経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

ファッション知識はどう使えばいいのか

「仕事ではファッションが大事」と言えば、大事なのは中身だと反論されるかもしれない。だが、「仕事では印象(インプレッション)が大事」と言い換えれば、おそらく異論は少ないだろう。「ファッションとは、その人の内面、在り方を表すもの」と考えれば、そのプライオリティは高まるはずだ。本シリーズでは、20年間で2万人以上のファッションをコーディネートしてきた、ファッションスタイリストジャパン(FSJ)の西岡慎也氏が、ファッションとの向き合い方、具体的なテクニックなどを、ビジネスパーソンに向けて伝授する。

ダメな店員がやりがちなこと

 今回は主旨を少し変えて、消費者側でなく服を売る側、つまりわれわれのような仕事をしている人間が気を付けるべきポイントについてお話しします。読者の皆様が服を購入する際にも、参考になるかと思います。

 ファッションに自信を持ち、セルフイメージを高めるためには、「まず知ることが重要」だとこれまで述べてきました。ただ、知ることは大切ですが、知識をむやみにひけらかしてはいけません。

 相手が「知りたい」と思ったとき、尋ねられたときに教えてあげれば良いのです。服に関する知識は「どこに行っても大丈夫」と自信を持つために必要なのであって、他人に振りかざすためのものではありません。

 あなたの周りにも、聞いてもいない知識を披露して、面倒臭がられている人はいませんか? 実は、アパレルの店員さんに、このタイプが非常に多いのです。「この服はコレコレこんな特徴があって、こんな歴史があって….」などと、知りたくもない知識を押し付けてくる店員からは離れたいと思いますよね。

 例えば、お客様がその服に非常に興味を持っていそうなとき、タイミングを見計らって、「実はこの服にはこんな歴史があって….」と切り出せば、素直に受け入れてくれるでしょう。知識の裏付けを与えることで、それが付加価値となり、購買意欲を高めることができるのです。

押し付けるのではなく選ばせる

 パーソナルスペース、つまり相手との物理的な距離も重要な要素です。

 アパレルの店員さんでも、お客様の背後から声をかける人は非常に多くいます。しかし、これでは驚かれて警戒心を抱かれるばかりです。

 最初に話しかけるときは、必ず相手の正面に入って、近づきすぎない距離を保つことです。距離で言えば、1メートルより1歩程度下がる感じでしょうか。これだけ距離があれば、相手に安心感を持っていただけると思います。初対面の相手には、少し意識して距離を置いてみてください。

 さらに「今日はいい天気ですね」といった、誰でもできるような話題を振ってはいけません。では、何を話せばよいのか。コツは自己開示です。

 たとえば、初対面のときに、「僕たちは販売員なんですが、特にノルマなどありませんから、今日は楽しんでいってください」と言われれば、お客様も安心するでしょう。場合によっては、他のお店に行くことをお勧めするのもアリです。大事なのは本心を伝えること、そして店員としてではなく、本当の自分を見てもらうことです。

 その際も、いきなりすべてを自己開示するのではなく、相手との距離感に気を付けながら、少しずつ近づくことが大事です。

 友人同士でファッションのアドバイスをするときも、店員とお客様の関係でも、相手が知りたくもない知識を押し付けて失敗するケースは多々あります。

 ポイントは、「押し付けるのではなく選ばせる」こと。他人が楽しめる何かを提供できる人は強いのです。

 西岡慎也のワンポイントアドバイス

西岡慎也 そろそろ暑い日が増えてきましたが、ジャケットを脱いだ時などに体の中心で存在感を放つのがベルト。ベルトの大切なポイントは「長さ」です。長すぎるとだらしなく見えますし、短すぎると間の抜けた印象になります。理想的なのは、ベルトの穴の数に関わらず、真ん中の穴で締めることです。こうすれば収まりが良く、スマートな印象を与えられ、機能的にもサイズの増減に対応しやすくなります。体型が変わって穴の位置が変わった時、またはベルトの穴付近の痛みが激しくなった時が、買い替えのタイミングとなります。

 (にしおか・しんや)1979年生まれ。茨城県土浦市出身。21歳で米輸入会社ワイルドウエストジャパンに就職し、約4千人のファンを獲得。2001年、セレクトショップ「WITH PREASURE」を独立開業。従来のアパレルの販売方法ではなく、コンサルティングを中心としたコーディネートの手法を確立する。10年にファッションスタイリストジャパンを設立し、多くの著名人、エグゼクティブの顧客を獲得し、現在に至る。

ファッションスタイリストジャパンHP

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