経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

転ばぬ先の相続・事業承継対策

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相続や事業承継を円滑に進めるには早めの対策が不可欠。しかし、「自分にはまだ関係ない」とばかりに対策が後手に回ってしまうことで、後悔するケースは珍しくない。とりわけ企業オーナーにとっては対策の巧拙が会社の命運を左右するだけに、失敗は許されない問題だ。そこで、相続や事業承継を成功させる秘訣を紹介する。(経済界企画部)

「事業承継の一番の目的は会社を永続させていくこと 100年企業戦略の実践」―ボルテックス

中小企業にとって、事業承継問題を適切に解決することが大きな課題になっている。ボルテックスは企業の円滑な承継を支援するために、都心の中規模オフィスビルをフロアで販売する独自のソリューション「区分所有オフィス(R)」を経営者に提案。オフィス賃貸事業を第二の柱にして企業の財務状況を強化し、事業継続性を高めるサポートを行っている。天崎日出雄取締役に“あるべき事業承継の形”について聞いた。

天崎日出雄 ボルテックス取締役

天崎日出雄 ボルテックス取締役 100年企業戦略研究所所長

事業継続性を高める「貸事務所業」

全国には400万社近くもの中小企業が存在している。事業不振を要因とする企業倒産が相次ぐ一方で、約3万社の企業が業歴100年を超えている。百年企業の中には「貸事務所業」が業種別の上位に位置し、事業継続性を向上させているケースがあることに着目したのが不動産業界で存在感を着実に高めるボルテックスだ。

天崎日出雄取締役は「東京の老舗企業では本社や工場のあった土地にオフィスビルを建て、賃貸事業を展開する事例が増えています。オフィス賃貸で本業と同等レベルの収益を稼ぎ出す企業も出てきており、承継を成功させて事業継続性を高めるためにも、都心の優良不動産を保有することは大変有効です」と説明している。

さらに、事業承継を成功させるためには3つのポイントがあるという。まず、最も重要なのが「事業の承継」。相続・事業承継対策と言うと節税対策を含むテクニック論が先行しがちだが、「まずは事業の方向性を定め、会社をいかに長く存続させるかを考えること」が不可欠だ。既存事業をそのまま引き継がせるのか、事業継続性を高めるために新規ビジネスを育てた上で承継させるのか、企業オーナーにとって悩みは尽きない。

「新たな事業には時間や投資コストが大きくかかる上、“千に3つ”と言われるように高いリスクが生じます。失敗を恐れて二の足を踏む経営者が少なくありません」

そこで同社は都心の商業地のオフィスビルをフロアごとに分譲して企業オーナーに提案する独自のソリューション「区分所有オフィス」を展開している。経営リスクを軽減しながら、本業の好不調に左右されない安定した賃料収入を確保することで、企業は財務基盤を強化することができる。

新規事業で赤字を解消するには数年以上を要するケースも少なくないが、「区分所有オフィス」では、購入時点でテナントがすでに入居しているため、すぐに家賃収入を得ることが可能だ。

「当社が取り扱う物件の空室率は現在1%程度にとどまっています。都心にあるため、将来にわたって高稼働を期待できるでしょう。地方企業のオーナーにとっては“東京一極集中”の活力を自社に取り込むことで経営を安定させ、次世代に安心してバトンを渡すことができます」

事業、経営権、財産の3点が事業承継の重要なポイント

区分所有オフィス

「区分所有オフィス」とは

事業の方向を定めた上で、2つ目に欠かせないのが「経営権の承継」だ。後継者へ株式を集中させる際には、株価を前もって引き下げておく必要がある。リースや保険商品を通じて利益を圧縮する手法が一般的だが、「区分所有オフィス」では企業の財務状況を損ねることなく、株価の引き下げと企業価値の向上を両立させる。

3つ目が「財産の承継」で、個人財産の相続を指す。

「相続と事業承継は密接不可分で、どちらか一方だけに対応すればいい訳ではありません。相続でトラブルになりやすい財産の分割時に必要な要点をしっかり押さえることが重要です」と天崎取締役は強調する。

複数の相続人がいて不動産が1つしかない場合、特に“争族”が起こりやすい。その点「区分所有オフィス」を複数保有しておけば、子供たちへフロアごとに分けて円満に分割ができる。

