まるのはうれしいですね。

村山 痩せたい思いが強いあまり、過度な食事制限をされたりする方もいらっしゃいますが、きちんと3食たべても痩せられる体作りが大切です。最近はやりの糖質制限ダイエットにしても、緩やかに行わないとリバウンドが激しくなりますし、体に負担を掛けず、長く続けられるようにしないといけません。

佐藤 70歳、80歳になったときに自分がどういう健康状態でいられるかが大事だと思います。

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娘の成長を見守る村山静江会長(右)と

村山 私たちはお客さまのことを「生徒さん」と呼んでいますが、最高齢の生徒さんは87歳の方です。高齢の方の中には、最初は階段を1人で上れなかったほどだったのが、10キロ、15キロと痩せていくにつれ、お腹がへこんで、膝の負担も軽くなって、すごく元気になられた方もいます。

痩身専門のエステを活用して体のコントロールを

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佐藤 海外と日本では、エステに対する考え方に違いがあるのですか。

村山 欧州ではエステはもともと化粧品からきていて、ボディーマッサージで血液やリンパの流れを良くして脂肪を落とすという考え方がありません。外国では、痩身は主に栄養士やカウンセラーの仕事なんです。生活習慣病の予防という観点で言えば、お医者さまの分野でもありません。ですから、私たちのような痩身専門のところがもっと活用されて、自分の体を自分でコントロールできるようになってほしいと思います。

佐藤 日本人は「先生」の肩書きに弱いので、医者に言われたことを真面目に守りますが、薬の影響で免疫力が低下すると、歳を取るほど元に戻すのが大変になるという弊害もあります。

村山 病気になってしまうとお薬が必要になりますが、病気になる前にサポートする仕事も、国家資格として認めてもらえたらという思いはあります。私たちは「健康やせ」のスローガンを掲げていますが、活動が少しでもエステティシャンの地位向上につながればいいですね。

ストレスなく痩身が実現できるエステのノウハウを浸透させたい

佐藤 御社のパーティーに出席すると、女性社員の方々が本当にきれいで生き生きとされていて感心します。女性をマネジメントする上で気を付けていることはありますか。

村山 女性のほうが良い意味で目の前のことしか見ていないと思います。男性は長期的な観点から損得を考える傾向があるので、いざとなったら仕事を辞めるという選択肢がない場合が多く、力を100%出さない人も多いのではないでしょうか。長期的な視点は男性が優れているところでもありますが。女性は「今これをやる」と決めたら120%のめり込むところがあって、その瞬発力はすごいと思います。

佐藤 それはあるかもしれませんね。思い込みが激しいぶん、仕事へのロイヤリティーも高い。

村山 どちらかと言えば、「細く長く」というより「太く短く」でしょうか。女性は条件だけでは動きませんし、そういう意味ではお客さまに泣いて感謝されたことによって、仕事が病みつきになる社員もいます。出戻り社員も結構多いんです。当社ではイベントがたくさんあって、燃え尽きて辞めてしまう人もいるのですが、そうした人たちがほかで同じような仕事をしても、泣いて感謝されることはなかなかありません。もう一度やりがいを感じたくなって、戻ってくるスタッフも多くいます。

佐藤 今年で創業36周年を迎えられますが、次の40周年、50周年に向けての抱負をお願いします。

村山 例えば50周年までに何店舗にする、といったことは考えたことはありません。中長期のビジョンありきではなく、人が育って初めて何でもできると思っています。

ですから、今は「日本一結果の出せる痩身教室」にすることを目指しています。痩身なら他社に負けない自信はありますが、お店によっては、結果の出方にまだバラつきがあります。きちんと指導を守るまじめな生徒さんでなくても、できるだけストレスなく痩せさせられるノウハウと言いますか、そうした部分をもっと浸透させたいと考えています。どこの教室に通っても大丈夫と言われるように、スタッフのレベルアップを目標にしています。



20160405SANSAN_P02 対談を終えて

久しぶりにお会いした舞さんは、経営者らしいお顔になられ、ご自身の道をしっかりと歩んでいらっしゃいました。これからもエステ業界に新たな風を吹き込んでください。

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