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銀行カードローンの融資実態把握のため立ち入り検査を決定―金融庁

貸出残高が増える銀行カードローン

金融庁は、過剰な貸し付けが社会問題となっている銀行の個人向けカードローンについて、融資実態を把握するため、今月から立ち入り検査をすることを決めた。

全国銀行協会は自主規制に乗り出しているものの、貸出残高はむしろ増えている。これまで金融庁は聞き取り調査を中心に行ってきたが、一刻も早く事態を改善すべく、立ち入り検査に踏み切ることにした。

検査では異例といえる事前の実施の公表も行い、“本気”で銀行を追及する構えだ。

「金融庁として、銀行カードローンの業務運営の適正化をスピード感を持って推進したい。このため、カードローン業務に関わる検査を実施する」

麻生太郎金融担当相は9月1日の閣議後の記者会見で、銀行への立ち入り検査の実施を表明。実施を事前に公表するという異例の対応に出た裏には、危機感の高まりがある。

日銀のマイナス金利政策の影響で利ざやが縮小する中、銀行は利益を得やすいカードローン事業に注力するようになった。銀行は貸金業者と異なり、年収の3分の1超を融資できないという上限を設けた総量規制の適用外で、貸出残高は急増。

ただ、日本弁護士連合会などが利用者への行き過ぎた貸し出しが横行していると指摘、多重債務者を生む温床となりかねないとして社会問題化した。

銀行にも総量規制を適用すべきの声

全銀協は3月に自主規制策をまとめ、各行は融資上限額の引き下げや、広告の自粛などに乗り出した。だが、それにもかかわらず銀行カードローンは拡大を続け、今年6月末時点の貸出残高は約5兆7千億円と、19年ぶりの高水準を記録した。

これまで金融庁の対応は、銀行への聞き取りが中心だった。しかし改善がみられない事態を重く見て、立ち入り検査に切り替えることを決めた。

金融庁幹部は「多重債務の発生防止、利用者保護の観点を、銀行の業務運営の中に速やかに浸透・徹底させていく」と力を込める。

立ち入り検査は、カードローンの貸出残高が多い銀行などを対象に、過剰な貸し付けを防ぐ融資審査体制があるかや、融資後も定期的に利用者の状況を把握しているかを調査。配慮に欠けた広告宣伝を行っていないかなども調べる。

銀行にも総量規制を適用すべきだという声もあり、「詰まっている段階ではない」(麻生氏)が、検査の結果次第では導入に向けた動きが出てくる可能性もある。

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