経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

サイバーセキュリティー問題の専門家である原田泉氏に聞く(上)

サイバーテロ 政府・企業とも対応は待ったなし!

日本が国益を守るためのサイバーセキュリティ対策とは

ここ数年、2つの面でサイバー戦争が本格化した

【はらだ・いずみ】1956年8月、東京都生まれ。慶応義塾大学経済学部および同大大学院経済学研究科博士課程を経て、日本国際貿易促進協会やコスモ証券経済研究所で勤務。その後、91年にNEC総研に転身、NEC経営企画部を経て2000年に現在の国際社会経済研究所(IISE)に。現在は同研究所情報社会研究部長・主幹研究員。「日本危機管理学会」の理事長も務めている。共編著書に『ネットの高い壁』『国民ID』『ネット戦争』『ネット社会の自由と安全保障』『情報セキュリティで企業は守れるか』など多くがある。

【はらだ・いずみ】1956年8月、東京都生まれ。慶応義塾大学経済学部および同大大学院経済学研究科博士課程を経て、日本国際貿易促進協会やコスモ証券経済研究所で勤務。その後、91年にNEC総研に転身、NEC経営企画部を経て2000年に現在の国際社会経済研究所(IISE)に。現在は同研究所情報社会研究部長・主幹研究員。「日本危機管理学会」の理事長も務めている。共編著書に『ネットの高い壁』『国民ID』『ネット戦争』『ネット社会の自由と安全保障』『情報セキュリティで企業は守れるか』など多くがある。

 今回は、NEC(日本電気)系列の民間シンクタンク「国際社会経済研究所(IISE)」の原田泉情報社会研究部長・主幹研究員に登場いただいた。原田氏は、サイバー空間における国際ルール作りの現状などについて語るとともに、そうした中で「サイバー空間は自由で国境がない」という考え方について「幻想だ」と反論した。

--原田さんがサイバーセキュリティー問題を研究し始めたのはどういう経緯からですか。
原田 私は慶応義塾大学経済学部の出身で、いったんはコスモ証券経済研究所に入ったのですが、1991年にNEC総研に転身して以降は、情報社会問題に取り組むようになりました。94年ごろ米国でインターネットの商用化が始まり、それ以降、毎年のように米国に行き、インターネットについて調査を進めました。また97年からは危機管理について研究を始め、NECのグループ企業を集めて「危機管理研究会」を組織し、米国調査なども行いました。この時、「日本危機管理学会」(会長=池田十吾・国士舘大学教授)にも入会しました。

 そうした中でY2K(西暦2000年問題)が起きました。これを乗り切るためにNECグループ全体で事務局をつくり、その対応に当たりました。Y2K問題が終わった後、2000年7月に関本忠弘氏(元NEC社長・会長、故人)が相談役を退任し、現在の国際社会経済研究所を作り、理事長に就任することになりました。この時、私も出向していたNEC経営企画部から、この研究所に移ったという次第です。

-- 中国のシンクタンクとも交流を続けているようですね。

原田 関本氏とのつながりで、IISE創立以来、中国政府系のシンクタンク「中国現代国際関係研究院(CICIR)」とITや情報社会、環境、安全保障問題などを共同で研究してきました。中でもサイバーセキュリティーに関する研究については成果として『ネット社会の自由と安全保障』(05年)、『ネット戦争』(07年)、『ネットの高い壁』(09年)(すべてNTT出版)にまとめました。
 さらに11年からはサイバー攻撃問題を集中的に研究しようということになり、今年2月には東京でシンポジウムを、日本の関係者を集めて両シンクタンク主催で開きました。さらに米国や英国からの参加も求め、来年の2月に再び東京でシンポジウムを開催する予定です。

-- サイバーセキュリティーを研究し始めて13年以上が過ぎたわけですが、現状をどう見ていますか。

原田 この3年間ぐらいで、サイバー攻撃の内容が質的に大きく変わったことに注目しています。その1つは、国家による標的型電子メール攻撃つまりサイバーエスピオナージ、あるいはサイバースパイ活動が顕在化したことです。もう1つは、米国とイスラエルが共同してイランの核施設を攻撃したいわゆる「スタックスネット事件」に代表されるように、実際の施設・設備を壊わす事実上の武力攻撃のようなものが行われるようになったということです。以上のように2つの面でサイバー戦争が本格化したと言えます。同時に日本に対するサイバー攻撃も顕著になりました。

 そうした中、「このままま放ってはおけない」という問題意識が世界的に広がり、2年ほど前から各国で国際会議が開かれ、サイバー空間における国際ルール作りが活発になっているというのが現状ではないでしょうか。

サイバー空間への幻想と日本

-- 11年11月に英国のロンドンで開催された「国際サイバー会議」や、12年12月、ドバイでの「国際電気通信連合(ITU)の国際会議」などを指しているわけですね。

原田 そうです。そうした動きに「乗り遅れないように」と、日本も両会議に参加はしましたが、どうも日本独自の国益を守る立場というのが明確ではありません。サイバー戦争やサイバーエスピオナージへの対応も英米両国と比較した場合、遅れているという印象です。

-- 「日本としての独自の立場がはっきりしていない」とはどういう意味ですか。

原田 サイバー空間に対する基本的な認識に誤りがあるということです。サイバーコミュニティーに属している人たちや、インターネットを世界中に広めた人たちの共通した考えは「サイバー空間は自由で国境がない」というものです。しかし、私は当初から「それは幻想だ」と言ってきました。インターネットは当時の対ソ核戦略の中で米国の国防予算を使って作られ、その後、民間の研究者にも使わせることによって発展したものです。ですから現在でも米軍関係者たちの中には「インターネットは俺たちのものだ。俺たちが好きに使ってなぜ、悪いんだ」といった認識があるぐらいです。

 そうした中で米国国家安全保障局(NSA)による極秘情報収集プログラムである「PRISM」問題が起きました。これに対して欧州各国は、現在でも米国に猛烈に抗議しています。しかし、日本は抗議も何もしていません。日本の国益を守る独自の立場を持ち得ていないからではないでしょうか。

-- その点は次回、さらに詳しくうかがいましょう。

 
経済界 電子雑誌版のご購入はこちら!
雑誌の紙面がそのままタブレットやスマートフォンで読める!
電子雑誌版は毎月25日発売です
Amazon Kindleストア
楽天kobo
honto
MAGASTORE
ebookjapan
 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界ウェブトップへ戻る