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アプリに流れるシリコンバレー パソコンとウェブがなくなる

新生オバマのアメリカは今 津山恵子

フェイスブックの大型買収が新潮流を加速させる

 今から3年前の2010年8月、「ウェブは死んだ」という特集記事をハイテクニュース専門誌ワイヤードで読んでショックを受けたが、最近この流れを加速させる出来事が続いている。

 ソーシャルメディア最大手フェイスブックは2月19日、チャットアプリ「ワッツアップ(WhatsApp)」を最大約190億㌦で買収すると発表した。12年に写真フィルタリングアプリ「インスタグラム(Instagram)」を10億㌦で買収した時にも驚かされたが、今回の買収額はその19倍にもなる。

 ブルームバーグがまとめた企業の合併・買収(M&A)データによれば、今回の買収は01年の米タイム・ワーナーとAOLによる1240億㌦規模の合併以来、最大のインターネット関連M&Aになるという。

 しかも、慎重なことで有名なフェイスブック最高経営責任者(CEO)マーク・ザッカーバーグ氏がこの大型買収に動いたことで、ますますこうしたアプリへの関心や投資が高まる傾向を助長する可能性が高い。

 ブルームバーグによると、ザッカーバーグ氏は12年、ワッツアップのジャン・コウムCEOをコーヒーに誘い、2年越しで友情を育んだ。コウム氏が今年のバレンタインデーにザッカーバーグ夫妻へチョコレートを届けたのをきっかけに、急速に買収話が進展したという。

 これに先立ち、フェイスブックは「ペーパー(Paper)」という画期的なメディアアプリをiPhone向けに公開した。ペーパーは、ソーシャルメディアであるフェイスブックと、ありとあらゆる報道機関やブログからのニュースを一覧することができるアプリ。このため、フェイスブックのオリジナルアプリや、報道機関のアプリをひとつずつ開く必要がなくなる。

 フェイスブックはこれを、会社設立10周年の目玉として公開した。

 奇しくも、楽天も、メッセンジャーアプリ「バイバー(Viber)」を提供するバイバー・メディア(本社・キプロス)を、約9億㌦で買収すると発表した。日本ではメッセンジャーアプリとしてはLINEが人気だが、バイバーは世界に約3億人の利用者がおり、ワッツアップと並ぶ大手メッセンジャーアプリだ。

パソコンの出荷台数は過去最大の落ち込み

 冒頭に紹介した「ウェブは死んだ」には、こう書かれている。筆者は、「ロングテール」というインターネットビジネスの特徴を名付けたワイヤードの前編集長クリス・アンダーソン氏だ。 「過去数年間にわたって起こっているデジタル世界での最も重要なシフトは、広くオープンなウェブから、半分閉じられたプラットフォーム(アプリ)への移行だ。後者もインターネットを使うが、表示にブラウザは使わないもので、主に『iPhone』の興隆によって推進されている。(中略)企業にとってはこうしたプラットフォームで収益を上げることが容易だという事実によって、この流れはさらに強固になる」

 確かに、スマートフォンやタブレットなどモバイル端末の発達で、朝起きてから、メールやフェイスブックのチェック、地図や時刻表の確認や、ビデオの視聴まで、スマホなどに頼り、パソコンは使われなくなってきた。

 実際に13年のパソコンの出荷台数は、前年比で10%程度減少している。過去最大の急激な落ち込みだ。この分、ブラウザによるウェブの利用が何%か減少しているのは間違いない。ワイヤードの10年の記事はこれを確実に予言していた。

 こうした傾向を、ハードウエアメーカーも敏感に先取りしている。韓国のサムスン電子やLG電子は、スマートフォンやタブレット端末の新製品開発や低価格化に躍起だ。

CESで展示されていたアプリを表示したスマートテレビ(撮影:津山恵子)

 今年1月、ラスベガスで開催されたコンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)では、インターネットに接続するスマートテレビにOSを搭載したものが紹介された。

 パナソニックは、従来型スマートフォン向けに開発された「Firefox OS」を搭載すると発表。同時にLGは、過去の買収で獲得していた携帯端末用の「WebOS」を、インターネットに接続するスマートテレビ新製品の6割に搭載すると発表した。テレビをモバイルコンピュータに近づけ、アプリを利用できるようにするためだ。

 インターネット接続したテレビで、放送番組だけでなく、オンライン上にある映画やビデオ、またブラウザまでテレビ上に表示させようという狙いだ。 「ウェブからアプリへ」という重大な動きは、すべてアップルのiPhoneから起きた。同製品の発売は07年だったが、こんなにもインターネットの世の中を変化させることになるとは、誰が予想していただろうか。

 

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