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影の薄い戦争

オバマ大統領の英語

(写真:AFP=時事)

(写真:AFP=時事)

 2度もアカデミー監督賞を受賞している台湾人監督アン・リーは、生まれた時には終わっていたが、朝鮮戦争について、こう語っている。

“When I grew up, in Taiwan, the Korean War was seen as a good war, where America protected Asia.”

〈台湾で育つ中、朝鮮戦争は米国がアジアを守った良い戦争だとみなされていました〉

“ It was sort of an extension of World War II. ”

〈これはいわば第2次世界大戦の延長でした〉

“And it was, of course, the peak of the Cold War. ”

〈そしてもちろん冷戦の頂点でもありました〉

“People in Taiwan were generally proAmerican.”

〈台湾人は一般的に親米です〉

“The Korean War made Japan.” 

〈朝鮮戦争は日本を立ち直らせました〉

“And then the Vietnam War made Taiwan. ”

〈ベトナム戦争は台湾を築きました〉

“There is some truth to that.”

〈それはやはり真実です〉

 1961年生まれのオバマは朝鮮戦争の勃発した50年にはまだ生まれていない。38度線を上下して休戦を迎えた53年にもまだ生まれていない。それでも首都ワシントンで開かれた朝鮮戦争休戦60年の記念式典(The 60th anniversary of the Korean war’s end)でオバマは演説し、米軍は世界最強であり続けると述べ、日韓などの同盟国防衛への決意を強調するとともに、挑発的行動を続ける北朝鮮を牽制した。

“Unlike the Second World War, Korea did not galvanize our country.”

〈第2次世界大戦とは違って、朝鮮戦争はわが国を一大奮起させるものではなかったのです〉

 galvanizeというのはビリと感電させて奮起させるような刺激を与えることである。Galvanize public opinionと言えば、世論を喚起する、という意味である。第2次世界大戦で米国民をgalvanizeしたのはほかでもない、われわれ日本人だ。真珠湾攻撃(Attack on Pearl Harbor)で衝撃を与え、米国民を必要以上に奮起させた。と言うのも、わが大本営海軍報道部は、米戦艦5隻撃沈・3隻大破修理不能と大本営発表を行ったものの、実際、沈んだ戦艦8隻のうち6隻は後に引き揚げられ復帰しており、最終的に米軍が失った戦艦はアリゾナ (USS Arizona, BB-39)とオクラホマ(USS Oklahoma, BB-37)の2隻であった。太平洋戦争中この時以外で米戦艦の喪失はない。空母「エンタープライズ(USS Enterprise, CV-6)」「レキシントン(USS Lexington, CV-2) 」は真珠湾外で航空機輸送任務に従事していたため無傷で後に日本空母祥鳳を撃沈している。残る空母「サラトガ(USS Saratoga, CV-3)」「ホーネット(USS Hornet, CV-8) 」「ヨークタウン(USS Yorktown, CV-5) 」「ワスプ(USS Wasp, CV-7) 」「レンジャー (USS Ranger, CV-4)」は西海岸または大西洋に配置されており、日本軍が撃沈できる可能性は皆無であった。つまり、 Attack on Pearl Harborの最大の「功績」は、galvanize America(米国人を奮い立たせた)ということに尽きる。

一方、朝鮮戦争は国民を奮起させなかったばかりではなく、

“These veterans did not return to parades,”

〈退役してきた兵士は歓迎パレードを受けることもありませんでした〉

 とオバマは続けた。

“Unlike Vietnam, Korea did not tear at our country.”

〈ベトナム戦争とは違って、国民を二分する論議もありませんでした〉

“ These veterans did not return to protests.”

〈退役軍人も戦争反対デモに合うこともありませんでした〉

“For many Americans tired of war, there was it seemed a desire to forget, to move on,”

〈米国人の多くは戦争に飽き飽きしており、誰もが忘れ去って次に進みたいと考えておりました〉

“Here today, we can say with confidence, that war was no tie, Korea was a victory,”

〈今、われわれは、きっぱりと言い切ることができます、朝鮮戦争は勝利だった、と〉

“That is a victory and that is your legacy,”

〈この勝利は、あなたたちの残した遺産なのです〉

“Here in America, no war should ever be forgotten, and no veteran should ever be overlooked.”

〈ここ米国の地では、いかなる戦争も忘却されてはなりませんし、どのような戦争に赴かれた退役軍人の皆さんも見過ごされてはならないのです〉

[今号の英語]vibrant
 Vibrantとは、活気ある、という意味だ。
“When 50 million South Koreans live in freedom — a vibrant democracy, one of the world’s most dynamic economies, in stark contrast to the repression and poverty of the North — that’s a victory; that’s your legacy,”
〈活気ある民主主義の中で最もダイナミックな経済と自由を5千万人の韓国人が享受している一方で、自由の抑圧と貧困に喘ぐ北朝鮮、このあからさまな対比こそが勝利であり、皆さんの残された遺産なのです〉
 鮮やかで、活力ある、それが今の韓国を形容するオバマの言葉だ。

 
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