このように優良な不動産を活用して事業、経営権、財産という3つの対策を打つと同時に、本業を支える事業の柱を持つことで長期的な視点から事業継続性と企業価値を高めていくことが、本質的な事業承継のあり方だといえる。

天崎取締役は「当社は『区分所有オフィス』というビジネスモデルのパイオニアとして、これまで市場を開拓してきました。1社でも多く100年続く企業をつくるお手伝いをしたいという志。それが当社の提案する『100年企業戦略』であり、今後も信念を持って多くの企業に貢献して参ります」と熱く語っている。

ボルテックス
設立:1999年4月
所在地:東京都千代田区
資本金:1億4084万8000円
売上高:566億7800万円(連結)(2018年3月期)
従業員数:373人(2018年4月1日現在)
ホームページ:https://www.vortex-net.com/

※「区分所有オフィス」は、株式会社ボルテックスの登録商標です。

「人材、物件、ファイナンス力を武器に相続・事業承継対策をサポート」―センチュリオン

センチュリオンは創業以後、一棟収益マンション・ビルの取扱高を着々と伸ばしている。2015年の相続税法改正以降は適切な対策に悩む顧客のニーズに対応してきた。資産運用や節税のサポートはもちろん、弁護士法人との業務提携による法律相談サービス、ウェブを活用した資産形成マッチングなど、顧客の課題をワンストップで解決している。西川将史社長は「ユーザーファーストのサービス力と独自に仕入れた優良物件でお客さまのお役に立ちたい」と意気込んでいる。

西川 将史 センチュリオン社長

西川 将史 センチュリオン社長

弁護士法人との業務提携で法務サービスを提供

少子高齢化が加速する昨今。日本の公的年金制度は現役世代の人口が減少する一方で年金生活者が増加しており、現行の給付水準を維持するのが厳しくなっている。現役世代へのしわ寄せを回避するため、相続税を含めた高齢者への負担増は必至だ。2018年にも改正相続税法が施行され、今後も増税や課税対象者の拡大は続くとみられる。

こういった状況下で収益不動産の提案を通じて、相続対策をサポートしているのがセンチュリオンだ。同社はユーザーファーストに徹した営業姿勢が評価され、直近の数年間で一棟マンションやビルの取引実績は300棟以上に達した。15年の同法改正以降、同社には相続対策に関する相談が数多く寄せられている。

西川将史社長は「相続というと自分には無関係と思われる方も多いですが、他人事とは思わず有効な対策を講じて、問題が起こるのを未然に防いでいただきたいと思います。どうすれば相続税を圧縮でき、次の世代に資産を残せるのか。我々がお客さまと一緒になって、最適な解決策を考えていきます。相続を円滑に進める方法として遺言書の早期作成があるように、相続にとって法律への最適な対処は欠かせません。今後は法律面を含めて、トータルサポートを行います」と説明している。

同社は弁護士法人日本橋さくら法律事務所(本部・東京都中央区、上野晃代表弁護士)と業務提携を締結し、相続対策に向けた法務サービスの提供を開始した。

まずはセンチュリオンの社員が顧客にヒアリングを行い、日本橋さくら法律事務所のスタッフが法律、税務の両面から相談内容に応じた助言を行う。

その結果を元に両社が連名で遺言書を作成、保管する。地主や家主が対象の場合、同社が遺言執行までに保有物件の調査や評価を済ませておくため、通常より半分程度の期間での売却、現金化が可能だ。

西川社長は「法務サービスからその後の資産運用、節税相談までのサポートをワンストップで行います。当社で保有不動産の査定や買い取りを行いますから、相続時の納税資金確保にも十分お応えすることができます」と話している。

加えて、18年12月にリリースしたウェブ上での資産運用マッチングサービス「Elephant ℃(エレファント)」でも、相続に悩む顧客をサポートする。「Elephant ℃」では、収益不動産や金融商品、保険商品に加えて、税理士や弁護士といった相続業務に強い専門家のマッチングを手掛ける。

「このシステムを通じて富裕層向けに相続を円滑に行うための最適なソリューションを提示します。相続や事業承継のプロとして、お客さまに一層貢献できるように努めます」

アナログ×ITで仕入れと融資支援に強みを発揮

センチュリオンホームページ

センチュリオンホームページ

相続・事業承継支援を強化している同社の取り組みを裏打ちするのは、かねてから定評があるサービス品質の高さだ。

その一つは全国の不動産仲介会社とのネットワークに根差した圧倒的な仕入れ力にある。地主や家主による2棟目以降の購入はもちろん、相続税評価額を圧縮するために不動産投資を始める富裕層が少なくない。

