経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

技術者ネットワークを生かし 建築業界のプラットフォーマーに―キャンディル

2019注目企業画像

内装建材や家具の補修を皮切りに、住宅や商業施設などのメンテナンスを手掛けているキャンディル。業務の効率化を通じて、強固な技術者ネットワークを全国に構築、大きく飛躍した。今後は築き上げたインフラを活用し、建築業界のプラットフォーマーを目指す。

林 晃生

キャンディル 社長 林 晃生(はやし・あきお)

徹底した教育体制による組織と業務の効率化で飛躍

 「当社は建物のライフサイクルサポート企業として、単なるリペア(補修)に留まらず、さまざまな建物の修繕や改修、維持、管理を手掛けています。全国を網羅している技術者ネットワークでサービスを拡充し、業界のプラットフォーマーのような存在になりたいと思っています」

 こう語るのはキャンディル創業者の林晃生社長。同社は林社長が1995年に戸建て住宅の補修を手掛けるバーンリペアを設立したことに端を発する。

 その後、既存事業とシナジーが見込める会社を戦略的にグループ化しながら業容を拡大し、14年に純粋持ち株会社であるキャンディルを設立した。18年9月末時点で全国に56拠点を構え、自社の技術者は約1千人、協力業者は約430社に上り、主力のリペアサービスの顧客社数は2万社超で業界ナンバーワンの地位にある。

 昨年7月には東証マザーズに上場。18年9月期の業績は売上高122億3900万円、営業利益4億300万円といずれも過去最高を記録した。

 小規模事業者が乱立している業界で大きく業績を伸ばした要因について林社長は、「会社を大きくできたのは、資格学校の講師だった私の経歴に関係していると思います」と振り返る。前職では「宅地建物取引士」などの資格取得の授業を受け持ち、生徒や他の講師を育てながら、教材の作成に勤しんでいた。

 創業は、当時住んでいたマンションの退去時にフローリングにできた傷の補修代として70万円を請求され、周りのつてを頼りに自ら部材を買い求めて5万円程度で修復したのがきっかけだった。

 当初は林社長1人で作業を手掛けていたが、やがて職人を採用して育成することで組織を着々と広げていった。

 「自力で育てるよりもずっと手っ取り早い」と考え方を変えて、作業マニュアルやEラーニング用の教材、研修カリキュラムを独自に作成。全国で一定水準以上のクオリティーを持つ施工技術者を確保できる原動力となった。

 「業者が一人親方から脱却するには、大きな収入が入っても採用や教育に回しながら力を蓄える我慢の時期が必要です。良いサイクルができれば、あとはマニュアルを従業員に浸透させることで、自ずと業績が拡大していきました」

住宅点検業務の強化でリフォーム需要を掘り起こす

 結果、主力のリペアサービス事業の前期の売上高は増加の一途で全体の4割弱を占める46億7千万円に伸びている。同事業では、顧客に引き渡す新築物件の補修がメーン。新築物件には施工段階で生じたキズや不具合が残るケースもあり、それらを部材交換することなく修復する。ただしこの分野は市場の縮小が予測されるため、林社長は事業環境の変化に備えて十数年前から新たな事業の柱を用意していた。

 それが今後の成長戦略と位置付ける住環境向け建築サービスだ。同事業では、大手ハウスメーカーの顧客を対象にしたアフター定期点検サービスの代行を手掛けている。ハウスメーカーやビルダーの多くは家の建築や営業活動に追われて、既存顧客のフォローに十分な人材を割く余裕がない。そこに目を向けて営業を行ったところ、たちどころに代行依頼が増えて累計管理戸数は30万戸超にまで達したという。

 同事業の中で点検業務の売り上げは9億円と好調だが、林社長が見据えるのは業績拡大のその先にある。縮小しつつある建築業界でリフォームは数少ない成長分野だが、一般的な専門業者は飛び込み営業主体で顧客開拓に苦戦を強いられがち。

 そこでメーカーの点検を代行しながら発注先の既存顧客との関係を築くことで、将来的なリフォーム案件の開拓につなげる構えだ。ハウスメーカーは顧客との関係を維持でき、同社はメーカーが手掛けない小規模リフォームを受注することでウィンウィンの関係を築く。

 「ハウスメーカーの顧客を奪うのではなく、お互いハッピーになりましょうという考えです。今後も技術者や点検管理戸数といった全国ネットワークのインフラを活用してさらに事業の枠を広げていきたい」

 同社は「全国規模の施工力」を生かし、建物のライフサイクルに応じた事業プラットフォームの構築を進めている。具体的には、大手損保グループ傘下の保証会社「SOMPOワランティ」との業務提携により住宅機器向けの延長保証サービスや、オーダー家具の設計・製造支援システムを独自開発した「ドゥーマンズ」とのコラボによりオーダー家具アプリを経由した家具組立サービスを提供するなど、幅広いアライアンスに取り組んでいる。

 「上場してからいろいろな企業からお声掛けいただく機会が増えています。今後も新たなパートナーと組みながら、事業を拡充していく考えです。どんなにITが発達しても建物の修繕管理には人の手が欠かせません。建築の『ラストワンマイル』を握るプラットフォーマーとしての存在感を高めていきます」          

 

会社概要

設立 2014年8月

資本金 4億5,685万円

売上高 122億3,957万円(2018年9月期)

所在地 東京都新宿区

従業員数 1,453人

事業内容 建築サービス関連事業(リペア、住環境向け、商環境向け、商材販売)

https://www.candeal.co.jp/

 

【注目企業】の記事一覧はこちら

経済界ウェブトップへ戻る