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「日本のIRは日本企業が運営してこそ国益に適う」里見 治(セガサミーホールディングス会長兼社長)

日本はIRの運営ノウハウがない。そのためIRができても外資に独占される懸念があった。しかしここにきて、日本企業による海外のIRが誕生し始めた。ここでの経験を日本にフィードバックするためだ。その1社がセガサミーホールディングスだ。

里見 治・セガサミーホールディングス会長兼社長プロフィール

里見 治

里見 治(さとみ・はじめ)1942年生まれ。青山学院大学法学部中退。在学中の64年にゲーム販売会社設立。その後、父親の経営する食品メーカー内にアミューズメント部門をつくり80年サミー工業社長。2003年セガを買収、04年持ち株会社セガサミーホールディングスを設立、会長兼社長に就任。17年4月に社長を退き会長職に専念する。

韓国、仁川空港そばに誕生した日系IR

4月20日、韓国の仁川空港のすぐそばに、韓国初のIR「パラダイスシティ」がオープンする。運営するのは、韓国で複数のカジノを所有するパラダイス社と、日本のセガサミーホールディングスの合弁会社(出資率はパラダイス社55%、セガサミー45%)である。

東京から仁川へのフライトは2時間半。大阪からなら1時間50分、福岡なら1時間25分で到着する。パラダイスシティは仁川空港からモノレールに乗車すれば3分。徒歩でも約10分という至近距離にある。つまり日本から一番近いカジノということになる。もちろん中国北部からのアクセスもいい。

ここに711室の5つ星ホテルやMICE施設、そしてカジノからなるIRが誕生する。さらに来年には商業・文化施設、デザイナーズホテルやスパなどもオープンすることでさらに魅力は増す。

セガサミーはかねてからIR事業を成長事業として位置付けており、パラダイスシティはその第一弾となる。同社ではここでIR運営のノウハウを積んだうえで、今後日本でもIR運営に乗り出す考えだ。

そこで、セガサミーホールディングスの里見治会長兼社長に話を聞いた。

―― 韓国で建設を進めている「パラダイスシティ」が4月20日にオープンします。

里見 何としても成功させなければなりません。今は成功への期待と、ごく一部の不安があります。パラダイスシティは、仁川空港に隣接しており、立地的に十分恵まれています。また、合弁相手で、ウォーカーヒルなどのカジノで実績のあるパラダイス社のチョン・ピルリップ社長とは15~16年前からの付き合いで気心も知れています。その意味でパートナーにも恵まれましたから、このプロジェクトは成功できると信じています。

―― ごく一部の不安とは、どんなところですか。

里見 パラダイスシティは投資額1千億円を超えるプロジェクトです。この投資に見合ったリターンをきちんと得ることができるのか、ということです。とはいえ既にわれわれは、近くのホテル内のカジノで実績を積み、利益を上げています。

今度のカジノはその5倍の規模となり、VIPも呼べるものになる。しかも韓国には17カ所のカジノがありますが、パラダイスシティは初めてのIRです。4月にオープンするのはホテル、コンベンション、カジノですが、来年には商業施設や文化施設も完成します。さらに仁川空港は現在、拡大工事を行っており、完成すると年間7千万人が利用するようになる。多くの人が集まる条件は整っています。

協業でも主導権はセガサミーが取る

―― セガサミーはかねてからIR事業を成長分野として位置付けています。パラダイスシティで経験を積んで、これを国内のIRに結び付けるというわけですね。

里見 そのとおりです。現在、パラダイスシティには35人の社員を送り込んでいますが、今後も随時、増やしていく予定です。さらにローテーションすることで、150~200人にIRのオペレーションを経験してもらおうと思っています。

カジノ、ホテル、バックヤード、管理部門など、IRに関するすべてのノウハウを学んでもらいます。

―― 日本でもIR推進法が成立し、早ければ5年後にもIRが誕生する見通しとなりました。日本のIRは大都市圏と地方都市の2種類に分かれることになりそうですが、セガサミーが運営するとしたら、どちらのタイプですか。

里見 やはり大都市圏のIRです。より多くの人が集まるところのほうが経済合理性の観点からも有望です。

―― 大都市圏のIRは、ラスベガスやマカオで実績のある外資も狙っています。

里見 日本のIRが、外資に独占されるというのは国益にもかないません。日本企業がきちんと運営していく必要があります。外資と協業ということもあるでしょうが、その場合でも日本企業が主体となって運営されるべきだと思います。

われわれは、日本企業の中ではIRのノウハウをどこよりも持っていると自負しています。しかもパラダイスシティがオープンすることで、さらに蓄積が増していきます。その強みを訴えて、日本のIRにも参加したいと考えています。

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