同社の社員が全国の不動産会社をくまなく回ることで、鮮度の高い情報を入手。大手企業の経営層から地場の不動産屋の担当者まで幅広いコネクションを構築し、粒揃いの物件を顧客に提案できる体制を築いている。

西川社長は「良い不動産を相場よりも安くご提供するのが当社の役目です」と自信を見せる。物件の目利きは、立地や入居率など10年にわたって培ったノウハウに基づいて実施。地方にある駅遠物件でも幹線道路や商業施設に近いといった独自の基準から、将来にわたって安定収益が見込める物件を選り抜いている。

もう1つの強みはファイナンスアレンジ力だ。同社は現在、約50の金融機関と提携している。“一見さんお断り”を貫く保守的な地方銀行でも、同社の口利きで融資が下りたケースは少なくない。すでに顧客が取引している銀行でも、同社が介在することで金利の下がった事例があるという。

それを可能にするのは同社が持つ金融機関とのネットワークだ。不動産会社同様、社員たちが全国の金融機関をこまめに訪問することで、営業店ごとの最新状況を把握している。

「どこの支店の誰がトップセールスで、誰が目標達成に向けて汗を流しているかといった詳細な情報を得ています。足で情報を稼ぐアナログ面と、それをデータベースに落とし込むデジタル面の両方を駆使して、お客さまにとって必要な金融機関を選び出しています」

これらの強みを追求し続けるには、優秀な人材の確保が欠かせない。同社では採用と社員教育に徹底して力を入れている。とりわけ採用時には高給を目的としている業界関係者を避け、地道にコツコツ努力できる異業種出身者を入社させている。

「当社の社員はテレビ局やアパレル関係など、さまざまな業界から転職してきています。重要なのは経験よりも、お客さまにどれだけ実直に寄り添えるかどうかです。当社の理念である『愛と思いやり』を体現できるかを重視しています」

そのために西川社長自らが社内メルマガを通じて、顧客志向を追求する重要性を説き続けている。送信件数は既に1千通を超え、社員への理念浸透の手応えを感じているという。

「人材、物件、ファイナンス力を武器に相続、事業承継を含めたお客さまのお手伝いを一層強化していきます」

センチュリオン
設立:2008年11月
所在地:東京都渋谷区
資本金:1億円
売上高:60億円(連結)(2018年10月期)
従業員数:50人
ホームページ:https://www.cent.co.jp/

「不動産投資と賃貸経営のノウハウで顧客をフルサポート」―後藤聡志(きらめき不動産代表取締役)

後藤聡志

後藤聡志氏

大学を卒業後、飲食、ITなどさまざまな業種を経験した後藤聡志代表が不動産投資の世界に入ったのは2004年。収益物件の売買を専門とする会社で数百件の実績を上げ、08年にきらめき不動産を設立した。

資産運用の観点から土地を持つ

人の多くは、アパート・マンション経営をしながら相続に備えて節税対策を考える。同社は、不動産投資、賃貸経営の課題をオーナーと一緒に考え、最善のプランを提供する。本社を横浜に構え、首都圏をカバーしている。

最近増えている相談は事業承継や相続に関係するものが多い。15年の相続税法改正で課税対象者が広がったことを受けて、多くのオーナーが悩んでいるという。

後藤代表は、「相続税対策で考えれば現金より不動産の方が有利だしアパート・マンション経営もいいと思います。でも賃貸経営は立地によって空き家発生のリスクがあるので、条件の悪い場所にアパートを建てても逆に資産価値を減らしてしまいます。大事なことは資産価値を上げながら、課税額を縮小させることです」と言う。

土地オーナーは先祖から受け継いだ土地に執着する人が多いが「土地の相続も会社の事業承継と同じでストック、フローの両面から見て何が最善かを考えるべきです。準備は早い方がよく、40代から親と一緒に対策を立てた方が選択肢が広がります」(後藤代表)

人口減が加速するなかで賃貸経営はますます難しくなっていく。きらめき不動産は科学的論理に基づいた不動産投資の戦略で顧客をフルサポートしている。

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