経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

自然エネルギーの欺瞞

実践主義者の経済学

困難な自然エネルギーの安定的供給と発電量の調整

 

 さて、2月9日に投開票された東京都知事選挙では、「都」知事選であるにもかかわらず、脱原発という言葉が飛び交ったわけだが、脱原発を主張する人々は、代替エネルギーとして「自然エネルギー」を挙げている。また、東京五輪を「自然エネルギー」で開催する、あるいは「自然エネルギー」で経済成長を、などと訴えた候補者もいた。

 自然エネルギーとは、風力、水力、太陽光などを意味しているわけだが、この種のエネルギーを活用した発電技術で、わが国のエネルギー問題を解決することは可能だろうか。少なくとも、現時点では困難極まりない。

 何しろ、実用可能な大容量蓄電池はいまだに存在していない。無論、NAS電池などの技術進歩は著しいが、「街」のエネルギー供給を長時間にわたって賄うのは無理だ。

 自然エネルギーとは、文字通り「自然」によって発電容量が左右されてしまう。このタイプの発電技術は、電力サービスにとって実に扱いにくい。

 例えば、太陽光発電の問題は、

「夜は全く発電できない」

「曇りや雨の場合は、発電容量が激減する」

 という問題を抱えている。また、パネルの「一部」に影が差すだけで、発電容量が10分の1未満に落ちてしまうのだ。多くの日本国民は、太陽光パネルに影が差した場合、「影が落ちた面積分だけ、発電容量が下がる」と考えているように思えるが、現実は異なる。

 そして、風力についても、国民は「風が強ければ強いほど、発電容量が上がる」と理解しているのではないだろうか。現実の風力発電は、台風襲来などの暴風時には、プロペラなどが破損しかねないため、発電を停止しなければならない。

 ちなみに、水力発電も「雨が多過ぎる」と発電できない。理由は、水力発電はダムに貯めた水を下流に「落とす」ことで発電機を回すためである。豪雨のときは、ダムの下流も増水しているため、水を流すことができなくなってしまう。当たり前だが、下流が増水しているときにダムから水を放出すると、洪水になってしまう。

 電力とは、常に「安定的」に供給されなければならない。発電容量は「需要」に応じて調整されており、発電が少な過ぎても「多過ぎても」トラブルが発生する。下手をすると、ブラックアウト(大停電)を起こしてしまう。

 需要は時間帯でも大きく変わる。電力会社は需要を睨みながら、多様な発電所に指示を出し、50㌹もしくは60㌹の帯域で電力の周波数が安定するように、今、この瞬間も発電容量を調整している。東京で言えば、周波数が50㌹で安定するように、中央管制室で電力マンが需要をにらみつつ、供給(発電)を調整することを続けているわけだ。

 需要と供給を「一致」させなければならない以上、電力会社にとって、

「不安定で、発電できるのかできないのか、分からない」

 発電源ほど扱いにくいものはない。例えば、電力需要の上昇を受け、

「太陽光発電の発電量を高めろ!」

 と指示したとして、

「太陽が陰っているので、これ以上は発電量を高められない」

 では話にならない。これが原発や火力発電であれば、単に「タービンの回転速度を高める」ことで、即座に需要に応じた供給調整が可能なのだ。

「どの発電所」「どの発電技術」の発電量を調整するかは、極めて重要な問題になる。何しろ、発電とは資源(天然ガス、原子力、石炭、原油、水力など)によって発電コストが変わってくるのだ。

 

自然エネルギーは電力供給の主役になり得ない

 

 とにかく発電できさえすれば「高くても構わない」ならば、発電所を選ぶ必要はないが、そうすると電気料金がどこまでも上がっていくことになる。さらに、発電所は頻繁にメンテナンスしなければならない。どこの発電所の何号機が、いつメンテナンスをしているのか。あるいは、メンテナンスをしていた発電所の何号機は、復旧したのか、していないのか。すべてを頭に叩き込み、周波数を安定させるために需要を横目で見つつ、発電所の出力をアナログで調整しなければならないのだ。

 というわけで、自然エネルギーは、現在の日本において電力供給の主役になり得ない。無論、10年後、20年後に蓄電技術がブレイクスルーしていれば、自然エネルギーが電力供給の主役になる可能性はあるが、現時点で自然エネルギーによる電力供給を拡大させようとした場合、バックアップ電源としてLNGや石炭、原油で動く火力発電所をスタンバイさせておく必要がある。火力発電所はスタンバイの状態でも鉱物性燃料を食いまくるので、エコでも何でもない。

 ところで、自然エネルギーが注目されている理由のひとつは、電気料金が上昇しているためだ。とはいえ、電気料金の値上がりの主因は、単に原発を停めているためである。このため、外国からの天然ガス(LNG)の購入価格が急騰しているのだ。

 すなわち、電気料金を引き下げるには、燃料の国際調達の際に交渉力を高めればいい。とはいえ、現在の日本の燃料調達の国際競争力が「極端」に落ち込んでいるのは、まさに原発を再稼働しないためなのだ。LNGの売り手からしてみれば、日本が「他に選択肢がない」ことを理解しているわけで、交渉力は「売り手が圧倒的」というのが現実だ。

 燃料調達の交渉力をつけたいならば、原発再稼働以外に方法はない。結局、現在の日本のエネルギー問題を解決したいならば、原発を再稼働し、電気料金を引き下げつつ、将来に向けて蓄電技術に投資していかねばならない。蓄電技術が不十分な現在において、「自然エネルギーで日本の電力サービスを賄う」などと主張することは、欺瞞としか言いようがないのである。

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